携帯電話のUX比較の実例をご紹介
様々な機能を持つ携帯電話・スマートフォンが各メーカーから定期的にリリースされており、携帯メーカー各社はいかにして他社より抜きん出てた製品を開発・販売するか、という壁に直面しています。そんな中、最も重要なのはハードウェアのスペックではなく、むしろUIや扱いやすさといった『ユーザーエクスペリエンス』へと移り変わりつつあります。製品本体をユーザーに体験してもらい、販売効果につなげるにはどのような製品設定が好ましいのでしょうか。
携帯電話の新機種が発売されると、インターネット上では様々な人達が製品レビューを投稿します。しかし、これらは往々にして主観的な評価にすぎず、客観性と公正さに欠けています。アリオンは第三者試験機関としての立場から、2015年よりスマートフォンとUXに関する記事を公開してきました。モニターやカメラ、オーディオ、GPS等の機能を、公平性あるプロフェッショナルな環境と方法での測定結果を記載したこれらの記事は、数多くの方々から大きな支持と反響を得ることができました。
今回、市場にある4台のミドル・ハイエンドの携帯電話を選択し、実際に評価してみました。競合比較の実施により、自社製品の市場におけるポジションを明確に理解し、製品の欠点改善につなげることができます。 ※本編の試験対象機器は上記4台の携帯電話です。市場における製品の公平性を保つために、比較評価の結果はそれぞれPhone1, 2, 3, 4としています。
モニターテストの比較評価
アリオンではモニターを対象として、明るさ、コントラスト、色温度、様々な視覚、色空間、ブルーライトテストなどを行うことができます。お客様のリクエストに応じて試験内容をカスタマイズすることも可能です(詳細な試験項目については、以前の記事「スマートフォンのユーザーエクスペリエンスの解析-モニター編」をご参照ください)。アリオンの試験チームは、ユーザーエクスペリエンスにとって最も影響度の高い3つの項目である明るさ、色空間、ブルーライトについて試験を実施しました。
- 明るさ(Brightness)
この項目の評価基準は、数値が大きくなるほどモニターのバックライトは明るくなる点にあります。明るさの数値が高いほど太陽の光の下ではっきり見ることができるようになり、モニターはより鮮明に画像を表現することができます。インターネット上でよくみられる記事では、実際の撮影により比較評価を行っていますが、アリオンのチームでは主にプロフェッショナル用の計測機器(KONICA MINOLTA CA-310 Color Analyzer / KONICA MINOLTA CS-1000A/S/T Spectroradiometer)によって評価を行い、数値化してより正確に製品間の差異を示すことができました。今回の比較評価では、Phone3が最大/最小の明るさの表現がどちらも最高でしたが、一方でPhone1の最大明度はその他の携帯電話と比較して低い結果となりました。バックライトの調整可能範囲についても、Phone3が最大となりました。
- 色空間(s-RGB Color Range)
赤色の三角形を基準値、黒色を測定値としています。この数値がsRGB100%に近いほど良く、色の表現がより飽和されていることを表し、飽和しているモニターの色彩は、ユーザーの視覚により鮮明なイメージを与えます。多くの携帯電話が横一線に並んでいる状況の場合に比較されやすいため、この部分の調整は製品をより良く見せるために重要なポイントとなります。今回の結果からみると、Phone2の色空間の表現が最も広く、色もより鮮やかな結果となりました。
- ブルーライトテスト(Blue Light Wavelength of Panel)
LECモニターの良い調整とは、効果的にブルーライトの波長をコントロールできることです。一部のメーカーはモニターをより美しく見せるために、ブルーライトをより青く調整しましたが、インターネット上での知識の拡散により、多くの人々がブルーライトの持つ潜在的なリスクについて理解し始めました。ブルーライトが目に与える被害は大きく、長時間接触していると眼精疲労を引き起こし、黄斑部の病理を引き起こす可能性があるとされています。アリオンはブルーライトに対しても比較評価を行いました。携帯メーカーからすれば、ユーザーが重視し始めている部分は製品の大きな評価ポイントとなります。
青色スペクトルは「分光光度計」測定の下でのピーク値であり、もしも数値がより大きければブルーライトのスペクトルの強度がより強いことを表しています。備わっているブルーライトの光の量がより大きければ、ブルーライトの影響もますます強烈になります。結果、Phone1のブルーライト部分のコントロールが最も優れており、その他の3機の携帯電話は低めとなっていることが分かりました。
カメラの比較評価テスト
2016年現在、市場にあるスマートフォンの多くは約1000万画素のリアカメラとフロントカメラを搭載しています。こうしたハードウェア上のスペック以外に、撮影時の特殊効果設定といったソフトウェア上のスペックもユーザーにとっては重要な比較項目の一つです。アリオンが提供しているカメラ関連の試験サービス項目は多岐に渡るため、ここでは割愛します。詳細については別記事(スマートフォンのユーザーエクスペリエンスの分析-カメラ)をご参照ください。本稿ではシャープネスと色誤差の2つの評価項目に重点を置きました。前者は画像の立体感と画質の表現に影響し、後者により起こる色彩の差異は一般のユーザーに影響を与える可能性があります。
- シャープネス Sharpness
シャープネスの比較には、SFR Plus Standard Chartを利用して光学データ分析を行い、評価基準にはMTFを採用してカメラの解像力の基準値を比較しました。以下の試験結果は5000K /1000Luxの環境下において4台の携帯電話のシャープネス表現の値です。評価の基準はMTF値が高く平均的な表現であるほど良くなり、感覚的には画面に立体感があり画質がよりクリアとなります。これについては、Phone2とPhone3の値が平均化されており、全体の表現度が良好となりました。
- 色誤差 Color Error
色誤差のデータは、数値が低いほど色誤差が少なくなることを表しています。このとき、色彩の正確さが高ければ、撮影された画像はより実物に近くなります。よく見られる事例としては、青色の物体を撮影した際に、写真は紫色寄りとなって表示されることがありますが、これは色誤差により発生します。以下のデータは5000Kの環境下における、それぞれの携帯電話の誤差値であり、結果としてはPhone1が撮影した写真の色誤差が最小であることが分かります。
タッチ試験の比較
アリオンでは上下左右のスライドのほか、マルチタッチ、ドラッグテストなど幅広いタッチ試験を提供しています。詳細なタッチ試験はプロフェッショナルな機材群とエンジニアが必要ですので、提供できる試験ラボは多くはありません。本項目では、Hot Zone、垂直タッチ、干渉環境下でのタッチ品質を比較しています。アリオンはユーザーの様々な操作に対し、下図の6本の赤いラインで分けられた4ブロックのエリアで、製品ごとのタッチコントロールの品質を測定し、Hot Zone(良好)とEdge Zone(不良)に分けてタッチエリアに対するコントロールの敏感度の反応を調べました。
- タッチの品質Hot Zoneとタッチの反応時間
Hot ZoneとEdge Zoneの比較の上では直接的な優劣の基準はなく、主にメーカー側によるタッチパネル上の調整とリクエストによります。以下の白色のブロックが今回テストした4台の携帯電話のHot Zoneであり、ここがユーザーの操作の上で最も敏感なエリアとなります。
このほか、タッチの反応速度も試験しました。この項目はユーザーの携帯電話の速度の遅い・早いの評価に直接影響します。現在市場にあるタッチパネルはすべて一定以上の水準にありますが、しかし往々にして微小な差異がキーポイントとなるため、アリオンでは高速カメラでの撮影を採用して、データの正確性を追求しています。
- 垂直タッチ
ユーザーがモニターをスライドする際には、数多くのジェスチャーとスライド方法がある可能性があります。例えば2本指でのスライド、エッジでのドラッグ、水平なスライド、垂直なスライドなどです。スライド時の感覚がスムーズでないのは、OS、UI、APP自体のソフトウェアのデザインといった理由のほかに、携帯電話のタッチ効果の問題である可能性があるのです。ここでは垂直のタッチテストを例として、画面上に線を引いてみて、線の発生がスムーズであるかどうかを観察しました。そして、指がスライドした後と実際の線が発生する時間の感覚は非常に小さく、非常に精密なカメラを通してはじめて補足することができました。下図のデータでわかる通り、Phone3の表現がもっともよく、わずか0.1秒でユーザーがそのタッチの反応を感じることができることとなります。
実際のテストの際に、すべての携帯電話がラインを引く際にすべて間隔が状況を発見しました。しかし下図から見て取れる通り変わらずPhone3の表現がもっともよく、ラインを引く際に、その動態の黄色いポイントとスライドした後の指の距離が最も接近しており、その反応がより敏感であることを表しています。
- 干渉環境下:Wi-Fi + Bluetoothの送信
以上3種類の機能(Display, Camera, Touch)を総合することで、7種類の指標となる結果が出揃いました、今回の比較評価で選んだ4台の携帯電話の比較は下表の通りとなりました。ディスプレイの部分では、明るさの範囲はPhone3の表現が、色空間ではPhone2の表現が最も良好であり、ブルーライトの表現はPhone1のコントロールが最良となりました。カメラのパフォーマンス、シャープネスはPhone2とPhone3のパフォーマンスがどちらもよく、一定のシャープネスかつ均一性も良好であり、色誤差のコントロールではPhone1が最も良好なコントロールのパフォーマンスを獲得しました。最後のタッチの部分ではPhone3が反応時間で最良のパフォーマンスであり、Phone4は耐干渉の方面で比較的優れているのみであり、その他2種類の機能ではほかの機種に後れを取りました。Phone 3 は3種類の機能ですべてそれぞれ1項目の指標がその他の携帯電話をリードし、全体的に優位であることを示しました。
アリオンはこのような比較分析試験を、プロフェッショナルな試験環境とエンジニアにより実施することができます。比較分析の結果を通じて、より自社製品に対する深い理解を得ることで、より高度な顧へのアプローチ施策を練ることができることでしょう。
比較分析試験について気になる点などがございましたら、アリオンまでお気軽にお問い合わせください。
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