スマートフォンには多彩な機能が搭載されています。アリオンでは以前実施した試験内容 (ディスプレイ、カメラ、オーディオ、タッチパネル)に加えて、スマートフォンのWi-Fi性能評価を提供しています。Wi-Fi性能評価では、ラボ内にある電波暗室で試験を実施するほか、オフィスや家庭環境といった、普段わたしたちが実際に暮らす空間をシミュレートした環境下を構築し、その環境を通してユーザーが利用する際の行動により適した試験を実施しています。

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実際の生活の中で、製品とルーターの間にある距離間や、製品が利用される状況は様々です。無線ルーターとの距離間は、Wi-Fi信号伝送に影響を及ぼし、また信号強度も伝送性能に影響を及ぼします。

距離による影響を確認するほか、様々な無線チャネルと無線モード(802.11)を組み合わせた確認も必要があります。試験結果のご提出により、お客様はアンテナ設計やファームウェア調整のための参考とする根拠となります。今回は、アリオンのWi-Fi伝送性能評価の一部をご紹介いたします。

1. レート v sレンジ

減衰器を使用してアクセスポイントの信号強度を減衰させたり、被試験デバイスとテスト機器の距離を変更したりすることで、距離による様々なWi-Fi伝送性能をシミュレーション測定します。

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チャネルスイープ

無線モードを固定した条件の下、様々な無線チャネルを使用して伝送試験を行います。アリオンでは高、中、低の3つのチャネルで測定しています。例えば、2.4Gにはチャネル 1、6、11と5Gには64、149、161を採用しています。この項目を実施することでチャネル毎の伝達性能のパフォーマンスと、その違いを理解することができます。

下の図は802.11nモードを使用した際の、異なるチャネルでの差異を示しています。X軸は減衰値、Y軸は伝達性能を表しています。

チャネル1では、緑色のラインのスマートフォン(Phone1)が50dBのときに、シグナルが消失しています。ほかの2台のスマートフォンは‐60dBで伝送率がなくなっているため、緑色のラインのスマートフォンは比較的伝送距離が短いことがわかります。

青色のラインのスマートフォン(Phone2)は、チャネル1とチャネル6のパフォーマンスがどちらも紫色のスマートフォン(Phone3)に近く、チャネル11のパフォーマンスのみが比較的悪いことを表しています。

この項目を実行することで、チャネル毎でのスマートフォンの伝送速度と全体のパフォーマンスを観察することができました。

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-802.11 モード スイープ

チャネルを固定した条件の下で、様々な通信プロトコルを使用した伝送試験を行います。例えば、2.4Gでは11b/g、mixed Mode、11b/g/n + 20MHz (Bandwidth)、11b/g/n + 40MHz (Bandwidth)を使用し、5Gでは11a/n + 20MHz (Bandwidth)、11a/n + 40MHz (Bandwidth)、11ac + 80MHz (Bandwidth)を採用しています。この試験により、無線モードの違いによる通信プロトコル性能の差異を理解することができます。

以下の図では、802.11のチャネル11を例としています。X軸は減衰値を表し、Y軸は伝送性能を表しています。同じチャネル条件の下で、Phone3は全体的なパフォーマンスがほかの2台のスマートフォンよりも優れていることが見て取れます。

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2. スループット vs アングル

ルーターと製品の距離による影響のほか、製品のアンテナ設計とルーターを設置する位置も、伝送結果に直接影響を及ぼします。アリオンでは45度毎に区分し、無線ルーターの位置を固定することで、様々な角度での伝送試験を行っています。この試験結果から、製品にとって伝送上弱いアンテナの角度を理解することができます。

この試験結果を解析すると、様々な角度での伝送結果を各デバイスで確認することができます。各角度でのカバー面が大きいほど、被試験デバイスのWi-Fi通信性能は配置位置による影響を受け難いと言えます。以下の図では、802.11n 5Gによる各チャンネル、各角度でのWi-Fi伝送性能を見ることができます。

一番右にあるチャネル161を例に取ると、Phone2がカバーするWi-Fi伝送性能の角度が、他の2台よりも優れていることが分かることから、最も優れていると言えます。また、Phone3は全体性能が最も劣ることが分かります。

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アリオンのWi-Fi伝送性能評価を通して、角度、距離、チャンネルやWi-Fiモードによるパフォーマンスを理解することで、製品性能の改善につなげることができます。また、経験豊富な専門の担当者によるデバッグサポートも提供しています。リファレンス機器をご提供頂くことで、比較試験も同時に実施することが可能です。

今回ご紹介したWi-Fi伝送性能評価について、気になる点などがございましたら、下記のお問い合わせ先までお気軽にご連絡ください。

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スマートフォンのユーザー・エクスペリエンス最適化検証―ディスプレイ編

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