Allion Labs/Lexus Lee
アリオンは、VESA協会に認証された初のDisplayPort 2.1認証機関として、2022年半ばにDisplayPort 2.1製品の認証プログラムが始まってから、主要なブランドメーカーやODMメーカーのDisplayPort 2.1製品認証取得をサポートしてきました。この記事では、DisplayPort 2.1製品の認証テスト時によく起こる問題と、改善アドバイスについて説明します。
最新のDisplayPort認証仕様はDisplayPort 2.0か?
まず、DisplayPort 2.1と2.0のバージョンの間によくある誤解を整理します。
VESA協会が2019年にDisplayPort 2.0 仕様を、3年後にDisplayPort 2.1 仕様をそれぞれリリースし、特にプロトコル層、ケーブルIDおよびコネクタの改善と更新を実施しました。よくお客様から「DisplayPort 2.1の認証に合格するには、CTS 2.0とCTS 2.1バージョンで仕様が違いますか?」とのお問い合わせを頂きますが、現在の認証仕様は主にCTS 2.1バージョンに基づいており、すべてのテスト設備のテスト方法も、CTS 2.1バージョンに従って策定されています。
次に、Source機器側とSink機器側のDisplayPort 2.1認定テストで実際に起こった問題の中で、最も頻繁に発生した問題をいくつか選んでご紹介します。
DisplayPort 2.1 Source機器の認証テストでよくある問題点
1. DisplayPort 2.1 UHBR 物理層テスト
DisplayPort 2.1では、UHBR(Ultra High Bit Rate)伝送モードが追加されました。UHBRは、単一レーンの伝送帯域幅を従来の8.1Gbpsから20Gbpsに上げることができます。このテスト項目は、10Gbps、13.5Gbps、および20Gbpsの状態に対しテストされます。速度が速くなるのは、距離が長くなるにつれて信号の減衰が速くなることを意味しています。電気的特性の10Gbpsと13.5Gbpsの速度は、基本的にDisplayPort 8.1GbpsとHDMI 12Gbpsに似ていますが、ほとんどのメーカーの技術チームは、これら2つの項目の設計経験があるので、10Gbpsと13.5Gbpsのテストにおいては、すべての必須テスト項目でスムーズに合格できるでしょう。
ただし、実際に問われるのは20Gbpsのテストです。アリオンのテスト経験によると、現在の20Gbpsテストは、アイパターンとジッターのテスト項目で失敗する傾向にあります。DisplayPortのトランスミッタICとコネクタ間のトレースが長すぎると、信号の減衰が大きくなりすぎて、認証テストに不合格となる可能性が高くなります。アリオンの擁する豊富でプロフェッショナルなテスト経験から、RedriveまたはRetimer ICを追加して信号の減衰を補正し、障害を回避することをお勧めします。
図1: (左)正常な状況でのアイパターン / (右) 正常な状況でのジッター
2. DisplayPort 2.1 Return Loss Test
DisplayPort 2.1の認証テストにDifferential Return Loss (ディファレンシャルリターンロス)とCommon Mode Return Loss (コモンモードリターンロス)が追加され、このテスト項目もよく不合格となる項目の一つです。特に、多くのDUTはコモンリターンロスセクションでfailとなってしまいます。
このテスト項目に合格するための大切な要素の1つは、製品がEnhancedコネクタを使用しているかどうかです。主にUHBR製品がEnhancedコネクタを使用して、UHBR10/13.5/20伝送の品質を確保できるようにします。
次に、同じ製品に対してNon EnhancedコネクタとEnhancedコネクタを使用した場合の違いを比較してみましょう。以下の図2をご参照ください。
図2: (左) Non Enhancedコネクタ、(右) Enhancedコネクタを使用した場合の違い
図2を見ると、Enhancedコネクタを使用すると、全体的なReturn Lossが比較的良好であることがはっきりとわかります。上の図のテスト基準(test criteria)はDisplayPort 2.0 仕様に基づいていますが、その後VESAはテスト基準としてDisplayPort 2.0 仕様を使用し、初期のテストデータを評価してからは、Differential Return LossとCommon Mode Return Lossのテスト基準を緩和し、DisplayPort 2.1仕様に含めることを決定しました。
下の図3は、DisplayPort 2.0 およびDisplayPort 2.1 仕様のDifferential/Common Return Lossの基準をそれぞれ表しています。これにより、Common Return Lossの値が約2~3dBほど、Differential Return Lossの値は3dBほど、それぞれ緩和されていることがわかります。
図3:DisplayPort 2.0 およびDisplayPort 2.1 仕様のDifferential/Common Return Lossの基準
現在の認証プログラムは、DisplayPort 2.1の基準を適用することになっているため、製品はDifferential /Common Return Lossのテストに合格しやすくなります。
上記は、DisplayPort 2.1 Source機器の認証テストで問題を引き起こす可能性のあるテスト項目であり、これらの項目が対応している設計は、PCBを修正する必要があるかどうかに影響し、ひいてはメーカーの製品設計コストにも影響します。
DisplayPort 2.1 Sink機器の認証テストでよくある問題点
1. DisplayPort 2.1 Return Loss Test
この質問はソースと同じで、Differential/Common Return Loss Testです。解決策は上記と同じなので、ここでは割愛します。
2. DisplayPort 2.1 Cable ID Detection Test
2つ目の問題は、ケーブルID検出が動作しないことです。
UHBRケーブルはDP80とDP40に分かれているため、レガシーケーブル(Legacy Cable)に加えて、DP80 UHBRケーブルとDP40 UHBRケーブルもケーブルタイプに追加する必要があります。したがって、UHBR Sink製品は、接続されているケーブルの種類を識別し、そのケーブル情報をDPCDレジスタ0x2217(内容は下図4に表示) に入力します。これにより、UHBR Source側もそのケーブルの種類を識別できるようになります。
このテスト項目については、ハードウェア、ファームウェアそれぞれの設計変更を提案する改善方法となります。紙面の都合で限りがありますので、ご興味のある方、お困りの方はお問い合わせいただければ、アリオンの技術専門家チームが詳しくご説明いたします。
図4:DPCDレジスタ0x2217
3. DisplayPort 2.1ジッター耐性テスト(Jitter Tolerance Test)
3つ目はジッター耐性テストで、このテスト項目の不合格の理由は2つに分けられます。
1つは、RX ICのジッター耐性を評価する段階に入っていなくても、AUX通信に問題があることです(下図の赤枠内)。RX ICのジッターに対する耐性のテストに入らなくても、つまりジッターがなくても、UHBR Sinkはテスト不合格を報告します。
当社のテスト経験により、この問題が発生したときは、最初にジッター耐性テストに対するAUXコミュニケーションの応答プロセスが正しいかどうかを確認することをお勧めします。
図5:Jitter Tolerance Testのイメージ
もう1つは、さまざまなジッター周波数でのRX ICの耐性を実際に測定することです。現在、ほとんどのUHBR Sink製品は、10Gbpsと13.5Gbpsの速度でテストに合格できますが、20Gbpsでは不合格となる可能性があります。この問題が発生したときは、テストに合格するために、UHBRのRetimerまたはScalerのEQパラメータを調整することをお勧めします。
製品認証の憂いなし!DisplayPort認証テストの内容全体を把握しましょう
以上、DisplayPort 2.1 SinkおよびSource製品の認証開始後、テスト上でよく起こる問題をご紹介しました。このような経験の共有を通じて、お客様の製品開発と設計、または認証取得に少しでも貢献できれば幸いです。アリオンは、DisplayPortだけでなく、HDMIやThunderboltなどの他のビデオ・オーディオ関連ターフェースの認証サービスも提供しており、テスト環境および設備などを完備することで、シナリオシミュレーションや互換性テストサービスに対応することが可能です。
テストにご興味がある方は、アリオンのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。