Allion Labs / Ryan Huang

現代の家庭生活には、スマートフォン・3C製品やIoTデバイス等、ネットワーク接続が必要なデバイスが多くあり、ワイヤレスネットワークが非常に重要な役割を果たしています。しかし、2019年2月ブロードバンドフォーラムによってワイヤレスルーターのWi-Fi性能テスト規格「TR-398屋内Wi-Fi性能テスト規格」(以下「TR-398規格」という)が発表されるまでは、業界に包括的なテスト基準と仕様はありませんでした。TR-398規格のテスト内容には、6つの主要分野で11のテスト項目が含まれており、このテスト規格がリリースされた後、各ネットワークベンダーもこれを基礎とした共通のパフォーマンス基準を策定しました。今回は、市販されている5つのフラッグシップワイヤレスルーターを選び、ユーザーが頻繁に遭遇する問題をシミュレーションした8つのテスト項目を検証比較し、実験データを通じて各ワイヤレスルーターのパフォーマンスを観察しました。

環境セッティング

テスト中、テスト対象物を隔離ボックス内の固定された箇所に配置し、ワイヤレスデバイス設備シミュレータを別の隔離ボックスに配置して、また別の隔離ボックス内の信号減衰器と直列に接続し、更に減衰器から出る信号をテスト対象物の隔離ボックスに接続し直しました。ここでは、この中間信号のパス減衰を測定および計算してテスト環境で必要な仕様をクリアし、結果の安定性や正確性と一貫性を確保しています。

図1:テスト設備とその構築

TR-398の実測結果で、市販されているフラッグシップワイヤレスルーターを徹底比較

図2: 今回比較した市販されている5台のフラッグシップルーター

Maximum Connection Test

図3: Maximum Connection Testのテストデータ

こちらのテスト項目では、アクセスポイント(AP)が同時に32のSTAをサポートしていること、またパケットロス比率が1%未満である状況下で、その伝送パフォーマンスが切断されず、一定のレベルに維持されるかどうかを確認しました。テスト結果から、ワイヤレスルーターAは5GHzでのダウンロードパフォーマンスが理想値より低く、スループットは基準に到達せず、Pingエラー率(以下、PERと呼びます)も1%を超えており、ワイヤレスルーターCに至っては5GHzでのパフォーマンスが低かっただけではなく、2.4GHzのダウンロードもうまく機能しなかったことが分かりました。

Maximum Throughput Test

図4: Maximum Throughput Testのテストデータ

こちらのテスト項目では、空中短距離におけるワイヤレスルーターの最大スループットを測定しました。ワイヤレスルーターAの5GHzアップロードパフォーマンスは基準を満たしておらず、またワイヤレスルーターCのパフォーマンスも上記のテスト結果と同様に低く出ています。ワイヤレスルーターDはデータが基準に達しておらず、残念ながら測定されたデータは全て基準以下という結果が出ました。

Airtime Fairness Test – 5GHz

図5: Airtime Fairness Test 5GHzのテストデータ

こちらのテスト項目は、主にWi-Fi設備のパファーマンスが、伝送時間の公平性を確保できるかどうかを検証したものです。テスト結果から、様々なフローでの5台のワイヤレスルーターの伝送効率の結果が大きく異なることが分かりました。これは、5台の市販ワイヤレスルーターの伝送時間公平性のパフォーマンスが、あまり満足できるものではないことを表しています。

Range Versus Rate Test

図6: Range Versus Rate Test – Downlinkのテストデータ

図7: Range Versus Rate Test – Uplinkのテストデータ

このテスト項目では、信号を減衰させてワイヤレスルーターをシミュレートすることにより、さまざまな距離でのWi-FiデバイスのベースバンドおよびRFパフォーマンスを検証しました。その結果、5GHzのワイヤレスルーターCの性能はやはり理想とは程遠く、ワイヤレスルーターBに至っては、5GHz信号が-54dBmに減衰すると、接続が切断されパフォーマンスをテストできなくなりました。ワイヤレスルーターBは弱い信号をうまく処理できていな可能性があります。

Spatial Consistency Test

図8: Spatial Consistency Test – Strong Signalのテストデータ

図9: Spatial Consistency Test – Medium Signalのテストデータ

図10: Spatial Consistency Test – Weak Signalのテストデータ

このテスト項目で検証したのは、空間フィールドにおけるWi-Fi信号の一貫性についてです。簡単に説明すれば、ワイヤレスルーターがどの角度からでも良好なパフォーマンスを発揮できるかどうかを確認しました。この項目は、様々な角度で観測しただけでなく、3つの異なる信号強度の状況も検査しました。テスト結果から分かる通り、ワイヤレスルーターC・D・Eは、信号が強い場合(2.4GHzおよび5GHz)に様々な角度でパフォーマンスが低下し、信号が中程度または弱い場合はそのパフォーマンスは大体において悪くありませんでしたが、それぞれの角度間に大きなギャップが出ています。

Multiple Association/Disassociation Stability Test

図11: Multiple Association/Disassociation Stability Testのテストデータ

このテスト項目では、接続ステータスが頻繁に変化する環境下でのWi-Fiデバイスの安定性を測定し、8台のデバイスの中でいずれかがワイヤレスルーターで伝送する際、他のデバイスの接続や切断による影響が出るかを主に確認しました。この結果から、ワイヤレスルーターB・C・Eの3台は2.4GHzで、ワイヤレスルーターAは5GHzでそれぞれ接続や切断に影響しやすく、PERが1%を超え伝送が不安定であることが分かりました。

Stability/Robustness Test

図12: Stability/Robustness Testのテストデータ

こちらのテスト項目では、長時間接続(24時間)のストレス下におけるWi-Fiデバイスのパフォーマンス安定性を測定しました。このテスト結果から、それぞれワイヤレスルーターのパフォーマンスは悪くなく、2.4GHzでワイヤレスルーターBだけ不安定な伝送パフォーマンスが発生しました。

AP Coexistence Test

図13: AP Coexistence Testのテストデータ

このテスト項目では、他にAPが存在する場合に、Wi-Fiデバイスのパフォーマンスが影響を受けるか、つまり主に干渉防止について検証しました。テスト結果によると、ワイヤレスルーターAは全体的にパフォーマンスが良好であり、ワイヤレスルーターBは5GHzでだけ他のワイヤレスルーターからの干渉を受けず、ワイヤレスルーターC・D・Eについてはすべて干渉を受けていました。

総合評価:試験結果のまとめ

図14:各テスト項目における各ワイヤレスルーターのパフォーマンス

以上から、5台のワイヤレスルーターは今回の8つのテスト項目で理想的なパフォーマンスを発揮できていなかったことが分かりました。TR-398は最近策定されたテスト仕様であるため、これらの市販ワイヤレスルーターは、パフォーマンスの点でTR-398テスト規格向けに調整されていません。この規格が策定されて、今後ネットワークベンダーがこの仕様に従うことで、ユーザーによく起こる問題が大幅に減少し、顧客からのクレーム発生が減少すると私達は信じています。

TR-398規格テストサービス – アリオンならワンストップで

アリオンは、Wi-Fi Allianceによって指定された認定テストラボとして、様々な専属テスト機器を設置しており、アジアで唯一あらゆるWi-Fi認証サービスを提供できるラボです。またアリオンはTR-3​​98を基準として、製品カテゴリに合わせてカスタマイズ可能な、パフォーマンス検証を実行できるワイヤレステスト環境を構築し、様々な製品パフォーマンスに対応するテストソリューションを提供しています。製品パフォーマンスとユーザーエクスペリエンスを向上させ、同じ商品カテゴリーにおける激しい製品競争の中で、お客様が良好な評判を勝ち取りマーケットで大きなシェアを獲得することをサポートします。

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