家電量販店では様々なブランドのテレビが売られています。売り場を訪れる消費者は、実際に使ってみたり画質を比較したりして、数あるテレビの中から最終的な購入製品を決定します。各メーカーのモードにはすべて細やかな違いがあり、各ブランドの特徴付けがなされています。消費者の注目を集めるには、一体どのようにすれば良いのでしょうか。そのために重要となるのが、工場出荷前の色調整プロセスです。

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今回の記事では、アリオンの画質試験の内容をご紹介いたします。音質試験については耳で実際に聞いて測定する必要があるので、本文中では簡単な内容のみを紹介しています。

工場出荷前の画質調整

市場にあるすべてのテレビは、開発段階で既に画質・音質の調整を受けており、一定の品質基準に到達しています。しかし、各ブランドがアピールする映像と音声の特徴を表現するためには、工場出荷前の画質調整は欠かすことができません。例えば、あるブランドはきらびやかな色彩を好み、あるブランドは柔らかな色の表現を好みます。色合いの調整には明確な良し悪しがあるわけではありませんが、ブランドが伝えたい色彩表現は様々です。

調整は通常、映像の画質(PQ, Picture Quality)と音質 (AQ, Audio Quality)の2つのカテゴリに分かれます。アリオンでは第三者試験ラボとして客観的な試験基準に則って試験を実施することで、公正な結果を提出することができます。さらに、一歩進んだ製品の比較データと報告をお客様の参考としてご提供することもできます。

試験環境のセッティング

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試験担当者は反射性材料のない暗室で、決まった距離と角度でモニターを観賞します。暗室内のライトも明るさが決まっており、色味としては白色寄りの暖色系となっています。

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画質について

画質試験項目

画質試験を進める際、まずテレビのウォームアップを少なくとも60分間以上行い、テレビが対応している最も高画質かつ色鮮やかなモードを選択します。テレビのモニターに明らかな色差や、正常でない光点が見られた場合、色分析器(Color Analyzer)によってその座標を測定し、再度記録します。画質試験は試験項目数が非常に多いため、ここでは以下の5つの例をピックアップします。

1. Black Pluge Pattern

画像を『黒』画面に設定し、モニターのDC回復機能を確認します。

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※外枠は毎秒1回点滅します。

実際に行った試験結果を例に出すと、あるテレビでは外枠が点滅せず、ベースカラーと同じ黒い画面が表示されました。

2. Decoder Check

この図表では、該当するテレビの三原色である赤/緑/青の彩度を確認することができます。以下の比較だと、左側の青の彩度は色の区別がつかないことから、飽和状態に調整されていることが分かります。

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3. Multi Burst Pattern and Sharpness

 

Multi Burst Patternでは主にモニターがクリアなストライプを表示できるかどうかを確認します。下図はMulti Burst Patternの標準的なイラストです。

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ストライプは周波数を表しており、間隔が広いほど周波数は低くなります。上記画像の右側はラインが密集していますが、これは高い周波数を表しています。試験では、モニター上で全てのストライプを綺麗に見られることが必須条件となります。

 

Sharpnessは主に画像表示の繊細度とシャープネスの調整を確認します。イラストの下半分の直線のラインがクリアであることや、シャープ過ぎることによる余分な白色ラインの表示を確認します。

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これはある試験結果の事例ですが、左側のテレビの右下隅は過度なシャープネスによって、正方形の画像を描画できなくなっています。

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4. Uniformity

Uniformityの項目を確認する際は、画面全体を白色にして視聴し、モニター上に暗い部分や色ムラがないか注意して視聴します。モニター全面が同じ色であることが理想的です。以下の画像を例とすると、暗い部分が多数見受けられることから、色の均一性に問題があることが見て取れます。

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他のテレビと比較した場合、暗い部分のムラがより明白となります。(下図左側)

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5. Color saturation

私たちは色彩の彩度と正確性も確認しています。以下の図を例とすると、もともとは左側では赤色だった部分が、右側では緑色になっています。これはカラースペースを間違えた可能性があります。例えば、RGBの色空間をYUVの色空間として設定した場合に、こうした現象が発生する可能性があります。

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動画による画質表現

動画による画質表現では、まず試験用の動画が正常であり基準と一致しているかどうかを確認してから、テレビ放送を確認します。動画のシーンごとに解決の糸口があります。下の鴨の丸焼きを例にすると、表面の油の光沢と色彩が、モニターの色表現のポイントとなります。複数のテレビで同時に視聴した場合、その差異は明確なものとなります。

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次にこの画像を見てみましょう。ポイントは青色の色調と飽和度です。動画からすばやく切り換わる各シーンの中から、いかにして各テレビの差異を比較するのか。試験担当者が注意をはらい、入念に検討する必要のあるポイントです。

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試験担当者は動画を見る際、色の表現に注意するほか、同時に画面に異常な点滅や光点がないかも注意を払います。以下の画像だと、動画を表示するとき、内部プログラムは移動し続ける不規則なラインを処理するために、画面に絶え間ない点滅が発生しています。

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出典: HD CLUB, 2013

4K HDR

HDR機能のテレビに対しても、比較評価を行うことができます。下図の左側はHDR効果を検出できるテレビです。その色彩は鮮やかでグラデーションも豊富です。一方で、右側はHDRの効果を検出できないテレビです。

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出典: Life of Pi (HDR), 2015

HDRの関連文章は以下のリンクをご参照ください。

映像の鮮明さを左右するハイダイナミックレンジ(HDR)

 

音質について

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出典: HD CLUB, 2013

現在のテレビは薄型のデザインに重きを置いており、共鳴管方式のスピーカー音や、機体の共鳴など、音質の表現への影響は免れません。このため多くのメーカーが次第に外部サウンドバーなどを取り入れることで、より高い音質を追求しています。

音質試験を行う際、Sweep Sound (50 ~ 550Hz)と民謡、ロック、ブルース、そしてその他様々な楽曲を使用し、人の耳によって実際の音質を比べる試験を行っています。音質のパフォーマンスは専門家によって確認されます。

 

本稿に関連する試験ソリューション

  • 4K UHD Test
  • Low Blue Light Test
  • Software and Function Test
  • Audio Electrical Performance Test
  • Audio Acoustic Test
  • System Performance Test
  • HDMI Compliance Test
  • USB Compliance Test
  • DLNA Test