Allion Labs
通信業界は年間1.7兆米ドルを超える収益を生み出し、世界中の企業が第二種電気通信事業市場への参入を目指しています。しかし、激しい競争の中で優位に立つことは容易ではありません。製品開発から検証、発売に至るまで、各段階で複雑な課題に直面します。
アリオンは包括的なソリューションと豊富なコンサルティング経験を活かし、企業の開発課題の克服、製品強みの的確な定義、市場投入の加速を支援してきました。
第二種電気通信事業における競争優位：CPE検証範囲とRFQ精度が成功を左右する
世界には移動体通信事業者、固定通信事業者、インターネットサービスプロバイダー（ISP）といった1,000社以上の通信事業者が存在し、その巨大市場は多様な企業を第二種電気通信事業へと引き寄せています。
第二種電気通信事業市場へ参入する七つの理由
第一種電気通信事業者と比べ、第二種電気通信事業者は自社でのインフラ整備や通信技術の標準化が不要なため、参入障壁が低いことが特徴です。このため、小売・消費財ブランド、テクノロジーやデジタルプラットフォーム企業、メディア・エンターテインメント、交通・旅行関連企業など、従来の通信事業者以外の多くの企業が異業種から参入しています。これらの企業は、それぞれの分野における自社の強みを活かし、差別化された通信サービスを提供しています。
通信サービス事業への参入に成功した企業の多くは、エンドユーザーの利用体験をさらに強化したり、通信サービスの利用シーンを拡大したりするために、いわゆる顧客宅内設備（Customer Premises Equipment、以下CPE）を導入します。CPEは、エンドユーザーとネットワークをつなぐ重要な橋渡し役であり、高速インターネット、音声通信、デジタルテレビなどのサービス伝送を支えるとともに、ネットワーク性能、セキュリティ、遠隔管理などの機能を提供します。
実例ケース：第二種電気通信事業事業者が直面した3つの課題
本事例は、日本のある第二種電気通信事業者で、自社ブランドのCPE製品を設計・販売している企業のケースです。同社は最新製品の開発にあたり、技術力や経験の不足から大きな課題に直面していました。
過去の協業でアリオンの支援効果を実感していたことから、今回も再びアリオンにコンサルティングサービスを依頼。アリオンの専門知識、第三者ラボとしての中立性、そして豊富な検証経験を活かし、ODMの監督および先進的なCPE製品の共同開発を進めることを希望しました。
直面した課題
- 自社内に必要な開発機材や専門知識が不足しており、製品設計や検証を独自に完結できなかった。また、ODMが提示する試験結果の信頼性も十分ではなかった。
- 競合製品の性能データが入手できず、正確な競合分析や市場ポジショニングの判断が困難だった。
- RFQ（見積依頼書）の仕様が不明確で、開発の方向性が曖昧になり、要件の誤りや度重なる設計変更を招いた。
こうした課題は、開発スケジュールの遅延や性能不足のリスクを引き起こし、市場での評価やブランド価値の低下につながる恐れがありました。
この状況下で、アリオンの専門的な検証・コンサルティングサービスがリソース統合、技術力強化、仕様の明確化に大きく貢献し、最終的に製品の市場投入を成功へ導きました。
CPE開発パートナーとしてのアリオン支援サービス
包括的なRF検証
アリオンはお客様ニーズに応じたプロフェッショナルな試験環境とコンサルティングサービスを提供します。RF性能検証の専門知識に加え、複数の電波暗室、基地局シミュレーター、多様なRFコンポーネントを備え、カスタマイズな試験環境に対応します。
本事例では、LTE OTAおよびスループット性能の評価に注力し、環境構築から試験実施まで一貫して対応しました。得られた性能データを定量化し、日本国内の基地局密度や送信電力の最適化評価に活用しました。
ベンチマーク分析
第三者検証機関として豊富な製品性能データを蓄積しているアリオンは、お客様の新製品CPEを競合製品と比較・分析します。性能ポジショニングを明確化し、価格戦略や市場戦略の策定を支援することで、製品の市場成功率を大幅に高めました。
ODM ドキュメントレビュー
アンテナ設計・RF試験・ODM開発に精通したアリオンチームが、ODMから提供されたアンテナ設計資料、性能検証計画、OTA／スループットレポートなどの資料をレビューします。これにより、内容の完全性と期待値との整合性を確認し、厳格な品質管理を実現しました。
Time to Market with Quality（最短時間かつ高品質で市場投入）
～Faster、Easier、Better! 価値共創を実現～
本プロジェクト期間中、アリオンは各主要開発段階において、多様かつ深い専門的レポートと具体的な提案を提供し、お客様の開発プロセスと性能パフォーマンスの最適化を全面的に支援しました。
- ODM性能検証レビュー
まず、アリオンはODMの試験提案を評価し、より厳格な検証に向けた改善を提案しました。LTE・5G NRの伝送/受信性能に関する2件のConductive TX/RX試験レポートから潜在的な課題を特定し、信号品質を確保しました。
- アンテナ性能・設計改善提案
アンテナ性能について、6件のレポートをレビューし、アンテナ設計改善レポートを提案しました。アンテナタイプ、組立方法、空間レイアウトを含む設計改善を提案しました。さらに LTE OTA/スループット試験から問題を特定し、改善点も提供しました。これにより、競合製品とのベンチマークにより、市場での位置づけを明確化しました。
- RFQ ドキュメント技術提案
アリオンはLTE/5G NR RFQ要件を精査し、以下の改善点を提案しました。
- 固定試験条件とOTA性能傾向の明確化
- モジュール伝導性能およびアンテナ性能に基づく新基準の策定
- 無線性能と共有周波数利用（NSA／SA）の最適バランス
- Wi-Fi試験環境および規格の再定義
- GNSS性能基準の導入
- RSRP信号品質およびCPE信号強度表示の最適化に関する推奨
より円滑なコミュニケーションと迅速な意思決定を実現するため、週2回の定例会議を開催し、進捗をリアルタイムで共有しました。これにより、スムーズな協働体制を築き、市場投入までのスピードを加速させました。
アリオンのコンサルティングサービスが提供できるもの
これらの取り組みにより、技術的・資源的な制約を克服し、製品開発の円滑な推進、性能の最適化、市場競争力の強化、そしてユーザー満足度の向上を実現します。