e-スポーツゲームにはゲーミングモニターが絶対に必要なのか?

ここ数年、世界中がCOVID-19パンデミックの影響を受けていますが、e-スポーツ産業はこの逆境の中飛躍的な発展を遂げ、ゲーム周辺機器の産業にも経済的効果をもたらしています。市場調査を行っている企業Mordor Intelligenceによると、ゲーム市場の2021年の全体規模の価値は1,984億ドルに達し、2027年には3,399.5億ドルに及び、2022~2027年の年平均成長率は8.94%と見込まれています。

参照データ:Gaming Market Size, Growth & Trends (2022-27) |Industry Analysis (mordorintelligence.com)

e-スポーツのプレイヤーが増加するに伴い、製品の使用に関する問題も増えています。ゲームのプレイ中に音の遅延が発生したり、画面が固まると、プレイヤーには不快な体験を与えてしまい、更にはハロー効果へと繋がり、影響を受けていたハードウェアデバイスに対する悪い評価が増えてしまいます。ゲーム市場におけるこのような不備に対して、各メーカ、eコマース業者はこぞって自社製品の宣伝を行い、遅延低減のメリットから製品のパフォーマンスを全面に押し出し、消費者の購入意欲を促し、実際に購入してもらうことで、プレイヤー達に最高のユーザー体験を届けようと画策しています。

アリオンはプレイヤー視点から、それぞれ一般ユーザー向けモニター(Consumerタイプ)、産業用ディスプレイ(Commercialタイプ)、ゲーミングモニター(Gamingタイプ)、タイプの違う3種類のモニターを用いて、実測テストを行いました。異なるシチュエーションや条件下で、本当にゲーミングモニターのパフォーマンスが一番優れているのか?高いお金を払って低遅延のゲーミングモニターを購入する価値があるのか?を検証してみました。

実測結果を見てみましょう

当社は業界において標準となっている測定方法End to End System Latency = Peripheral Latency + PC Latency + Display Latencyを用いて今回の実測評価を行います。まずはPeripheral LatencyとPC Latency、この2つの変数を固定し、LDAT (latency display analysis tool)を用いてユーザーがマウスを左クリックした際モニターに反映されるリアクションタイム、つまりE2E System Latencyを測定します。測定で得られたE2E System Latency値から、間接的にDisplay Latencyのパフォーマンスを割り出すことができます。

以下に今回の実測テストで使用したPCの仕様とタイプの違う3台のモニターの測定時のパラメータをまとめました。その中、ゲーミングモニターには特別に144Hz下のパフォーマンスを追加しています。

 System Info 

 Monitor Test Mode 

 

信頼性高いE2E System Latency値を得るため、各シチュエーションと条件にて、1セット20回のテストをそれぞれ2セット実行し、平均値を求めています。検証テストの詳細な条件と結果は以下の説明をご覧ください。

 

 SOLLatencyDX11 APPで測定 

LDAT softwareに付属しているSOLLatencyDX11アプリケーションを用いてE2E System Latencyを測定します。このアプリケーションでは、マウスをクリックするとモニターの画像の色が変わります。ここではレンダリング遅延の要素はあまり含まれないため、比較的純粋なシステム遅延が測定できます。

測定結果によると、ゲーミングモニターには期待していたパフォーマンスが得られませんでした。3台のモニターとも60Hzの場合、ゲーミングモニターは逆に一番パフォーマンスが悪い(35.5 ms)という結果になっており、144Hzにしてやっと他のモニターが60Hzの時と同等程の水準(26.0 ms)となっています。

 Apex Legends Game測定 

この測定では、世界中で1億人以上のプレイヤーを誇る人気のFPSゲーム《Apex Legends (エーペックレジェンズ) 》を用いて、マウスを左クリックしてから銃口から弾が発射されるまでの遅延時間を測定します。まず、Reflex低遅延モードをOffまたはOnモードに設定し、レンダリング遅延をテストモニターに反映させた場合のパフォーマンスを測定します。

  • Reflex Offモード

Reflex低遅延モードを「Off」に設定した場合、3台のモニターとも60Hzにおけるゲーム中のパフォーマンスは非常に近い結果となっております。同じ条件下では、eスポーツ向けのゲーミングモニターであるからといって、特に優れているわけではありませんでした。更新率を144Hzに上げた場合にのみ、顕著にパフォーマンスが発揮(79.7 ms)されています。

  • Reflex Onモード

Reflex低遅延モードをOnに設定し、ゲームがサポートしている遅延技術による顕著なパフォーマンスの違いが無いかを確認します。

この測定結果から、Reflex低遅延モードを「On」に設定した場合、一般ユーザー向けモニターと産業用ディスプレイには、Reflex機能を使用することによる顕著な違いは見られませんでしたが、ゲーミングモニターは60Hzと144Hzのどちらにおいても、結果がそれぞれ77.9msと57.6msとあるように、非常に優れたパフォーマンスを発揮しています。

人間のリアクションタイムは約200~350msとされており、専門の訓練を受けたプロゲーマーのは150~200msまで短縮されます。このようなeスポーツ向けの設備の補助によって、更に50ms以上短縮することが可能とされています。

全面的な検証テストがeスポーツ向け製品を優位に立たせるカギだ

測定結果をまとめると、プレイヤーがゲーミングモニターでゲームをプレイした場合、確かに比較的良いプレイ体験を得ることができますが、プレイするゲームや各設定、各条件によって影響する結果が違ってくるため、得られるユーザー体験も違ってきます。そのため、eスポーツ向け製品を市場にリリースする前にあらゆる検証テストを行うことが非常に重要になります。

アリオンは長年にわたり、市場における最新のゲームや人気ゲームを網羅し、各システムプラットフォームの最新のハードウェアも購入し続けております。プレイヤーに不快なユーザー体験を与えて、悪い評価やクレームを残さないよう、メーカのお客様がeスポーツ向け製品をリリースする前に、あらゆる条件下にて製品のパフォーマンスが製品の規格を満たしていることを保障できる検証テストをサポートいたします。

アリオンはeスポーツ向け製品のエコシステムにおいて、長年にわたり検証テストの経験を積み上げてきました。製品設計、関連認証の取得から生産管理まで、全てのプロセスにおいてメーカをサポートし強力な後ろ盾となることができます。