Allion Labs / Ryan Huang、Cache Her

ブロードバンドフォーラム(Broadband Forum, 略称BBF)は2019年2月27日にMWCにおいて、室内向けWi-Fi性能検証試験規格TR-398 Test Program Issue1(11n/11ac)を発表しました。Wi-Fi 6の登場と試験内容の完備化に伴い、BBFは2021年3月にTR-398 issue 2 (11axに対応)試験プログラムをリリースしました。

TR-398 issue 2では、以下の試験項目が追加されています:

  1. 6.2.4 Dual-band Throughput Test
  2. 6.2.5 Bidirectional Throughput Test
  3. 6.3.3 802.11ax Peak Performance Test
  4. 6.5.3 Automatic Channel Selection Test

また、既存の6.5.1 Long Term Stability Testの試験内容もTR-398 issue2で大幅に修正されています。本記事ではTR-398 issue 2における追加された内容および変更された内容について順次説明いたします。

【追加された試験内容について】

 a. 2.4 Dual-band Throughput Test(必須項目) – 2つのSTAの同時使用時の性能を検証 

Dual-band Throughput Test(デュアルバンドスループットテスト)は、Wi-Fi AP(DUT)が2.4GHz帯と5GHz帯の両方同時に動作した場合のスループットのパフォーマンスの確認を目的としています。テストを行う際、1台の端末のWi-Fi APの2.4GHzに接続し、もう1台の端末をWi-Fi APの5GHzに接続します。2台の端末とも接続完了したら、2台同時使用時のスループットを測定します。

  • テスト基準:

 b. 6.2.5 Bidirectional Throughput Test (必須項目) – アップリンクとダウンリンクの通信を同時に行ったときの性能を検証 

Bidirectional Throughput Test(双方向スループットテスト)ユーザーがファイルを同時にアップロードとダウンロードする状況をシミュレーションし、Wi-Fi APが同時にアップロード・ダウンロードの処理をする際のバケットロスを最小限にできることを目的としています。

テストを行う際、端末とAP間のアップ・ダウンロードの最大スループットを測定し、転送リソースがもう片方に占領されないよう、それぞれのアップ・ダウンロードの帯域幅を測定結果の45%に制限します。その後、同時にアップ・ダウンロードのUDPスループットを測定し、パケットロス率を確認します。

  • テスト基準:

それぞれのアップロード・ダウンロード時のパケットロス率が0.01%以下であること。

 c. 6.3.3 802.11ax Peak Performance Test (必須項目) – 11ax使用時の最高性能を測定 

802.11ax Peak Performance Test(802.11axピークパフォーマンステスト)はWi-Fi 6 AP向けの試験項目で、DUTが802.11axモードであらゆる設定下におけるAP通信性能の限界の確認を目的としています。本試験項目は以下の試験条件にて、APのサポート状況に基づきテストを行います。

  1. 802.11ax – 11ax – 2.4GHz, Nss=2, Bandwidth: 40MHz
  2. 802.11ax – 11ax – 5GHz, Nss=2, Bandwidth: 160MHz
  3. 802.11ax – 11ax – 5GHz, Nss=4, Bandwidth: 160MHz (Optional; 必須ではありません)
  4. 802.11ax – 5GHz, Nss=8, Bandwidth: 160MHz (Optional; 必須ではありません)
  • テスト基準:

測定した平均スループットは下表の要求を満たすべきであること。

 d. 6.5.3 Automatic Channel Selection Test (Optional; 必須項目ではありません) – Additional AP (Alien AP)とオーバーラップしないチャネルを選択することを確認 

Automatic Channel Selection Test(自動チャネル選択テスト)は、Wi-FiのチェンネルをAutoに設定したAPが起動時に各チャンネルの使用状況を自動で検出し、使用率の低いチャンネルを選択できるか確認します。テストを行う際、干渉APを1台別に準備し、指定のチャンネルにトラフィックを流すことで、指定のチャンネルの使用率が高い状況を再現します。その後、測定対象のWi-Fi APに電源を投入して起動し、その動作チャンネルが干渉APの使用しているチャンネルと別れているか確認します。

  • テスト基準:

測定対象のWi-Fi APに電源を投入して起動後の動作チャンネルが干渉APの使用しているチャンネルと別れていること。

【変更された試験内容について】

 6.5.1 Long Term Stability Test (必須項目) 

Long Term Stability Test(長時間安定性テスト)は、TR-398の既存の試験項目ですが、試験内容が大幅に変更されたため、変更後の試験内容について説明します。この試験内容は主にWi-Fi APが長時間動作している際、その他の端末の接続が頻繁に切れたり、接続したりする状況において、パケットロスを最小限にできるかを確認しています。

この試験では2.4GHz帯と5GHz帯にてそれぞれ2台の端末を接続します。同じ帯域と接続した2台の端末の中、1台はトラフィック帯域幅が50MHz のUDPダウンロードのスループット測定を繰り返し16回連続15分間行い、もう1台の端末は5分間毎に通信の切断または接続の動作を実行します。最後に、2種類の帯域の毎回のUDPスループットの測定結果における、それぞれのパケットロス率を確認します。

  • テスト基準:

毎回のスループット測定において、各帯域のパケットロス率が0.01%以下であること。

アリオンTR-398テストソリューションを通じて無線通信性能の品質を確保

アリオンはBBFに認定されたTR-398認証試験ラボとして、TR-398 Issue 1およびIssue2認証試験を行うことができます。その他にも、TR-398テスト基準をベースとした無線検証環境を構築し、お客様の製品に応じたパフォーマンス検証テストプランを提案します。また製品品質の管理やユーザー体験の向上、製品競争力の強化なども対応しています。