前回に引き続き、特性の異なるコンデンサをさまざまな角度から測定装置を用いて音質の計測を行い、音質関連の測定項目の相違について試験しています。第一回試験では、PC市場でよく知られている音質試験を用い、この試験では測定周波数を人の耳が識別できる帯域20Hz-20KHzに設定しました。システムによるデコーディング音声信号サンプリングレートを通常の44K48Kの二種類としましたが、測定の結果は予想に反し、顕著な差を見出すことはできませんでした。

 

今回の第二回試験では、サンプリングレートが192KHz帯域のデジタル音声信号を信号ソースとしています。192KHz帯域は理論上、90KHz前後の周波数帯に達することができます。この新しい方法により、80KHzに達するSweep信号生成デバイスを製作し、AES-17フィルターによる40KHz制限の設定を解除しました。

試験は、歪みと周波数応答の二項目にポイントを絞って行うとともに、元来の10K ohm320 ohm 負荷試験に、32 ohm(ほとんどのイヤホンの規格)の試験を加えました。

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画像:帯域制限を緩和し、高周波由来の雑音もフィルタリングしない設定

 

1. 80KHzにおけるTHD+NTotal Harmonic Distortion Amplitude Plus Noise vs 80K Frequency

10K Ohm負荷

1

P2-Left1

P2-Right1

32 Ohm負荷

1-2

P2-Left2

P2-Right2

負荷10Kohmのとき測定範囲を80KHzまで広げローパスフィルターの上限を80KHzまで緩和すると、高調波歪みは20KHz -24KHzの帯域に集中しますが、全体的にも歪みは-75dB未満で、かなり高音質です。

負荷を32ohmに変えると、全体的に歪みは-70dB前後に上がります。これは32ohmの負荷が出力電圧を下げるのが原因で、参考値は低くなりますが、ノイズは相変わらず影響します。「負荷が異なるときの差異は20dB以内」というMicrosoftの基準によると、歪み-69dBというのは、基準の-55dBをかなり下回っています。この実験を通して、コンデンサの種類による差異は見出せませんでした。

 

2. 80KHzにおける周波数応答(Frequency Response 80K

10K Ohm負荷

2

P3-Left1

P3-Right1

32 Ohm負荷

2-2

P4-Left1

P4-Right1

負荷10Kohmのとき測定レンジを80KHzまで上げても、ハイバンド、ローバンド、いずれでも減衰は1dB未満でした。つまり、歪みが引き起こす変化を除くと、今のところオーディオ観賞で耳にすることができる超高音の音源でも、減衰を感じ取れる帯域はほぼない、ということになります。

負荷を32ohmに変えるとローバンドでの減衰が大きくなりますが、20Hzの部分でもMicrosoftの基準を超えておらず、減衰は3dBを超えていません。コンデンサの種類による差異は見出せませんでした。

 

第二回試験の結論

新しい試験の条件が過酷であるにもかかわらず、コンデンサはいずれも、歪み、減衰、雑音の低さを維持しました。帯域を広く設定したため、人の耳が識別できる小さなレンジ内では一定レベルを保つことができ、試験報告の好ましいデータは、測定装置が決して帯域外雑音(Out of band noise)を削っているからではない、ということがわかりました。

すべての音質評価において、試験対象となった二種類のコンデンサ間で顕著な差はありませんでした。アリオンでは、音声信号ユニットを評価し、音質の差を生むキーファクターを見つけ出すため、試験チームがオーディオ装置、音声、信号といった詳細に対する理解を深め、第三回試験を設計し、実施しました。

第一回試験の結果は、コンデンサ 音質評価分析(上)標準試験における差異 参照

第三回試験の結果は、コンデンサ 音質評価分析(下)製品の差異を探求する方法 参照