多岐の分野に渡るIoT(Internet of Things:モノのインターネット、以下IoT)の中でも、最も注目を集めているのが『スマートホーム』です。近年、GoogleやApple、Amazonなどの大手企業が対応デバイスを新たに開発しており、IoTスマートホーム分野のトップを目指して鎬を削っています。スマートホームという概念が登場してから、メーカー各社は製品を「スマート化」させるだけでなく、市場では製品同士の互換性を求められており、各社にとって改善のポイントとなっています。

 

スマートデバイスブームが巻き起こるも…互換性に不安あり

「スマートホーム」では、様々な通信方式や直感的な操作を実現するために、より「スマート」であることに加え利便性が追求されています。AI(人工知能)に関する技術の進歩に伴い、特に音声認識システムが普及したことを受け、スマートホーム製品の利用率が右肩上がりに伸びてきています。AIを利用したAlexa搭載のスマートスピーカー「Amazon Echo」シリーズが発売されてから、北米市場では約1000万台が販売されました。Googleを始めとした他の企業も追随しており、スマートホームの消費市場は加熱の一途を辿っています。

EE Times Taiwanのレポートによると、全世界のスマートホーム関連製品の総数は、2013年の3000万個から2018年には約10億個まで増加すると予測されており、2017年から2018年までの一年間で4億個増加すると予想しています。しかし、一般的な実用に耐え得るスマートデバイスを選択するのは、決して容易ではありません。このため、Amazonでは製品の互換性に関するコンサルティングサービスを自社で提供しています。

スマートホーム業界は急速な発展を遂げていますが、実用面では製品のパフォーマンスが発揮できないといった問題に直面することが多々あることでしょう。アリオンはグローバル市場の一番人気を誇るスマートデバイスを収集しています。また、ベッドルームやリビング、風呂などがある一般的な家庭を舞台にした、スマートホームのコンセプトラボを構築しています。この環境では、様々な製品でインストールから実用に至る使用状況を検証できます。

 

設定段階から問題発生!

アリオンの検証チームがスマートホームラボを構築する際、最初の設定段階から問題が発生しました。コントロールハブ(Control Hub)をテレビに接続したとき、製品間の規格が適合していても一部のテレビを操作できないことがありました。

スマートコンセントを繋げたくても、スマートコンセントとワイヤレスAPの接続性問題があるためインストールできなかったり、スマートデバイスのUI(ユーザーインターフェース)をスマートフォンのアプリ上から設定しても、スマートデバイスとスマートフォンの不具合が出てきたり、更に、リセットしても状況が変わらず使えない……。実際に利用していくと、このようなシーンによく出会うかもしれません。

 

快適なはずが予想外の結果に

実際の生活環境では、コントロールできないことや動作遅延、製品の互換性などといった問題があります。アリオンは実際に遭遇したいくつかの事例をピックアップしました。

 

1. コントロールできない

市場に販売されているA社のスマートカメラを動作検知器として利用し、照明のON/OFFの設定を自動で行いましたが、誰もいないにもかかわらず「人が通っている」と検知され、照明がOFFからONになるといった誤作動がありました。

 

2.クラウド上で装置がタイムリーに反応できず

赤外線センサー(Passive Infrared sensor)で同様の試験を行ったところ、感知誤作動の問題は発生しませんでしたが、クラウドによって遠隔コントロールするため、人が通ってから何秒後かに照明が点灯するといった反応時間の遅延がみられました。

 

3.同じ規格でも互換性を確認できず

感知の問題だけでなく、製品間の接続性に関する課題もあります。クロスプラットフォーム対応を謳う制御システムに接続した際、一部のアプリケーションはスムーズに動作しましたが、中には動作しないアプリケーションもありました。

 

図1:同じ技術が使われた製品間でスムーズに動作せず

 

4.複数コマンドに対する優先順位の判断

スマートデバイスが複数のコマンドを受けたとき、優先順位に応じて処理していることを確認しました。ロボット掃除機の場合だと、作業中に電力不足となった際には自動的に充電ドックに戻り充電します。この場合期待される動作としては、掃除機の充電が終わったあと、命令された仕事を継続することですが、実際には多くの場合、命令された仕事が終わらぬまま、充電コマンドのみを完了させた状態で停止します。

 

5.コンセントの再設定後に認識が失敗

家具の配置換えによるコンセント位置の変更は、一般家庭ではごく当たり前に行われることです。スマートデバイスの場合、コンセントの位置情報を設定する必要があります。しかし、コンセント位置を移動した後の再設定を行った際に、制御システムが相互接続情報を同期できない問題が発生することがありました。これによって、デバイスの位置を特定できず制御不能状態に陥ってしまうことがあります。

 

図2:コンセント位置を移動後に再設定しても、デバイスが制御不能状態に

 

コントロールハブは、デバイスとプラットフォームアプリを同期できず、登録名の変更の際にはデバイス側でもエラーが起こりました。スマート照明アプリから、C電球からD電球へとデバイス名を変更した場合、コントロールプラットフォームアプリは問題なくプログラムを更新できましたが、コントロールハブ側では登録名が自動更新されないため、初期の設定を削除し再インストールを行う必要がありました。

 

図3:コントロールハブはデバイスの登録名を自動的に更新せず

 

6.音声認識技術の向上

現在の音声認識技術はまだ発展の余地があり、AIアシスタントのレベルには差があります。この技術は、音声を識別した上で反応するものですが、技術的には容易なものではありません。音声認識技術で重要なポイントは、遠距離からの音声認識能力です。これはマイクの数や性能、設計などといった要因と大きく関係しており、外部環境から大きな影響を受けます。家庭内だと、テレビの音や生活音などの様々なノイズが音声認識に影響を与えるため、機能の確保は製品開発に欠かせないポイントです。

 

ビジネスチャンスを掴むために IoTの観点からデバイス検証がポイント

IoT市場でのビジネスチャンスは増加傾向にありますが、ユーザーの観点から見ると、スマートデバイスの利便性や接続デバイスの互換性、さらに情報セキュリティの安全性などは製品選択におけるキーポイントだと考えられます。 アリオンは世界最大級のIOPラボを有しており、IoT製品分野の「機能」と「互換性」をワンストップで提供することができます。

機能検証では、主に無線性能やセンサー機能といった、製品の機能そのものを検証します。アプリケーションのソフトウェア品質とユーザーインターフェイス(UI)試験もこの中に含まれます。スマートホームの利用シーンでは、他デバイスと接続して機能できるかどうかだけでなく、コントロールセンター、アプリケーション、クラウドサービスプラットフォームなどの運用も含まれるため、機能検証の際にはクロスファンクションテストも検討する必要があります。

現在、スマートホーム関連のほとんどの製品でワイヤレス技術が使われています。それぞれの技術に応じた認証試験がありますが、同じ規格を使用した製品間であっても互換性の問題が生じており、ときには接続できない状況が見受けられました。また、ソフトウェアについても様々な開発ベンダーが存在しているため、ソフトウェア間の互換性が問題となります。アリオンが検証したところ、各製品への対応をうたったアプリでも、実際には使用できないことがありました。

IoTの発展によって、将来的には家庭内の生活環境のみならず、交通機関や医療機関、都市設計などを包括したアプリケーションが登場することが予想されます。IoT時代の開発課題は、実際の生活ニーズに応じた設計が可能かどうかという点にあります。標準的な製品動作に加え、ハードウェアやソフトウェア、UI設計など、多岐に及ぶ設計課題が併存している状況です。

IoT技術の発達によって、これまでIT製品の開発経験が薄い業界・業種の企業が対応を迫られています。アリオンは認証や検証といった観点から、新たな製品分野への取り組みを始めるお客様の開発体制をサポートしています。スマートホームのコンセプトラボを構築することで、これからさらなる発展を遂げるスマートホーム関連製品に対する、充実した試験環境を整えております。長年に渡るIT業界長年の業界経験を基に、市場の競争力を向上すると共に、お客様と新製品の開発を支えてまいります。

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