Wi-Fiエコシステムとは?

個別の利用者が、各メーカーや各種デバイス(スマートフォン、スマートスピーカー、ネットモニターなど)を操作するとき、それぞれ異なる行動と利用パターンが生まれてきます。Wi-Fiエコシステムというのは、簡単に言えば、上記の要素とフィールドという変数が絡み合って生まれてくるものです。

 

Wi-Fiエコシステムは四つの分野(「ハードウェア」, 「サービス」, 「活用」, 「フィールド」)に分類することができます。

 

一つ目の「ハードウェア」とは、スマートフォンやパソコンといったIT製品、冷蔵庫、クーラー、コンセント、ドアベルといったIoT製品、あるいは車載機器といったデバイスなど、形のあるWi-Fi製品全般を指します。

 

二つ目の「サービス」とは、iCloud, Google driveというクラウドストレージから、ビッグデータの統計分析、設備保守の遠隔操作、スマートフォンによるプッシュ通知などを指します。

 

そして三つ目の「活用」は、様々な需要やデバイス、サービスの細分化によってWi-Fiエコシステムに誕生した概念です。Line, WeChat, Skypeといったテレビ通話システム、そしてNetflix, Hulu, IQIYI,  KKBoxといった動画配信サービスやWi-Fi監視カメラ、無線LANにさえ繋がればどこでもできるビデオ会議やGPSなどは、活用分野に属しています。スマートホームエコシステムも活用事例の一つです。水道や電気の消し忘れ、カーテンの閉め忘れなど、無線LANを通してネットに繋がっているデバイスを外出モード(水道・電気・ガスを止める、カーテンを閉める、セキュリティシステムを立ち上げるなど)に切り替えるのはその一例です。これらはすべてWi-Fiエコシステムでよく見られる活用事例です。

 

最後は四つ目の「フィールド」です。これは、個々の状況が異なれば行動も異なることを指します。例えば病院でスマートフォンのアプリを使い、Wi-Fiを通して病院のサーバーにアクセスすれば、予約状況を把握できます。さらにアプリで支払いを済ませられれば、時間をかけて並ぶ必要もなくなります。

 

Wi-Fiエコシステムによく見られる問題

Wi-Fiエコシステムの4つの分野についての紹介は以上です。アリオンはこれまで積み重ねてきた実績から、Wi-Fiエコシステムの中で起こりがちな問題を特定してきました。主に次のような問題です。

 

・無線電波のカバー範囲が狭い問題

1台のAPだけで広い住居やエリアをカバーできると思われがちです。しかし実際には、無線電波のカバー範囲が狭いせいで、Wi-Fiに接続できないトラブルがよく見られます。

図:APがリビングに設置されているが、自分の部屋に戻るとWi-Fiに繋がらなくなる

 

・無線電波の相互干渉

誰もが次のような経験をしたことがあるかもしれません。無線デバイスがWi-Fiに繋がっていて、電波状況が強い表示がされているにもかかわらず、無線通信のスピードがいまいちだと感じる状況です。これはAPが同じチャネルを使用することで起こる同一チャネル混信、あるいは隣接チャネルを使用することで混信妨害が起こっているからかもしれません。

図:同一・隣接混信、あるいは他の電波干渉は、APの通信スピードに影響を与える可能性が高い

 

・遅延問題

ユーザーがネットで動画を見たりオンラインゲームをプレイしたりしているとき、APの通信状況が不安定なため動画・ゲーム表示にラグ(遅延)が生じる場合があります。これはユーザーエクスペリエンスを大きく損ないかねません。無線LANのラグには様々な原因があります。APのパワー不足はその一つです。

図:APのパワー不足でラグが発生

 

 

・法規制に抵触する

新製品のAPが発売される前に認定を受けていなければ、メーカーへの信頼を損なうだけでなく、最悪の場合、巨額の罰金を科されることもあります。たとえば、AP製品は発売地域のDFSチャネル規定をクリアしなければ、販売できません。

図:各地域のDFSチャネル表

 

 

総合的なWi-Fiエコシステムの検証

基本性能と状況という2つの側面から検証を行えば、今回ご紹介した問題の数々を見つけることができるでしょう。状況試験ではフィールドシミュレーション、デバイス活用、耐久試験、干渉といった変数を入れています。例えば飛行機が着陸するとき、100名以上の乗客が同時に空港というフィールドに入ります。この場合、APは大量のデバイスからの一斉接続に耐えつつ、安定した通信状態を維持しなければなりません。しかし個々のユースケースを見てみると、当然のことながら利用状況は異なります。例えば乗客が飛行機を降りると、Instagramをチェックしたり、今日はどこの島に行ってバカンスを楽しむかを投稿したり、飛行機でキャビンアテンダントと一緒に撮った写真をアップしたりするかもしれません。

基本性能と場面テストに関して、アリオンは考えうる個々の利用シーンに合わせて、Wi-Fiエコシステムの中でエンドユーザーによる実際の利用状況を作り上げ、Wi-Fi Sniffer、スループット測定器、ヒートマップ測定ツール、信号発生器、レーダーシミュレーター及びチェンバーといった設備で、数値を測定することができます。

 

現代ではWi-Fi製品は既にスタンドアローンで可動するものではなく、エコシステムと統合して可動するものになっています。今までの検証方法だけでは、製品の問題点を見つけることも、エンドユーザーからのクレームを減らすことも、競争力を強化することもできなくなってきています。検証にエコシステムの概念を取り入れることによって、製品に潜む問題点を見つけ、クレームが生じる可能性を断つことができるはずです。ここで初めて、メーカーに対する信頼性と製品の市場における競争力を高めることができることでしょう。

 

アリオンは様々な状況に対応したカスタマイズWi-Fiエコシステムのテストサービスを提供しています。次の5つの項目は、無線製品とユーザーエクスペリエンスへ与える影響が強い項目です。

 

  • RF性能
  • 距離・カバー範囲・スループットとの関係
  • シームレスローミング機能と実際の利用状況
  • フィールド干渉が製品に与える影響
  • 実際のフィールドにおける測定と比較

 

Wi-Fiエコシステムの検証についてご相談次項がございましたら、お気軽にお問い合わせください。アリオンのエキスパートがお客様の課題を解決に導くお手伝いをいたします。