現代を生きるわたしたちが日常生活を営む上で、スマートデバイスの存在は欠かすことができません。スマートフォンをはじめとするこれらのデバイスは、スケジュール管理、レストラン予約、知人への連絡、天気情報の確認など、日常のあらゆるシーンで使われています。スマートデバイスに対する依存度が増していく中で、製品の取扱いに関する注意事項や安全性について、メーカー側が暗黙の了解として提供してくれるものと考える人は、多いのではないでしょうか。

一般消費者向け製品の安全性についてマスコミが取り上げている内容を確認したとき、我々の注意を引いたのは、製品の多くは安全性に関する検証が企業内部で行われていた、という点でした。設計から製造、検証まで一貫した体制によって生み出された製品は、企業側に立って言えば効率の良いプロセスで処理することができるため、その意味合いやメリットが大きいことは理解できます。しかし一方で、自分たちの製品を自分たちで評価することになるため、評価の正当性には疑問の余地が残ります。

昨今のニュース報道で大きな問題となっている製品の異常発熱・発火・爆発の一因としてバッテリー内部のショートがあります。こうした問題を防ぐために、リチウムイオンバッテリーの中には陰極と陽極を分離するセパレーターシートが内蔵されています。仮にこのシートに穴が空いてしまい電極同士が接触すると、バッテリーの温度が急上昇します。リチウムイオンバッテリーは大きなエネルギーを持っているため、温度も非常に高くなります。この熱によってバッテリーの電解液に使用されている有機媒体を気化させ、熱(またはスパーク)によって発火することがあります。一つのセルで発火が起こると、連鎖的に他のセルへも燃え移り、バッテリーパック全体が発火します。

本稿では、携帯電話などスマートデバイスの安全性確認に関連性があるアリオンのサービス「ハードウェア品質検証(HQA)」と「USB-IFコンプライアンスプログラム」、「MCPCモバイル充電安全認証」をご紹介致します。

ハードウェア品質検証(HQA)

ハードウェア設計において、開発初期の段階で発見されなかった問題点が後に大きな問題として立ち上がることがあります。そこで、アリオンのハードウェア設計検証では、開発初期の段階における重要課題の発見をサポートします。アリオンのエンジニアが設計回路と配置配線をチェックし、製品に潜む問題点の指摘と改善提案をタイムリーに行います。

  1. シグナルインテグリティ
  2. 主要コンポーネント検証
  3. RF信号検証(無線通信・高速信号)

シグナルインテグリティの主な試験項目の一つに、電源管理試験があります。これは、AC/DCの電力や電圧、突入電流、保護機能を確認するなど、様々な角度から安全性に関する確認を行います。

USBコンプライアンスプログラム

USBコンプライアンスプログラムは、USB製品を開発するための基礎的な課題であり、他社製品との接続性といったより大きな枠組みと密接に関係しています。この試験では、ケーブル、デバイス、コネクタ、アダプタ、給電能力に関連した各種細かく分類された試験を行います。

USB標準規格は、USBのハードウェアインターフェースとコンポーネントの設計について規定しています。USB-IFは製品仕様の準拠確認のために、認証プログラムを定めました。認証試験に合格することのできた製品は、USB-IFのウェブページにあるIntegrators Listに製品が掲載され、USBロゴ利用の権利が与えられます。

特に、USBの新たなインターフェース規格であるUSB Type-Cでは、認証試験の実施は必要不可欠です。未認証の製品だったり認証製品の偽物だったりすると、次のような問題が起こり得るためです。

  • 利用時の製品の損傷
  • ケーブル側の損傷
  • コネクタ端子の破損、ポートの損傷
  • USBデータ通信とバッテリー充電が同時に行えない
  • バッテリー充電が過充電となり、充電中に発熱する
  • 仕様通りに機能しなくなる

 

MCPCモバイル充電安全認証

次に、MCPCモバイル充電安全認証についてご紹介致します。

モバイル充電安全認証とは、スマートフォンなど充電における事故の抑制を目指し、安心・安全な充電機器の普及促進のために策定された認証プログラムです。アリオン日本ラボは、MCPCとともにモバイル充電安全認証の試験手順や仕様など、策定について深く関わってまいりました。

USB規格では確認しない充電に関する安全について、以下のような観点から試験を実施しています。認証に合格した製品はMCPC公式ウェブサイトに製品が掲載され、ロゴマークが利用できるようになります。

主な試験項目

1. 充電特性確認
– IV特性を測定
– USB規格との整合性を確認

2. 安全機能確認
– ハーフショートなど事故への対策
– 熱こもりで問題がないこと
– 使用材料の確認:不燃性、絶縁
– USB規格との整合性:プラグ、ケーブルの特定、信頼性

 

以上でご紹介したいくつかの検証・認証は、製品の安全性と信頼性を確保するために実施を推奨する試験の一部に過ぎません。仮に販売製品が原因で訴訟問題に発展してしまった場合、人的・費用的コストの損失と企業ブランドの失墜、そして利益の減少を招いてしまう恐れがあります。そうなる前に、国際規格や認証に従った試験に投資する方がより生産的と言えるでしょう。

自分たちで検証を行うには、環境を揃え、人員を教育し、試験方法を調査するなど、時間的・費用的に大きなコストが発生します。企業は他社との熾烈な競争の中で常に納期の短縮や材料価格の高騰といったリスクに晒されていることから、生産管理費を含むコストの削減に迫られています。しかし、利益追求のための安全性や品質面のコストカットが果たしてどこまで許容されるのでしょうか。

製品の安全性はお金で買うことのできないかけがえのないもので、事件や事故が起こってしまってからでは取り返しがつきません。それならば、製品に潜む脅威は販売前の段階で可能な限り取り除いておく 事は大きな意味があるはずです。アリオンは第三者検証によって、製品が消費者にとっての安心・安全につなげられるようお手伝いしています。

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