Allion Labs / Allen Liao

近年、一部のスマートフォンから3.5 mmイヤホンジャックが廃止され、Bluetoothイヤホンが広く使われるようになってきています。ケーブル接続が不要で、体積が小さく携帯しやすいBluetoothイヤホンは、通勤、通学、運動中など、様々なシーンで使用されているのを目にするようになってきています。近年は、Bluetooth伝送技術の発展しにより、音質や消費電力も改善され、、完全ワイヤレス(TWS)イヤホンも普及し始めました。

 

TWSイヤホンとは

完全ワイヤレス(TWS)イヤホンは、従来のワイヤレスBluetoothイヤホンで左右のユニット間を接続しているケーブルをワイヤレス伝送に置き変えたものです。これにより、使用上の利便性が向上され、またケーブル接続が一切なくなったことで、タッチノイズが出現しません。これら2種類のBluetoothイヤホンは高解像度または低遅延のCodecのサポート有無を除けば、その使用規格は基本的に同じです。唯一、完全ワイヤレスBluetoothイヤホンは多くがBluetooth 5.0規格をサポートしています。

BluetoothとWi-Fi技術はいずれも2.4GHzの無線電波帯域を使用しているため、往々にして接続周波数帯域上で共存(Coexistence)の技術的問題があり、さらに完全ワイヤレスイヤホンは通常小さいため、アンテナ設計に制限があり、イヤホンの共存問題がより重大になります。

一般的に完全ワイヤレスイヤホンが2.4GHz帯域で共存が引き起こす可能性のある問題は、次のようにまとめることができます。

  • 無線信号の干渉がBluetoothのボタン機能(再生、一時停止、次のトラック)の反応遅延、さらには失敗を引き起こす
  • 無線信号の干渉が再生中の音楽の音の途切れ、さらには無音を引き起こす

 

2.4GHz共存問題をどのように測定するか

アリオンは、完全ワイヤレスイヤホンの2.4GHz帯域における共存問題について、市場で人気がある3種類の完全ワイヤレスイヤホン(Oブランド、Sブランド、ATブランド)を「環境構築」、「パフォーマンス判断基準」、「実測結果」の観点からワイヤレス信号の干渉下における問題すなわち伝送品質劣化を検証しました。メーカーは実測結果を設計にフィードバックすることで、ユーザー体験およびブランドイメージの低下を低減することができます。

今回DUTとした3種類の市販の完全ワイヤレスイヤホン

図1:今回DUTとした3種類の市販の完全ワイヤレスイヤホン

 

環境構築

完全ワイヤレスイヤホンテスト全項目は電波暗室で行われるため、外部からの電磁波の影響を受けず、安定したテスト結果を得ることができます。このほか、テストでは干渉下におけるオーディオ信号のパフォーマンスを分析するためにオーディオアナライザ(Audio Precision)で、高度なオーディオ信号測定を実施しています。

完全ワイヤレスイヤホンのワイヤレス共存テスト構成図

図2:完全ワイヤレスイヤホンのワイヤレス共存テスト構成図

 

機器メーカーの異なるテスト要求に対し、当社は図2と異なるワイヤレス通信技術(Wi-Fi、Bluetooth、LTE)、通信装置の数量、信号密集度(高速または低速技術)など、顧客のニーズに基づいてさまざまな環境における干渉テストを模擬することができます。

図2と異なる干渉のシミュレーションの例として、以下のさまざまな方法で干渉信号を作り出すことができます。

  • 一般的な環境でよく見受けられるワイヤレス製品を実際に干渉源としてセットアップする。例:Bluetoothスピーカー、Wi-Fiワイヤレスルーター、スマートフォン、スマート家電等の製品
  • 信号発生装置(SG)を使用して制御可能な干渉信号を送信する(変調タイプ、周波数、送信出力など)

 

Bluetoothイヤホンのパフォーマンス判断基準

アリオンが提供するワイヤレス共存テストの判断基準は、一般的なユーザーがよく遭遇する望ましくないユーザーエクスペリエンス、すなわち、イヤホンボタンコントロールの応答遅延、イヤホン再生音の歪みに基づいています。

上述の問題に対し、当社が提案する試験項目は次のとおりです。

 

 ボタン機能の応答遅延テスト 

コンピューターのBluetoothとのペアリング成功後、Bluetoothイヤホンのボタンを通じてコンピューターの再生または一時停止機能を操作したときの制御応答に要する時間。

 

 オーディオエラーレートテスト 

Bluetoothイヤホンで単一の周波数5KHzのオーディオ信号を継続的に再生し、プロセス中に干渉を追加してオーディオアナライザーで完全ワイヤレスBluetoothイヤホンが出力するオーディオ周波数の状況を観察します。

 

実際のテスト結果

以下のテスト結果によると、Oブランドは無干渉のテスト環境中で延遲時間が約1秒余であり(図3-1)、干渉を加えたテスト環境では(図3-2)遅延状況が数減衰値早くから悪化を開始しています(悪化現象が数減衰値早まることは干渉状況下で正常に操作できる距離が短くなることを表します)。しかしながら、Oブランドはその他2種類のBluetoothイヤホンと比較して、比較的良好な応答時間であることが分かります。

ボタン応答時間の実測(干渉なし)

図3-1:ボタン応答時間の実測(干渉なし)

ボタン応答時間の実測(干渉あり)

図3-2:ボタン応答時間の実測(干渉あり)

 

リスニング中に発生する可能性がある音切れ、信号切断現象について、まず判断の手法とテスト機制について簡単に説明します。

図4、図5はオーディオアナライザでオーディオ信号の出力を解析したオーディオ周波数の結果です。Bluetooth接続の品質が正常な状況の場合、オーディオアナライザ上には5KHzのみで数値があり、このためアナライザ上で観察されたオーディオ周波数曲線を再生時間に対応させると1本の直線になることが分かります(図4)。Bluetooth接続が干渉を受けてパケットロスを発生する状況時、オーディオにジッターが発生します(図5参照)。ジッターが一定範囲を超過すると、人の耳でもオーディオ信号に問題があると識別します。

Bluetooth接続の品質が正常な状況の場合

図4:Bluetooth接続の品質が正常な状況の場合

Bluetooth接続が干渉を受けてパケットロスを発生する状況時

図5:Bluetooth接続が干渉を受けてパケットロスを発生する状況時

 

上述のテスト結果に基づき、すべての固定サンプリング長のうち、人間に耳障りと聞こえるデータの数をカウントし、問題があるサンプリングデータがすべてのサンプリングデータに占める割合(Sound Error Rate)を分析しました。

一般人の許容できる範囲のオーディオエラーレート境界値を客観的に判断するため、多くの人のリスニング体験を収集した後、オーディオエラーレート比較表に集計しました。ユーザーのオーディオエラーレートに対する許容範囲は約5%以内であり、この範囲を超えると、ほとんどのユーザーが製品に対する印象が悪くなることが分かりました。したがって5%のオーディオエラーレートは、イヤホンの耐干渉性を検証する際の基準値として用いることができ、メーカーは今後Bluetoothイヤホンを設計する際にこれを考慮に入れることで、製品の品質を向上させることができます。

オーディオエラーレートに対するユーザーの実際の印象

表1:オーディオエラーレートに対するユーザーの実際の印象

 

続いて、今回選んだ3種類のBluetoothイヤホンにオーディオエラーレートテストを実施しました。結果を見ると、Oブランドは無干渉のテスト環境中でパフォーマンスが最も優れており、ATブランドがこれに続いています。干渉を追加したテスト環境中(低干渉の家庭使用環境を模擬)では、3つのブランドすべてのテスト結果に明らかな低下がありますが、やはりOブランドの耐ノイズ性能が比較的優れており、Sブランドが第2位となりました。

 

前述のボタン制御応答とこのオーディオエラーレートの2つのテスト結果をまとめると、Oブランドの完全ワイヤレスイヤホンが低レベルの電波干渉下で比較的良好なパフォーマンスを維持できることが分かりました。

 

完全ワイヤレスBluetoothイヤホンのベストテストパートナー

市場に新しい完全ワイヤレスイヤホン製品が続々と登場している中、ばらつきのある品質とワイヤレス共存の問題がますます顕著になっています。アリオンは豊富なワイヤレス製品のテスト経験を擁し、ユーザーエクスペリエンス評価から多様な干渉環境設計まで、カスタマイズしたテストサービスを提供することにより、お客様の製品品質の確立と、市場競争力を向上させる支援を提供します。

ご紹介したテストサービスについての詳細情報は、アリオンにお問い合わせください。