Allion Labs / Ryan Huang

今回は、6.4.1 Multiple STAのパフォーマンステストについて説明します。TR-398 issue 2 Corrigendum 1 Test Planの中で、多くのメーカーにとって難しい項目です。

6.4.1 Multiple STAs Performance Test の概要

6.4.1 Multiple STAs Performance Testのテストコンセプトは、9台のデバイスを近距離 (強信号)、中距離 (中信号)、長距離 (弱信号)の3つのグループに均等に分け、且つ接続されたこれら9つのデバイスが同時に送信できるようにした上で、全体の合計伝送パフォーマンスに大きな影響がないかを確認することです。テストの際、APとすべての接続デバイス間の距離を2メートルとし、減衰器を介して低、中、高の減衰を実行し3つの異なる距離をシミュレーションします。

その後、近距離用に3台、近 + 中距離用に6台、近 + 中 + 長距離用に9台のデバイスを使用して、それぞれの場合のアップリンクおよびダウンリンクの合計伝送スループットを測定します。このテストは、APが異なる信号強度で接続されたデバイスと同時に伝送する場合、接続されたデバイスが遠く離れていても、全体の合計伝送スループットが低下しないことを確認するためのもので、非常に厳しいテスト条件です。

 テスト基準 

さまざまな無線モードと伝送方向の設定について、各テスト設定の全体的な合計伝送スループットが、協会の設定する基準を満たす必要があります。詳細は、次の表をご参照ください。

図1:6.4.1 Multiple STA パフォーマンステストの伝送スループット基準。ここでは、Sは短距離、Mは中距離、Lは長距離をそれぞれ表しています。

よくある質問

このテストでは、ほとんどのAPが低減衰と強信号 (近距離) で、基準を簡単にクリアしています (追加の減衰値が10dB)。通常APは信号が弱い接続デバイスに対しより多くの時間を費やす必要があり、これが伝送速度に影響を与えるため、信号が弱い他の接続デバイスを追加すると、合計伝送スループットが影響を受けやすくなると考えられます。以下の結果から、近距離 + 中距離からのアップリンク伝送を使用すると、長距離で接続された3台のデバイスの伝送スループットが影響を受けていることがわかります。長距離接続デバイスを3台追加するとその影響はさらに大きくなり、伝送スループットは 1Mbpsを下回り、全体の伝送スループットが低下する状況を招いています。

図2:6.4.1 Multiple STAs Performance Testのテスト結果

過去に行ったテストの経験から、このテスト項目は APのAirtimes Fairness (*註)機能に関連していることがわかりました。無線デバイスがAPに接続している場合、接続品質が良いほど、MCS(Modulation and Coding Scheme、以下MCS)が高くなり、伝送速度も速くます。逆に、接続品質が悪いほど、MCSが低くなり、伝送速度も遅くなります。Airtime Fairnessは、低いMCSを犠牲にして、接続されたデバイスの伝送時間を調整する機能で、接続品質が良く、伝送速度が速く、MCSが高い接続デバイスに優先して無線リソースを共有し、MCSの低いデバイスが常にワイヤレスリソースを占有しないようにします。MCSが高いデバイスと低いデバイスの両方に同時に対応する接続デバイスがあれば、不公平な割り当てが発生することがよくあります。

*註:Airtimes Fairnessというのは電波の使用時間が公平になっていることです。TR-398テスト項目6.2.3で測定することが可能です。

6.4.1のテストにおける中距離グループと長距離グループの接続デバイスは、距離が長くなり信号が減衰するにつれて、MCSも減少します。APはこれらMCSの低い接続デバイスのデータ伝送に常に時間を費やす必要があります。これによりMCSの高いデバイスの伝送速度が遅くなり、AP全体的な伝送パフォーマンスに影響を与えてしまいます。したがって、このテスト項目の実行で問題に遭遇した場合は、Airtime Fairnessを確認するのは一つの手と考えられます。

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