USB発展の歴史

USBは正式名称をフルネームをユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus)といい、インテルとマイクロソフトの主導によって開発が進められたインターフェース規格です。ホットプラグとプラグアンドプレイに対応しており、デバイスと接続することでホスト機器がデバイスドライバを自動的に検出するため、他のシリアルバスに比べて利便性が高い特徴を持ちます。

USBはパラレルポートやシリアルポートといった従来型のバスと比べ高速通信が可能です。USB 1.1の最大データ転送速度は12Mbpsですが、次のバージョンであるUSB 2.0だと480Mbpsとなりました。2008年に登場したUSB 3.0は、480Mbpsから5Gbpsにスピードアップし、最近発表されたUSB 3.1だとUSB 3.0の二倍に当たる10Gbpsものデータ転送速度に達しています(「表1:USB発展の歴史」参照)。

表1:USB発展の歴史

世代 最大データ転送速度 USB世代別の通称 給電能力 登場
USB 1.0 1.5 Mbps Low Speed 100 mA 1996年1
USB 1.1 12 Mbps Full Speed 100 mA 1998年9
USB 2.0 480 Mbps High Speed 500 mA 2000年4
USB 3.0 5 Gbps Super Speed Gen1 900 mA 2008年11
USB 3.1 10 Gbps Super Speed Gen2 ~5A(PD対応) 2013年8

 

インターフェース規格の王者となったUSBは、IT業界ですでに確固たる地位を確立しています。全世界に一体いくつのUSBポートが存在するか正確には不明ですが、あるIT業界アナリストは、USBポートを持つデバイスは年間20億個以上出荷されていると見積もっています。

USB発展の歴史を振り返ると、USB 1.0規格が1996年に登場した当初は、周辺機器やデバイスメーカーにとって魅力的ではありませんでした。データ転送速度は1.5 Mbpsと低速だったため、ユーザーの求めるスピードを実現することが難しかったからです。当時、Fast SCSIはすでに10 Mbpsのレンジに達し、IEEE 1394aFirewire)に至っては400Mbpsの転送速度に達していました。これらの規格に対抗すべくインテルが2000年に発表したUSB 2.0 High Speedは転送速度が480 Mbpsにまで向上しました。

USB 2.0 High Speed ロゴマーク

図1:USB 2.0 High Speed ロゴマーク(USB.orgより)

 

さらに、2008年に登場したUSB 3.0では転送速度は5 Gbpsまで向上しています。これはSuper Speed USBと呼ばれ、今日では最も普及した高速データ伝送インターフェースとなっています。外付けHDD、SSD、DVD/Blu-Rayプレーヤー、USBメモリなど、幅広い製品に採用されています

USB 3.0 Super Speed ロゴマーク

図2:USB 3.0 Super Speed ロゴマーク(USB.orgより)

 

USBの大きな変革─Type-C規格の登場

他の高速インターフェースの発展を受け、USB協会(USB Implementers ForumUSB-IF)は2013年に新規格となるUSB 3.1を発表しました。転送速度は10 Gbpsに達し、USB 3.1 Super Speed Gen 2と称しました。従来のUSB 3.0である5 Gbpsの規格はUSB 3.1 Super Speed Gen 1と呼ばれるようになりました。

USB 3.1 Super Speed Gen 2 ロゴマーク

図3:USB 3.1 Super Speed Gen 2 ロゴマーク(USB.orgより)

 

2014年8月に発表されたType-C規格では、主に以下の四つの特徴を持ちます。

1. 小型サイズ: USB 2.0 Mirco-Bに近い小型サイズとなる

2. 給電能力:Type-Cは、サブセット規格;USB Power Deliveryにより大きな給電能力を実現できる

3. 発展性:より高速なデータ転送を実現する将来のUSB規格にも対応できるよう設計されている

4. ユーザビリティ向上:上下の向きを気にすることなく挿入可能

 

Type-Cコネクタのサイズは約8.4mm x 2.6mmと、従来のUSB 2.0 Micro-Bコネクタよりやや大きいものです。充電能力は15Wとなり、USB Power Delivery規格をサポートし、最大100Wの給電能力を持ちます。転送速度は、現行のUSB 3.1 Super Speed Gen 210 Gbpsに加えて、将来登場予定の更に高速なUSBバージョン(たとえばUSB 4.0)にも使用できるものとして設計されています。実使用にあたってはアップルのLightningのように上下の向きを気にする必要もないため、タブレット、スマートフォンといった幅広い薄型モバイル端末への応用が可能で、この点でも市場の期待が高まっています。

Type-Cのコネクタ設計は、従来のUSBコネクタとは大きく異なり、上下二段の端子設計になっています。レセプタクルは一種類のみで24本の端子から成り立っており、その形状はVerticalRight AngelMid-Mountとなっています。ラグ端子も、Dual-Row SMTHybridなどに分かれています。プラグの仕様は二種類存在し、高速転送が可能なFull FeaturedバージョンとUSB 2.0バージョンがあります。

Type-Cの端子は上下二段設計なので、ケーブル加工上、プラグ末端にPaddle Cardを装着してから、線材をPaddle Card上に加工することになるでしょう。これと同時にUSB協会は、Type-Cケーブルが3A以上の給電能力を有する場合には、「USB Type-C Electronically Marked」の注記が必要であるとしています。また、USBケーブルの規格には、主に次の三種類があります。

1. 標準Type-Cケーブル(Full Featured/USB2.0

2. 従来型USBケーブル(USB 3.1/USB2.0)

3. 従来型USBアダプタ

 

標準のType-CケーブルにはUSB Full Featured Type-Cケーブル及びUSB 2.0 Type-Cケーブルという二種類の規格があり、従来型USBケーブルにはUSB 3.1USB 2.0の二種類の規格があります。USB 3.1規格には「USB Type-C to USB 3.1 A」、「USB Type-C to USB 3.1 B」、「USB Type-C to USB 3.1 Micro-B」という3種類のケーブルが定義されており、USB 2.0規格には「USB Type-C to USB 2.0 A」、「USB Type-C to USB 2.0 B」、「USB Type-C to USB 2.0 Mini-B」、「USB Type-C to USB 2.0 Micro-B」という4種類のケーブルが定義されています。

従来型のUSBアダプタには、「USB Type-C to USB 3.1 Receptacle」、「USB Type-C to USB 2.0 Micro-B Receptacle」という二種類があります。

Type-Cコネクタ

4Type-Cコネクタ

(Universal Serial Bus Type-C Cable and Connector Specification Revision 1.0より抜粋)

 

認証試験としては、Type-Cには次のような要求事項が課されています。

 

1. 機械試験

Type-Cは主にモバイル機器に使われるため、USB Micro-Bと同様に、一万回の抜き差しに耐えられなければならない。挿抜試験における規格は、他のタイプのUSBとは異なり、Type-Cでの挿入力は520N、離脱力は820Nである。ケーブルの曲げ試験と挿抜試験も、Micro-Bと同様に、Type-Cでも四軸方向の試験が課される。

 

2. 電気試験

LCRメーター測定における定格値は30mΩから40mΩに変更。このほか、Type-Cは電流温度上昇試験を行う必要があり、Vbus端子に5Aの電流を、同時にVconn端子に1.25Aの電流をそれぞれかけて、温度変化が30ºCを超えてはならない。

 

3. 環境試験

USB 3.0の要求と同様に、EIA 364-1000.01規格により耐環境試験を実施する。

 

4. 電気メッキ要求事項

USB 3.0に対する要求事項と同じ。

 

5. 高周波試験

Type-C規格と過去のUSB規格で最大の違いは、Type-Cはレセプタクルにも高周波試験が要求されていることである。Type-Cレセプタクルと標準Type-Cケーブルの高周波試験の要求は表2のとおり(従来型USBケーブルの試験とは異なる)。

2Type-Cレセプタクルと標準Type-Cケーブルに対する高周波試験

Type-Cレセプタクルと標準Type-Cケーブルに対する高周波試験

 

記の高周波試験を終えた後、以下の各5項目の変数についてUSB協会が発表した公式に従って換算し、Type-Cケーブルが協会の要求に適合するかどうかを判断します。

1. ILfitatNq(Insertion Loss fit at Nyquist frequency)

2. IMR(Integrated Multi-Reflection)

3. INEXT(Integrated Near-end Crosstalk)

4. IFEXT(Integrated Far-end Crosstalk)

5. IRL(Integrated Return Loss)

 

すべての試験項目が高周波信号、機械特性、電気性能、環境変質といった各種測定や評価に関わってくることを踏まえると、コネクタメーカーは専門的な試験ラボと協力、相談しながら認証試験を進める必要が出てくることでしょう。USB協会が正式に認可した試験ラボであれば専門の設備機器を備えており、技術的な支援を実施することが可能なので、実際の使用環境で遭遇するであろう多くの状況を再現し、問題点やリスクを指摘しながら、製品が品質や機能面での要求に適合するかを確認できます。

USB 3.1は10 Gbpsの転送速度が要求されているため、ケーブルのシールド効果(Shielding Effectiveness Requirements)の問題がより重視されています。シールド効果はEMIRFIに影響するので、USB協会ではこの試験に厳しい要求事項を課しています。図5は、ケーブルシールド効果測定環境を示しています。

ケーブルシールド効果測定環境

5:ケーブルシールド効果測定環境

(Universal Serial Bus Type-C Cable and Connector Specification Revision 1.0より抜粋)

Type-C今後の発展

Type-Cコネクタは最も注目されている規格の一つです。EU2017年から携帯電話の充電器規格を統一し、携帯型デバイス用コネクタを一致させるよう要求しています。Apple陣営はモバイル機器用インターフェースとしてLightningコネクタを採用しているため、その動向が注目されています。市場アナリストは、「Type-CiOSAndroidという二大陣営のサポートにより更新ペースを早めている。近い将来、次世代USB規格の大々的な世代交代が始まるだろう」と予測しています。

Type-Cコネクタの目標は、現行のUSB 2.0 Micro-Bコネクタに取って代わりモバイル機器の標準規格となることです。USB 2.0 Micro-Bコネクタは、スマートフォンをはじめとする数多くのモバイル機器に採用されました。USB 3.0の時代に入るとデータ転送速度は大幅にアップしましたが、USB 3.0 Micro-Bコネクタの幅はUSB 2.0の二倍もあることが災いし、軽量薄型志向のスマートフォンにはサイズ的に大きな規格となりました。このため、USB 3.0 Micro-Bコネクタを採用するスマートフォンはあまり多く見られません。USB協会はこの次世代Type-Cコネクタによってモバイル機器のデータ転送ライン規格の統一化を狙っています。

ひとつ残念な点は、USB Type-Cは既存のUSBポート(Standard-A等)に直接差し込むことはできないことです。従来の携帯やPCで使用するためには専用のアダプタが必要になります。201412月現在、USB 3.1用のポートをもつ製品は市場には現れていませんが、過去USB規格の普及スピードに照らし合わせると、USB Type-Cの便利さを実感できるのもそう遠い将来ではないのかもしれません。

アリオンは、USB協会の正式な認定を受けたUSBコンプライアンス試験の第三者認証試験機関であり、各種製品に対するUSB HighSpeedSuperSpeed試験、USBケーブル・コネクタに対する認証試験を承っております。また、アリオン ケーブル&コネクタ検証ラボでは、USB規格以外のケーブルとコネクタ(HDMIMHLDisplayPortSATAなど)に対しても、高周波信号、機械特性、電気性能、環境変質といった各種評価の実施に加え、精密測定や規格ロゴ認証試験サービスを提供しています。

 

ライター:アリオン技術部門シニアマネージャー 施克隆(Brian Shih

略歴:開発設計、構造分析、高周波特性といった分野に精通し、ケーブル・コネクタ分野で12年以上に渡る開発設計、営業の経験を積む。かつては著名PCメーカーでケーブル・コネクタの技術顧問を担当。現在はアリオンでグローバル市場におけるケーブル・コネクタ品質評価、認証試験、技術コンサルティングに携わっている。USB規格認証に関連する製品に限らず、電気、機械、耐環境といった試験全般に渡ってケーブル・コネクタの試験仕様や品質管理系統をまとめ上げ、さらには技術仕様を策定する各業界団体(USB-IF、HDMI、VESA DisplayPort、SAS、SATA、USCARなど)ではケーブル・コネクタの試験仕様策定に参加している。

 

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