Allion Labs
Wi-Fiの普及により、現代社会では欠かせない通信インフラとなっています。しかし互換性の問題はいまなお製品発売前の最大の懸念事項のひとつです。わずかな互換性不具合が、市場では大量の返品やクレームにつながるケースも少なくありません。今回の記事では、アリオンがどのように家電メーカーを支援し、発売予定のスマートサーモスタット向けにカスタマイズした検証プロジェクトを通じて、Wi-Fi規格WPA3に起因する接続問題を発見したのかをご紹介します。この取り組みにより、同社は市場リリース前に重大な不具合を防止し、返品・クレームリスクの回避だけでなく、開発期間とコストの大幅削減にも成功しました。
Wi-Fiは家庭やオフィスに広く浸透し、日常生活に欠かせない存在となっていますが、規格が明確に定義されている一方で、実際の使用環境では依然として接続不安定、速度低下、接続不能などの問題が発生することがあります。これらの課題は、ユーザー体験に影響するだけでなく、機器メーカーやサービスプロバイダーにとっても大きな技術的ハードルとなっています。
Wi-Fi 6 MU-MIMOからWi-Fi 7 MLOへ:新技術がもたらす互換性課題
TR-398 は、Broadband Forum(BBF)が策定した「Wi-Fi 屋内性能試験標準」です。主に家庭用ゲートウェイやクライアントデバイス(CPE)の実使用環境における性能評価を目的としています。2025 年第 1 四半期に発表された Issue 3 Corrigendum 1 では、既存の Issue 3 に含まれていた誤記や曖昧な記述を修正し、試験手法の正確性と一貫性をさらに高めました。
デバイスが接続できない
多くのユーザーから同様のトラブルが報告されています。スマート家電、監視カメラ、IoTデバイスが自宅のWi-Fiに接続した際に正常にインターネットに接続できない問題です。これは、デバイスがWi-Fi 7で導入された新機能(MLOマルチリンクオペレーションなど)をサポートしていないか、セキュリティプロトコル(WPA2/WPA3ハイブリッドモードや新しいWPA3 OWEなど)を正しく対応できないことが原因である可能性があります。
不安定または頻繁な切断
接続自体は成功しても、通信が不安定になったり、頻繁に切断されたりするケースも見られます。これは多くの場合、デバイス側の無線チップとルーター間のプロトコルネゴシエーションが完全に互換していないことに起因します。たとえば、一部のデバイスはWi-Fi 6特有のOFDMAやMU-MIMO機能を安定して対応できず、ルーターが自動的にチャンネルを切り替えた際に再接続できない場合があります。
特定機能が利用できない
スマートスピーカーの音声起動、ワイヤレス映像ストリーミング、スマートフォンアプリによるリモート操作などの高度な機能が、一部のWi-Fi環境で正しく動作しないケースもあります。一つの原因として、ルーター側のQoS(サービス品質)設定、帯域幅制御、IPv6対応状況などの違いが挙げられ、これらが機能の不安定化や利用不能を引き起こすことがあります。
潜在リスクの可視化:相互接続性から実使用シナリオまで
1. 幅広いブランド・世代を超えた相互接続性テスト
アリオンは、市場で主流となっているルーターブランド(TP-Link、ASUS、Netgearなど)を網羅した厳格な相互接続性テストを実施しています。クロステストによって実際の使用シナリオを再現し、メーカーが開発初期の段階から互換性リスクを正確に把握できるよう支援します。これにより、製品発売後に発生し得る互換性トラブルを事前に防止します。
アリオン無線ネットワークデバイスデータベース
| デバイスカテゴリ | 数量 |
|---|---|
| モバイル端末 | 1200+ |
| システム | 600+ |
| アクセスポイント | 550+ |
| テレビ / セットトップボックス | 100+ |
| IoT / ウェアラブルデバイス | 100+ |

2. 安定性・性能試験
アリオンは24時間以上の連続稼働を前提とした長時間安定性テストや、複数デバイスの同時接続シナリオ試験を実施しています。また、Bluetooth、電子レンジ、他のWi-Fi信号など、一般的な干渉源を想定したシミュレーションも行い、あらゆる環境下でもデバイスが安定した性能を維持できることを検証します。
3. ユーザーシナリオシミュレーション
実使用環境に近づけるため、住宅、マンション、オフィスなどの多様なシナリオを想定し、複数デバイス同時接続、距離による信号減衰、移動中の利用(ローミング)、高干渉環境、高トラフィック転送などの状況を再現します。これにより、製品の現実的な運用環境における性能・安定性を包括的に評価します。
WPA3接続問題が発売の障害に アリオンがサーモスタットメーカーの危機回避を支援
アリオンは最近、ある家電メーカーに対し、発売予定のスマートサーモスタットにおける市販無線ルーターとの互換性検証を支援しました。メーカーの要件を踏まえ、サーモスタットの接続特性や使用環境に最適化したテスト項目をカスタマイズし、販売地域に合わせて主要な無線ルーターブランドおよび仕様を選定しました。

テストプロセスの中で、複数の問題がすぐに明らかになりました。例えば、このサーモスタットでは「WPA3(SAE)セキュリティモード」接続時にパスワードエラーが発生して接続できない、また「WPA3 Enhanced Open(OWE)」利用時にも接続不能となる不具合が確認されました。これらはいずれもWPA3新規格への対応過程で生じたもので、製品設計段階で新しい仕様要件が十分に考慮されていなかったことが原因でした。
アリオンが出荷前にこれらの潜在的な問題を的確に特定し、迅速な修正対応を支援した結果、出荷後のクレームや返品を未然に防ぐことができ、お客様の時間とコストを大幅に削減しました。
Time to Market with Quality(最短時間かつ高品質で市場投入)~最も信頼できる検証コンサルティングサービス~
アリオンは幅広いテスト設備、制御可能なテスト環境、標準化されたテスト手法、そして豊富な実務経験を持つエンジニアチームを備えています。これにより、プロフェッショナルレベルのテストレポートを提供し、製品品質の信頼性を確保するだけでなく、最終ユーザーに対しても確かな安心をお届けします。
Faster ー より迅速に
わずか3日以内に分析結果と提案を提出しました。迅速な原因分析、計画立案、検証を実施し、メーカー/ブランドが課題を早期に解決できるよう、必要な環境・設備・専門知識・経験をワンストップで提供します。
Easier ー より簡単に
数十年の経験を持つ専門チームが、定義不足や不明確な課題をお客様と共に明確化します。コストと時間を要する社内での試行錯誤を最小限に抑え、効率的な問題解決を実現します。
Better ー より正確に
パフォーマンスとユーザー体験の最適化、品質改善、市場要求に即した仕様定義を通じて、顧客満足度を迅速かつ持続的に向上させる包括的ソリューションを提供します。
アリオンは、お客様の製品が「Time to Market with Quality」を達成できるよう、カスタマイズされたソリューションを提供いたします。関連の検証テストサービスについてより詳しい情報をお求めの場合は、アリオンのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。





































