「自宅のリビングに置いてある80インチの大画面テレビで、4K解像度の映画を見たい」なんて考えたことはありませんか?4Kの大画面テレビにホームシアターのサラウンドシステムが加わることで、自宅にいながらまるで映画館で映画を鑑賞しているような、実に豪華な体験となります。

最先端のデジタル生活を語る上で、映像技術は常にホットな話題を提供してきました。ディスプレイがデジタル化の時代に突入してから、記録媒体はCDからDVD、ブルーレイに進化しました。その一方で、画質は240pから720P、1080P、そして現在では話題の4K UHD(解像度3840×2160)まで発展しています。これは、大画面だけでなく、画質に対するユーザーの要求レベルも上がってきていることを物語っており、特に4Kテレビについては業界全体でも話題となっています。

4K画質を謳った製品は数多く市場に出回るようになりましたが、同じ4Kテレビでもメーカーによって違いがあります。「ユーザーは4Kテレビに対し、いかに向き合うべきか」、「4Kテレビ市場にはどこのメーカーが参入しているのか」、「4Kテレビ市場の将来のトレンドは?」、といった問いに対して答えを出すべく、アリオンではCES 2016(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で四大トレンドのひとつとなった4Kテレビにスポットを当て、この市場を分析しました。この記事では4K技術について解説し、さらに4K技術の強み日常生活にもたらす新たな視野について理解を深めていきます。

 

4K技術の誕生

4K技術が最初に世に出たのは、リアル4Kムービーと称した2013年公開の映画『アフターアース』(After Earth)と『オブリビオン』(Oblivion)でした。これらの映画は、8Kイメージセンサー搭載のSony 4Kカメラ「F65」で撮影された作品です。

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SONY CineAlta 4Kカメラ「F65RS Source : SONY United Kingdom Website

 

しかし、ほんとうの意味で4K技術が話題になり始めたのは、4Kテレビの技術が誕生したからです。50インチの大画面になると、従来のフルHD解像度では視聴者のニーズを満たせないため、さらなる高解像度のテレビ開発が大手メーカー競争の焦点となっていました。解像度はかつてスタンダードだった標準画質(SDフルHDFHDから現在では4Kに至り、将来は8Kにまで発展することがわかります。

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Comparison Chart of 8K UHDTV, 4K UHDTV, HDTV and SDTV resolution Source: Wikimedia

 

さらに高精細の画質を実現するため、パネルメーカーは超高精細(Ultra HD/UHD)パネルを開発し、従来のフルHDテレビの4倍の解像度となる解像度3840 x 2160、いわゆる4Kテレビを発表し、画質をアップグレードさせました。フルHDだと解像度は1920×1080です。4Kだと水平方向、垂直方向、それぞれでフルHDの2倍の解像度をもつので、面積(総画素)にして解像度4倍ということになり、大迫力の画面をリアルに再現できます。

 

 4K技術の強み 

  • 1080P4倍の解像度をもつ4K画質

同一サイズの画面で比較すると、フルHDは207万画素、4Kだと851万画素となります。同じ面積でも画素が4倍ということは、表現の緻密さも向上するため、画質の差が肉眼ではっきり分かります。

 

  • 2D及び3D映像を再生できる4K技術

4K画質で3D映像を再生することによって、視聴者にシアタークラスの3D映像効果を提供できます(もちろん、2Dモードでもリアルな4K画面を実現できます)。4K画質の番組や映画を楽しむには、4Kテレビ本体が必要なのに加えて、4K映像コンテンツと4K映像を再生する機器(原情報と復号器)が必要です。下図に示すように、4Kテレビが再生する原情報がフルHD画質の映像だった場合、最終的に放映される映像はフルHD画質にとどまります。

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4Kテレビ選択の際のポイント

アリオンでは上記の4K技術の強みを踏まえ、理想的な4Kテレビが備えるべき特徴を以下にリストアップしました。

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映像コーディング技術HEVC/H.265(High Efficiency Video Coding)は、UHD 4K映像コーディング技術の主流として認められています。そして、次世代インターフェースであるHDMI 2.0こそ、4K映像再生機器に搭載すべきインターフェースです。無線通信としては、Wi-Fi 11acが挙げられます。4Kテレビ放送開始前の4Kコンテンツの取得はネット動画配信サービスが主流になると予想されており(既にYouTube/Netflixを通してUHDビデオを再生可能)、4Kビデオをストリーミング再生で見たいという需要を満たすための巨大な情報量を、ネット経由で送信する技術が不可欠となるからです。

 

新たに注目されるHDRDolby Vision

4K解像度がもたらす高画質には驚くべきものがあります。米国CES 2016(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で私たちは、多くのメーカーがOLED及びHDRHigh Dynamic Range、ハイダイナミックレンジ)の技術を用いた超高画質を実現しているのを目にしました。HDR対応4Kテレビが既に市場にあり、HDR対応のドラマや映画もネットで配信されていることから、HDR技術は強くアピールされていました。また、HDR機能を備えたブルーレイディスクも発売間近であり、HDR対応のテレビは4Kテレビに劣らずユーザーから期待されています。この重要な技術革新については、まだあまり知られていないため、アリオンでは次回の記事で詳しく解説したいと考えています。

 

最初に認知されたHDR技術は、ドルビービジョン(Dolby Vision™でしょう。CES 2016でドルビー社は、TCL、LG電子、Vizioといった企業との提携により、数多くのOLED UHD TV 及びLED LCD UHD TVの新製品にHDR技術を搭載することを宣言しました。

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4K TCL Roku TVTMテレビ– Dolby Vision HDR技術搭載 Source: TCL USA

 

Dolby Visionは、テレビにハイダイナミックレンジと広色域を提供する技術です。映像を細部までくっきりと明るく映し、以前には表現しきれなかった数百万種類の色まで再現できるため、インパクトのあるビジュアル効果をもたらします。視聴者は1080pの高精細テレビを見て、これまでとは全く異なる体験ができます。Dolby Visionを採用したテレビは、特別に制作されたコンテンツで表示することになることから、ユーザーの購買意欲を高めるには、4K映像の普及を待たなければなりません。たとえば、米国の動画ストリーミング再生配信サービス「Netflix」が、10話1クールに九千万ドルを投入したオリジナルドラマ「マルコポーロ」(Marco Polo)は、Dolby Visionを採用しています。グローバル市場では近い将来、高解像度4Kテレビ向けの4Kコンテンツがどんどん出回るようになると思われます。

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Dolby Vision対応のNetflixオリジナルドラマ「マルコポーロ」(Marco Polo Source: NETFLIX

 

4Kテレビ市場を争うメーカー

近年、技術的なブレークスルーによって4Kが普及し始め、数多くのメーカーが4Kテレビを市場に送り出しています。IHS DisplaySearchの報告によると、4Kテレビの2015年第1四半期売上高1位はサムソンで、全世界のシェア32%を占めていますが、この数字は2014年第4四半期に比べてやや落ちています。世界経済は中国の旺盛な需要に左右されるところがあるため、中国メーカーは第1四半期に大きくシェアを伸ばしました。中国メーカーが4Kテレビの販売に力を入れた結果、第1四半期における中国の4Kテレビ出荷台数は、テレビ出荷台数全体の16%に達しました。これに較べて、第1四半期におけるサムスンの4Kテレビ出荷台数は、同社のテレビ出荷台数全体の11%しかありません。ライバルのLG電子は、第1四半期においては4Kテレビ出荷台数で2位につけており、同社のテレビ売上高の15%を占めています。この二社の後には、海信(ハイセンス)、ソニー、創維(スカイワース)と続いています。

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4Kテレビ市場トレンド 普及のスピードアップ

4Kパネルの価格が下がり続けているため、4KテレビとフルHDテレビの価格差が縮まってきており、将来は4Kが主流となることが予測されています。リサーチ会社IHSの予想では、2017年には4Kテレビは50インチ以上の大画面テレビ出荷台数の大部分を占め、2019年まで4Kテレビのシェアは上がり続け(下図参照)、特に北米市場で34%に達すると見ています。

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世界市場における4Kテレビのシェア Source: IHS Inc.

4Kテレビはアジア市場でも好調で、ここ数年、中国市場でも4Kテレビのシェアは上昇傾向にあります。価格の下落、選択肢の増加、映像コンテンツや規格の多様化といった背景もあり、2015年第1四半期における中国の4Kテレビ出荷台数は260万台と、244%の伸びを示しました。IHSによると、中国の4Kテレビ生産出荷は全世界の需要の半分以上をまかなっており、将来における製品の発展に直接の影響を与えそうです。

 

パネルメーカーの対応としては、各社の製品は、4K化、高解像度、タッチ機能、新しい製造工程(IGZO:[インジウム、ガリウム、亜鉛の酸化物など、酸化物]TFT)、新しいディスプレイ技術(AMOLED)、フレキシブル(Flexible)、湾曲化(Curved)といった方向に向かっており、わけも大画面化と高画質化湾曲化に向けて発展しています。

 

1. サイズが拡大を続け、解像度も大幅に上昇

4Kテレビはすでにメーカー各社の主力商品となっており、欧米、日本といった先進国では、50インチが売れ筋です。大画面だと、32インチ以上のパネルが3840×2160(4K UHD)に対応し、3D対応やネット接続といったスマートテレビの機能も備えており、4K UHD TVを販売している、Samsung、LG、Sony、Sharp、Panasonic、Toshibaなどの大手家電メーカーは、大画面テレビ生産に向けて準備を進めています。

調査会社WitsViewの報告は、市場に出回るテレビの中で50インチ以上が占める割合は、2014年の18.3%から2015年には19.7%となり、2016年には22%に達する可能性もあると予測し、特に65インチ以上が主力になると見ています。また、高解像度規格として60Hzの製品が占める割合が増して、2016年の全世界の4Kテレビのシェアは、2015年の13~14%から、一挙に二割を超えて23%になると予想しています。

 

 2. 湾曲ディスプレイが市場のトレンドに 

視聴者を中心に円弧を描くように湾曲したディスプレイは、抜群の視聴体験をもたらします。目元から画面までの距離が中央部と左右両端部とで一定距離となるため、画面中央から離れたエッジ部分でも映像の歪みが少なくなり、視野いっぱいに広がる臨場感を演出できます。LG、SamsungがOLEDディスプレイ技術搭載の55インチUHD湾曲テレビを発表したのに続いて、Sonyと中国の長虹(CHANGHONG)も次々と戦線に加わり、湾曲テレビ市場の需要を刺激しています。WitsViewは、サムスンと中国メーカー各社の後押しによって2015年全世界の湾曲テレビ出荷台数は400万台を突破し、シェア率は1.9%となり、また2016年には800万台に及ぶ成長を遂げ、シェア率も3.6%に手が届くと予想しています。

 

4Kテレビの画質を保証するため必需品 HDMIケーブルとUHD標準規格

一般的には、「解像度3840 x 2160のテレビ、イコール4Kテレビ」と考えられているようですが、4K解像度というのは4Kテレビのディスプレイ属性に過ぎず、「解像度3840 x 2160のテレビ、イコール4Kテレビ」とは限りません。

これと同様に、Ultra HD 4Kテレビの認証も、解像度の認証だけではなく、機能、映像フォーマット、出入力インターフェース、性能など、多方面の要求が満たされなければなりません。UHDアライアンス(UHD Alliance)は、性能面で業界がクリアすべき要求をまとめてひとつの基準として制定しており、これには解像度、色域、ビットレート、明暗度といった、高精細度映像表現にとっての重要項目が含まれています。アリオンは世界で最初のUHDアライアンス認定のATC(UHDA Authorized Test Centers)として認定を受けています。アリオンはお客様のUHDアライアンス認証取得に協力しており、市場での競争力アップや4Kテレビならではの大迫力の臨場感、最高の4Kビジュアル体験を実現できるようお手伝いをしています。

ディスプレイ分野でのテスト経験が豊富なアリオンでは、協会が提供する新規格や業界情報を正確にキャッチすることができます。ディスプレイ技術の分野は日進月歩であり、アリオンでは絶え間ない努力と時流のキャッチアップを目標にエンジニアの知識を向上させており、最新の設備を取り揃えています。

4Kテレビ視聴者に高画質体験をもたらすために、もうひとつのカギとなるのが「プレミアムHDMIケーブル認証プログラム」です。このプログラムは、HDMIケーブルで4K/Ultra HD製品に接続するときのHDMIケーブルに対する信頼性を確保し、関連製品の普及を加速させるために制定されました。

HDMI認定試験場所として、HDMIコンプライアンスプログラムを提供し、製品の互換性試験も一緒に実施できるアリオンなら、HDMI試験スタッフが迅速に問題点を探り出し、規格の要求に合わせて互換性をも確認できます。製品メーカーは高価な試験設備を取り揃えたり、時間を割いて専門スタッフを教育したりすることなく、経済的、効率的な方法で、HDMI認証を取得できます。

UHDアライアンス認証およびHDMI認証に関して興味・関心のある方は、以下のお問い合わせ先までお気軽にご連絡ください。4Kの登場が業界にもたらす変化は、数年前にフルHDが世に出てきた際に起きた、供給チェーンの構築や設備更新といった一連の流れと似ています。4K超高解像度テレビは価格的にも普及加速の段階に入り、選択肢が多様性していくことでしょう。近い将来、映画館にあって家庭にないのはポップコーンだけかもしれません。

 

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