テレビのスイッチを押して、白熱した試合をまるで現場にいるかのように鑑賞する―――NBAからUEFAチャンピオンズリーグ、そして日本プロ野球まで、メディアは多様な番組を提供し、ユーザーはこれまで以上に豊富なエンターテイメントを享受しています。ありきたりな休息のシーンに見えますが、その背景にはテレビメーカーが長年積み重ねてきた技術革新が存在しています。かつてのアナログテレビから現在のデジタルテレビに至るまで進化の道を歩み続け、新しい規格の開発を継続してきました。これら規格の標準認証によりテレビがエンドユーザーに提供する信号品質を確保します。本レポートでは、テレビのエコシステム、そして開発担当者がテレビの性能を検証する際に必要なポイントをご紹介します。

 

テレビのエコシステム

一般消費者がよく知っているテレビのブランドといえば、ソニー、東芝、シャープ、パナソニック、サムスン、LGBENQPHILIPSなどがあります。システム開発者はFOXBBCESPNなどのチャンネルから配信される放送形式が基準を満たしているかを確認しなければならず、また、テレビメーカーはテレビが正しく信号を受信し、正常な画面を表示できることを確認する必要があります。各試験工程は技術的な難しさと関連し、信号解析検証ならびに世界各地で行うフィールドテストも含まれるため、相当な費用と時間を必要とします。実施過程において予期せぬ事態が発生するため、その場で対応しなければならない危険性を伴います。よって、事前の検証計画の作成と、どのような検証を行うのかを決定することは、テレビメーカーにとって大変重要なことです。

TV ECOSYSTEM_EN

図1:テレビのエコシステム

 

グローバル・デジタルテレビ・シグナル V.S.ヨーロッパのデジタルテレビ・シグナル

グローバル市場におけるテレビシグナルの種類は、ATSCを主とする北アメリカ地区、ISDBを主とする日本および中南米、DTMBを採用する中国大陸市場、DVBシステムを使用しているヨーロッパ、オセアニア、アジア、アフリカ地域に分かれています。各地域の中でもヨーロッパ地域の状況はひときわ複雑です。スペックの規定と透明度が比較的高いアメリカ市場と比較し、ヨーロッパ各国のメディアは各自が独自発展しており、使用している周波数も異なります。

 

あるブランドのテレビ開発メーカーがヨーロッパ市場で斬新なテレビを発表するとき、ヨーロッパの安全規定認証試験に通過する必要があり、一方でシステム側としてデジタルテレビのロゴ認証も取得しなければなりません。これらの認証を通じて、テレビ本体とシステム間の互換性を確保し、正常に信号を受信して番組が視聴できることを確認しています。たとえば、ドイツで販売されているテレビはケーブルテレビ会社KDGおよびUnityMedia、衛星放送の運営会社HD+Skyの認証を取得しなければならず、イギリスではケーブルテレビ会社FreeViewHD、衛星放送はFreesatの認証を取得しなければなりません。

ヨーロッパでデジタルテレビのロゴ認証を取得することは強制されていませんが、放送業者は彼らの利益を守るためにいくつかの放送条件を決めています。たとえば、チャンネルロックのある人気番組は、テレビのロゴ認証を取得していないと放送できない、といった規定があります。そのため、ヨーロッパのテレビメーカーはロゴ認証を取得しています。購入したテレビが認証を取得しているか確認したい場合は売り場にあるテレビのデジタルモードで認証ロゴを確認することができます。

 

ヨーロッパのテレビ信号分布

ヨーロッパのデジタル信号は主に三種類に分かれています。デジタル無線信号系統(DVB-T/T2)、デジタル有線系統(DVB-C)ならびにデジタル衛生系統(DVB-S/S2)があり、ヨーロッパ大陸を跨がり20カ国以上、20種類以上の信号種類があるので、標準認証を取得するだけで大変な時間が必要となります。例を挙げると、デジタル無線信号系統(DVB-T/T2)はオランダのDigitenne、ノルウェーのRiksTV、スウェーデンのBoxer HD、フィンランドのAntenna Ready HD、スペインのTDT Premiumがあります。デジタル有線信号系統(DVB-C)はポーランド、ハンガリー、ルーマニアのUPC、デンマークのyouSeeStofaなどです。また、デジタル衛星信号系統(DVB-S/S2)はベルギーのM7、イタリアのTivuSat、チェコのSkylink、オーストリアのAustriaSatORFがあります。各信号の分布につきましては以下図2:ヨーロッパのテレビ信号分布をご参照下さい。

Europe DTV LOGOS

図2:ヨーロッパのテレビ信号分布

 

テレビ系統における標準認証の強力な協力者

アリオンの調査では、ヨーロッパでこれらの標準的な信号系統の認証を申請して取得するまで1012週間程度の時間が必要です。認証申請が却下された場合、多額な費用をかけて再び認証試験を実施し認証までの時間を待たなければなりません。さらに、特別な祝日やサッカーの試合シーズンになるとスケジュール通りに進行しない場合があるため、試験がいつ完了するかわからなくなってしまいます。

ヨーロッパ全体だけで10箇所以上の認証試験運営業者があるので、それぞれの業者に連絡を取り、テストサンプルを手配し、試験スケジュールを決定することも非常に厄介な手間となります。これら以外にも、事前に認証試験方法と、自社製品が試験に合格する可能性を把握しておかなければならないため、テレビメーカーにとって大きな負担となります。アリオンは大量の時間とマンパワーを投入することでテレビのロゴ認証について研究し、それぞれの認証試験の状況を確認してきました。例えば、ある国ではテレビのアクセスモジュールのICカードをテレビ側に挿入すると、モザイク現象が発生しました。この問題は結局、テレビメーカーがエンジニアをアジアからヨーロッパまで出張させなければ問題を解決できませんでした。こうした例から、ヨーロッパで一番大きな問題となるのは各国のシステム制御とスペックが一致していないことであり、各標準規格が相互干渉している点にあるとアリオンは認識しています。これらの問題が発生した際に、最終的にはテレビメーカーがそれぞれで対応できる異なるソフトウェアを設計し、システム互換性に対応するのが一般的な解決策です。

今年、アリオンはヨーロッパの信号系統認証のプレ試験サービスの提供を開始しました。これによってテレビメーカーがスムーズにヨーロッパのテレビに関するロゴ認証を申請・取得し、時間的なロスを減らすことが可能となります。アリオンはRF信号試験における問題解析方法を把握しているため、クライアントが設計や開発時に必要な主要部品の検証、ソフトウェア検証、ユーザーエクスペリエンス検証など合わせて行い、環境試験、メカニカル特性試験、互換性検証などの総合的な検証サービスを提供しています。また、アリオンは30種類以上のロゴ認証試験HDMIUSB、DisplayPort、Wi-Fi、Bluetooth、SATAなど)を提供しており、これらも含めたワン・ストップ・サービスを提供することができます。複数の機関に依頼すると機材管理などの煩雑な手間が発生することになりますが、アリオンではロゴ認証試験なども含めて実施が可能なため、スケジュール管理といった手間を省くことができます。アリオンでは今、スマートテレビの機能試験と試験自動化のプログラムを設計しています。近い将来、お客様に向けて多くのリアルタイムサービスを提供できることでしょう。

テレビの検証に関する更なる情報につきましては、以下のお問い合わせ先よりご連絡いただければ、専門の担当者から回答させていただきます。お気軽にお問合せ下さい。

 

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