新製品を市場でヒットさせるためには、消費者の製品に対する期待値を開発段階から高めていくことが鍵となります。新製品を販売するまでには、設計からプロトタイプの製作、量産に至るまで数多くの段階を要すため、膨大な労働時間を投入する必要があります。企画から製品販売まで一貫した設計のコンセプトをどうやって維持するのか。期待していた通りの機能と性能はどうやって確保するのか。どのように製品の品質を保障するのか。こうした観点での検証は、新製品の開発プロセスにおいて欠かせないものとなっています。

 

新製品の検証

開発の最終段階で製品検証を行うと、ソフトウェア/ハードウェア設計が原因で問題が複雑化し、解決が困難になる恐れがあります。さらに、開発初期の段階で発見されなかった問題点が見つかると、それに伴う設計変更が必要となり、開発スケジュールの長期化とコスト増加という新たな問題が引き起こされることもあります。新製品の検証は開発のプロセスによって異なる目的があります。

製品の検証プロセスは一般的に技術検証試験(Engineering Validation Test: EVT)、設計検証試験(Design Validation Test: DVT)、生産検証試験(Product Validation Test: PVT)の三つの段階に分かれています。

 

 技術検証試験(EVT)

機械部品の配置が原因で相互干渉が起きる、信号の整合性が逸脱するなど、重大な設計問題を確認・解決します。例えば、RF信号干渉問題、RFノイズ耐性度などがこれに当たります。

 

 設計検証試験(DVT)

EVTの段階で設計上の問題が見られない場合、規格検証や標準インターフェース規格、OEMベンダーの選定などの仕様に従い、製品の機能と性能を確認します。HDMI®あるいはWi-Fi®を始めとした標準インターフェースの規格標準化団体は、メーカーが期待する通りの製品動作を実現するために、技術規格を策定して製品設計をバックアップしています。

 

 生産検証試験(PVT)

製品が大量生産に適した設計になっているかを確認します。製品の機能検証に加え、EVTやDVTの段階で修正した問題点を再確認します。ユーザーエクスペリエンスの最適化と顧客満足度への影響を考慮し、例えば、製品耐用寿命テスト、全体性能テスト、実際の操作環境を想定することなどを検証します。

 

図1:EVT/DVT/PVTと検証の流れ


新製品の開発は一般的に、設計から生産という流れを経ますが、新製品の検証ではこれとは逆のプロセスを辿ります。これは、どの開発工程においても常に設計理念を掲げ、消費者のニーズに応じるという目線を保つためです。複数の段階における検証で、設計と実際の製品とのギャップを訂正・減少でき、開発工程から市場出荷段階に至る日数を短縮することで、時間とコストの削減が可能です。

 

新製品の検証方法

一般的に、製品の検証はハードウェアとソフトウェアの二種類に分類することができます。ハードウェア品質検証では、主として期待される動作と規格を検証します。信号の整合性、RF信号、電源管理などが主な検証項目です。

過酷環境試験、加速寿命試験、振動・衝撃試験といった信頼性試験では、様々な環境での使用状況を確認します。ハードウェア品質検証で発見可能な問題点は数多く、また早期解決が望ましいため、通常は開発初段階に基本設計上の問題を解決していきます。

ロゴ認証試験は、規格標準化団体よって各メーカーが開発した製品が規格に適合しているかどうかを客観的に確認するものです。例えば、USB-IFがUSB Type-C™を定めるなど、メーカー側にしてみればこれらの規格基準があることで、開発工程における製品の品質基準の参考とすることができます。こうしたロゴ認証試験は、協会から認定された第三者試験機関で行われます。第三者試験機関は認証試験の実施と合わせて、技術専門知識に基づくコンサルティングサービスを提供しており、迅速な認証取得が可能です。ロゴ認証の取得は、製品の品質レベルを確認するほか、ロゴを表示することによりユーザーの信頼にも繋がります。しかしながら、協会によって策定された認証試験はあくまで基本事項に過ぎないことから、製品の市場競争力を高めるために互換性検証の実施を推奨しています。

十分な互換性検証を行うことで、製品は市場において競合他社との差別化を図ることができるようになり、また、製品の持つ競争力も強化できると考えられます。エンドユーザーの満足度を向上させることで、返品コストも削減も期待できます。例えばワイヤレス充電器の場合、公共エリアに備え付けられた充電用の電子パッドを使って一般ユーザーがモバイル機器を充電しようとするとき、製品内部の充電部品の検証を発売時点で十分に行っていれば、ユーザー満足度に寄与することができることでしょう。

ハードウェア機能試験に加え、ソフトウェアの性能試験と相互接続性試験も重要です。メモリの相性、動画の再生速度、色彩といった性能試験は製品開発初期段階の検証項目となります。そして、ソフトウェアの互換性検証はハードウェアに基づいて動作させるため、開発工程後期の要点となります。ソフトウェア検証は、ユーザーエクスペリエンスの顧客満足度の向上に貢献することでしょう。

図2:アリオンの評価概要


顧客満足度を向上させるためには、製品品質の向上が不可欠です。同じ製品でも、ユーザー側の多様な用途や目的、使い方などによって、様々な体験と感想に繋がり、製品の評価に影響することが考えられます。アリオンではエンドユーザーの行動をシミュレーションすることで様々なフィードバックを獲得し、それに基づいた対策ならびに潜在リスクをお客様のニーズに応じて提案しています。

 

誰に新製品の検証を依頼すべきか

新たに設計・開発した製品の検証を、自社内部にある品質保証部門に依頼するか、アリオンのような第三者試験機関に依頼するか、どちらも一長一短があります。

検証を行う際、自社部門の方が開発理念と設計について深く理解しているため、優先的な選択肢となります。しかし開発と管理の面を考慮した場合、多くの場合は開発部門が検証責任を担っているため、既存の考え方に囚われた狭い視野となってしまいがちです。新製品の開発と検証とではロジックが異なるため、開発を担当するメンバーが検証業務を実施すると盲点が生まれてしまう可能性があります。

また、IoTの時代に突入したことで技術が複雑化しており、様々な領域と分野が混じり合っているため、試験内容を充実させるためには、半導体やメモリ、ケーブル類、無線充電機器など、様々な機材への投資を数百万円単位で行う必要があります。さらに、新技術の仕様更新やそれに伴う整備・修理費用などを考慮すると、初期開発のコストが高くなり、企業にとって大きな負担となり得ることでしょう。

図3:アリオンの特色


第三者試験機関は、規格の更新や技術的なイノベーション、産業変動などといった様々な変化に対応するために、専門家によって構成されるプロジェクトチームを備え、多種多様な製品に関するデータベースと知識を蓄えています。また、客観的なアドバイスと検証をサポートするパートナーとして、開発期間の短縮や製品品質の向上、顧客満足度の改善といった技術支援を提供しています。

アリオンは、様々なIT製品に対する品質検証や規格ロゴ認証、相互接続・互換性、性能評価、比較試験といった総合的な第三者検証ソリューションを提供する製品品質検証および技術コンサルティング企業です。ISO/IEC17025取得ラボとして、USB Type-CTMやHDMI®、Wi-Fi®、ThunderboltTM 3など30団体以上の世界的な技術標準化団体より第三者認証試験機関として認定を受けています。創業以来、技術規格の最前線に立ち、最新の試験手法を開発しています。日本をはじめ台湾、北米、中国、韓国の現地法人を通じて迅速、かつ地域に合わせたワールドワイド対応の検証が可能です。新製品開発の各段階において、優れた技術専門知識と豊富な経験に基づく完全カスタマイズによる検証プランを提案しております。