Allion Labs / Tina Yu

8Kにまつわる新たなトピックは、日本で行われる2020東京オリンピックパラリンピックが8Kで放送されると発表された頃まで遡り、これにより8Kテレビに関する議論が深まっています。今年のCESでは、SONY、Sharp、LG、Samsung、TCL等の有名テレビメーカーがこぞって8Kテレビを発表しました。8Kテレビの出荷量は2018年には2万台に満たなかったにもかかわらず、2019年は「飛躍的に成長」して43万台に達し、情報調査機構IHS Markitの予測によると、今年2020年には一気に200万台に達すると見込まれており、8Kテレビのビジネスチャンスが予見できます。

       図1:テレビ市場の予測(引用:IHS Markit)

現在のテレビ市場では4K規格が主流となっており、5万円以下の価格でも入手可能で、当然HDMIはどのテレビにも標準搭載されているインターフェースの一つです。2017年末HDMI協会は最新規格となるVersion 2.1を発表し、中でも最も注目されたのは、帯域幅が48Gbpsにまで上げられたことで、8K規格が基本配備となり、10Kの解像度にさえ到達できるということでした。このことから8K時代はすでに始まっていると言うべきで、4Kの淘汰に拍車がかかり、将来8Kが家の中にある基本的な家電になると言っても過言ではありません。

図2:8Kは豊かな色彩表現が実現可能

 

8Kテレビの全面的な成功には、技術面で克服すべきことがまだある

疑う余地もなく、8Kテレビは将来ますます普及していくでしょう!しかし実現すべき8Kの理想と現実との間には、まだまだ大きな隔たりがあります。2019年は8K元年であり、各テレビメーカーは積極的に自社の8Kテレビの開発に力を入れました。HDMI 2.1インターフェースやピンの位置は従来のバージョンから変更されていませんが、HDMI 2.1の新しい8K規格は従来のHDMI 2.0の4K規格とは違う技術であり、従来のHDMIバージョンより更に厳格で複雑なものになりました。

以下の図はHDMI規格を比較した表です:

表1:HDMI規格の比較

信号規格 HDMI 2.0 HDMI 2.1
最大伝送帯域幅 18Gbps 48Gbps
伝送技術 TMDS FRL
AV伝送チャンネル D0, D1, D2 L0, L1, L2, L3
エンコード方式 8b/10b 16b/18b
圧縮技術 DSC 1.2
従来バージョンとの互換性 Yes

(HDMI 1.4b)

Yes

(HDMI 1.4b, HDMI 2.0)

この表1から見て分かる通り、HDMI 2.1の最大伝送帯域幅はHDMI 2.0の2.6倍にまで増加しているため、現有の構造上、従来のTMDSの伝送技術や8b/10bのエンコード方式の利用が難しくなってしまいます。その理由を、いわゆるTMDS技術から見ていきましょう。

  1. 遷移数最少差動信号伝送方式(Transition Minimized Differential Signaling,略称TMDS)は、アメリカのシリコンイメージ社が開発した、高速データ伝送技術である。
  2. この技術は遅くともDVIインターフェースで使われ、その後HDMIインターフェースで使われるようになり脚光を浴びた。
  3. その特徴は2つのピンを差動信号として伝送する技術である。
  4. 映像伝送の方式は、4本のTMDSチャンネル(Clock, Data0, Data1, Data2)を通じて伝送する。
  5. TMDS Clockは受信側が基準周波数を参考にしてdata recoverに使用するだけであり、実際のAV信号は3本のTMDSデータチャンネルで送信される。

6. 8b/10bを採用し、また8 bitの伝送信号が10 bitにエンコードされる方式で、メインの目的は差動信号を通じてEMIの低下や正確な信号伝送の速度を向上させる。

図3:TMDSモードの信号構造

この特徴を活かして現有の構造で帯域幅を上げる必要があり、新しいDataのチャンネルを増やすのではなく、現有の3本のTMDSデータチャンネルにおいてより多いデータ量等を伝送する方式が必要であることが分かりますが、いずれも最善の解決方法ではありません。よって新しいFRL(Fixed Rate Link)伝送技術及び16b/18bのエンコード方式が生まれました。その特徴は以下の通りです。

  1. FRLはFixed Rate Linkの略称で、その名の通り固定比率帯域幅のことである。
  2. 従来のTMDS Clock、Data 0、Data 1、Data 2がそれぞれFRL Lane 0、Lane 1、Lane 2、Lane 3に対応している。
  3. DPのEmbedded CKモードの様に、専用のClockチャンネルを必要としないため、AV信号がLane 3だけでなくLane 4でも伝送可能である。
  4. エンコード方式が8b/10bを16b/18bへと変わり、エンコード効率が9%改善されている。
  5. VESAのDSC圧縮技術を採用し、解像度は10K@120に達する。
  6. DC-coupled TMDSの伝送方式と違い、AC-coupled FRLの伝送方式へと変更されている。
  7. FRL Link Trainingの通信により、TMDSモードと後方互換性がある。

図4:FRLモードの信号構造

したがって、HDMI2.1 製品を開発するメーカーにとって、新しく増えるFRLモードにいかに適合させ、現有のTMDSモードと互換性を持たせるかが大きな課題となっています。

アリオンの8Kテスト案

図5:アリオン自社開発したAJSC-1 SCDC/EDIDコントローラは、HDMIのEDID・SCDCをコントロール・エミュレートできるツールです。

 

8Kテレビを開発するメーカーがHDMI 2.1認証をすぐに取得できるように、アリオンは関連する機器メーカーと協力し、アリオンのSCDCコントローラ(AJSC-1)を開発し、8K関連の電気テストの中に統合しました。以下はそのテスト案です:

  • 8K実力検証テスト
    • FRL 電気特性テスト
    • FRL Protocolテスト
    • 8K Videoテスト
  • HDMI 2.0 認証テスト
    • TMDS 電気特性テスト
    • TMDS Protocolテスト
    • TMDS Decodingテスト
    • TMDS Video Timing テスト
    • EDID関連テスト
  • HDMI 1.4 認証テスト
    • EDID/E-DDC Test
    • Electrical Test
    • Protocol Test
    • Video Test
    • Audio Test
    • Interoperability with DVI Test
    • Advanced Features

アリオンの検証事例

HDMI 2.1対応 の8Kテレビが当初直面した課題の一つに、Jitterを含む信号を受信する時に異常なエラーが生成されたことが挙げられます。Allion AJSC-1のDebug GUIでは、すぐにエラー生成の出所を見つけることができます。

図6:エラー時の画面

また、Link Trainingの通信が正確であるかどうかも、もう一つの課題です。別のDDC MonitorのGUIで、関連するRegisterがHDMI 2.1規格に適合しているかをすぐに見つけることができます。

図7:関連するRegisterがHDMI 2.1規格に適合しているかどうかを確認可能

8Kの技術にまだ多くの未知で潜在的なリスクがあると考え、アリオンは業界を牽引するパイオニアとして、率先して機器テスト設備の協力や専門的なテスト技術を投入してきました。8Kテレビについて詳細をお知りになりたい方は、お気軽に弊社までご連絡ください。