Allion Labs/Franck Chen
アンプに比べて軽量で手頃な価格のサウンドバーが、近年ホームシアターシステム市場で急速に普及しています。市場調査を行う会社であるMarket Statsvilleによると、全世界におけるサウンドバーの市場規模は、2020年の50.944億ドルから2027年には90.762億ドルにまで成長し、年間複合成長率は8.6%に達するとされています。しかし、家のテレビに接続する機器はますます多様化しており、ユーザーがサウンドバーを使用する際、ケーブルの接続や関連機能の設定の煩雑さ、更には配線の見栄えなどの問題に直面することがあります。
嬉しいことに、現在市場にWi-Fiを経由してテレビとペアリングできるワイヤレスサウンドバーが続々登場しています。ワイヤレスだと、現代的なホームシアターシステムの配置がよりシンプルで美しくなるのでいいですね。以下では、市販されている製品をいくつかピックアップしご紹介します。
1. TCLのRoku TVワイヤレスサウンドバーは、Roku TVと接続して使用でき、Wi-Fiを経由して接続し使用する世界初のサウンドバーであると宣伝しています。
出典: TCL公式サイト
2. SAMSUNGのサウンドバーは、Wi-Fi経由で伝送が可能な世界初のDolby ATMOS対応サウンドバーとして宣伝されており、SAMSUNG TVとペアリングして使用することができます (その後、Dolby ATMOSに対応したワイヤレスサウンドバーが次々と登場しています)。
出典: SAMSUNG公式サイト
3. LGは「Skip the Wires, Keep the Sound」というスローガンを掲げてWOWCASTを発売し、このドングルを通じて、テレビ(LGに限らず)と多数のLGサウンドバーをWi-Fi経由で接続することができます。同様にDolby ATMOSにも対応しています。
出典: LG公式サイト
市場利用の現状
では、有線デバイスのワイヤレス化が進むトレンドの中で、メーカーがこの市場の関連製品に参入する場合、どのような点に注意すべきでしょうか?
以下、アリオンは各メーカーの主なワイヤレスサウンドバーについて調査を実施し、ユーザーからフィードバックされた主な問題を次のように分類しました。
[タイプ1] 接続の問題
例:ペアリングしたテレビとサウンドバーが何の前触れもなく接続が切れたなど
[タイプ2] AV同期遅延の問題
例:映像・音声が同期しない、遅延するなど
[タイプ3] オーディオチャンネル出力の問題
例:一部の音声が出力できないなど
[タイプ4] オーディオ品質の問題
例:音声出力に雑音や途切れがあるなど
[タイプ5] ユーザーエクスペリエンス問題/その他
例:接続が切れても関連メッセージが表示されない、リモコンが反応しないなど
ワイヤレス接続は非常に便利ですが、上記の調査結果から、品質の悪い製品は環境干渉の影響を受けたり、設計の欠陥により様々な問題が発生する可能性があることは想像に難くありません。以下では、まずワイヤレスサウンドバーと有線サウンドバーを1台ずつ選んでテストを実施しました。
実測環境
評価測定ツール
1. アリオンにある映像・音声の遅延測定ツール:映像・音声出力の同期や遅延の状況を測定
2. Audio Precision APx585B:音声にグリッチやドロップアウトがないかを測定
3. MCW100:ワイヤレスの干渉源を制御
テスト環境
[Test-1] 映像・音声の同期遅延 – ワイヤレスサウンドバー VS HDMIサウンドバー
テストシナリオ
- ワイヤレス干渉信号:なし
- 音声感知測定距離:1m
測定項目
映像・音声の同期テストを合計3回、各回それぞれ20回の連続サンプリングテストを実施しました。
測定基準
映像・音声が同期しているかの感知は、人によって多少感覚の違いがありますが、色々な協会で定められた基準から、次のような映像・音声の同期に関する基準をまとめました
※註:+値は音声が映像よりも速いことを示し、反対に-値は音声が映像よりも遅れていることを示しています。映像・音声の同期テストを合計3回、各回それぞれ20回の連続サンプリングテストを実施しました。
測定結果(3回テストした平均値)
結果分析
結果を見ると、一般的な環境においてこのワイヤレスサウンドバーで映像・音声の同期を3回テストしたところ、その平均は+21〜+26でH社の有線サウンドバーよりも優れているという結果が出ました。生活の中に様々なワイヤレス干渉がある状況を考慮すると、そのパフォーマンスはどうでしょうか?
[Test-2] 映像・音声の同期遅延 – Wi-Fi干渉環境
テストシナリオ
- 干渉強度:無干渉 / -40 dBm / -30 dBm / -20 dBm / -10 dBm
- 音声感知測定距離:1m
測定項目
映像・音声の同期テストを合計3回、各回それぞれ20回の連続サンプリングテストを実施しました。
測定結果(3回テストした平均値)
結果分析
1. 平均データから、サウンドバーに中低強度の干渉が発生すると音声が影響を受け始め、遅延が少し発生していることがわかります。しかしながら、全体的な映像・音声の同期遅延(+16〜+17ms)は、逆により良い結果になる傾向があります。
2. 中高強度の干渉が発生した場合、表面的には全体的な映像・音声の同期遅延の程度は良好に見えますが、実際の過程では明らかな音声の途切れを検出し、時には接続が失われることさえありました。
⇨さらに分析を進めると、干渉が比較的多いチャンネルで接続された場合、サウンドバーとテレビの接続が自動的に他のチャンネルに切り替わらないこともありました。このような状況では容易に音声出力が途切れたり、接続が失われることさえあります。
3. 高強度の干渉が発生すると、基本的に音声は正常に出力されず接続が頻繁に切れて、十分な映像・音声の同期データを取得できなくなりました。
その他使用上の問題
1. この製品を初めて使用する際、テレビがネットワークに接続されていないと、このワイヤレスサウンドバーの初期自動更新ができず、関連するヒントも表示されないため、ユーザーがそれに気づかずデバイス検索とペアリングの操作を繰り返してしまう可能性があります。
2. テレビとサウンドバーが切断され再接続しても、一部の情報インターフェースでは「切断」状態と表示され、同期が更新されません。
3. ユーザーからのフィードバックにある通り、このサウンドバーを水平にテレビの正面に配置する場合、その構造上リモコンとテレビ間の信号伝送をほぼ遮断してしまうため、テレビの高さを高くしたり、別の角度から操作しなければならず、操作が非常に面倒になります。
まとめ
ワイヤレス干渉防止の観点から単純に映像・音声の同期だけを見ると、実際の生活におけるワイヤレス干渉の強度が中高強度に達することはほとんどなく、このワイヤレスサウンドバー製品の映像・音声同期のパフォーマンスは合格圏内であると言うことができます。
しかしながら、過去の経験やユーザーのフィードバックから、他のシーン(例:干渉源の位置、使用時間の長短、異なる映像・音声フォーマット/再生インターフェースなど)において、マルチチャンネルの音声出力におけるグリッチ・ドロップアウト現象や、視聴品質の客観的な知覚、関連するUX設計などのパフォーマンスはどうでしょうか? これらは、ユーザーエクスペリエンスに大きな影響を与える重要な問題です。次の記事では、より多くの実測結果をご紹介します。
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