はじめに

本稿ではUSB Type-C & Power Delivery規格の基本を理解することを目的としています。USB Type-C & Power Delivery規格はこれまで積み重ねられてきたUSBの歴史の上に作られています。USB Type-C & Power Delivery規格を理解するために必要なUSBの基本的な仕組みと発展の歴史を解説して、十分な背景知識を得たうえでType-C & Power Delivery規格を基本から解説していきます。

 

USBとは

USBはパソコン(USB Host)と周辺機器(USB Device)を接続するインターフェースとして1996年にUSB 1.1として策定されました。Data Rateは12Mbps (Full-Speed)と1.5Mbps (Low-Speed)でマウスやキーボードなど比較的データ量が少ない機器を想定していました。USB HostはVBUS端子から5Vを出力することを必須とし、USB Deviceは自身が動作するための電力として、接続相手のUSB Hostから供給されたBus-Powerを500mAまで利用することができると規定されました。このBus-Powerが次第に充電するための機能として利用されていき、BC1.2やType-C & Power Deliveryへと発展していきます。

 

 USB 2.0の登場 

パソコンが高性能化するとUSBメモリなどを利用してデータ量が多いデータを短い時間で転送することが市場から求められたことから、Data Rateを480Mbps (High-Speed)へ高速化したUSB 2.0が策定されました。USB 1.1からUSB 2.0の変更内容は主にData Rate 480Mbps (High-Speed)の追加です。Bus-Powerの5V 500mAまでの規定はUSB 1.1と同じです。

 

 USB 3.0の登場 

1GBを超える大容量のデータを短時間で転送する要求が市場から求められたことから、Data Rateを5Gbps(SuperSpeed)へ高速化したUSB 3.0が策定されました。USB Deviceが利用可能な電流は900mAとなりました。USB は当初マウスやキーボードなどデータ量が少ない機器を想定していたため、転送効率を意識した通信仕様ではありませんでした。USB 2.0を単純にData Rateを上げただけでは実行転送速度が上がらないため、USB 3.0ではSuperSpeed用のデータ線は別にしてUSB 2.0とは異なる物理層の通信仕様を策定しました。

 

 BC1.2 

USB が登場して以来、USB Hostが必ず5V供給するという仕様であることから、USBを充電ポートとして利用するポータブル機器が増えてきました。しかしUSB規格で規定されているBus-Power (500mA@USB2.0 / 900mA@USB 3.0) は短時間で充電するためには不十分であるという市場からの要求にこたえるために、最大7.5W (5V 1.5A)まで利用可能とする規格Battery Charging Specification 1.2(BC1.2)が策定されました。USB 2.0規格に影響を与えない範囲でUSB 2.0の信号線を使い、ポータブル機器がUSB Hostと簡単なハンドシェークを行うことによりUSB Hostの給電能力を知ることができる方法を規定しています。当初BC1.2規格の目的の一つとして充電器の統一がありました。しかしUSB規格で規定されていないベンダー独自の充電手法が乱立し、その目的は果たせませんでした。

 

Type-C規格を理解するために必要なUSB2.0 / USB 3.x規格の基本

Type-C規格を理解するために必要なUSB2.0 / USB 3.x規格の基本

 

USB Hostの役割 (Role)

  • Power Role (Source): VBUS端子を介してUSB Device(Sink)へ5Vを供給
  • Data Role (Host): データ転送をする際、USB Deviceへ指示を出す

 

USB Deviceの役割 (Role)

  • Power Role (Sink): VBUS端子を介してUSB Host (Source)から5Vを受電
  • Data Role (Device): Hostの指示に従ってデータを送受信

 

Legacy USBケーブルで接続した場合は特に意識をすることなくUSB HostとUSB Deviceの関係が確立されUSB通信やUSB充電が開始されます。

 

 USB Bus Topology(接続形態)と用語 

USB Bus Topology(接続形態)と用語 

  • USBではUSB Hostを中心に考えます。
  • USB Bus Topology上にUSB Hostは1つのみです。
  • USBは1つのHostとDevice(s)の間の通信
  • USB Host同士、USB Device同士を接続することはできません。
  • USB Hubを使用して接続ポイント(Port)を増やすことができます。
  • Downstream: USB Host(上流)からUSB Device(下流)へのデータの流れ
  • Upstream: USB Device(下流)からUSB Host(上流)へのデータの流れ

 

USB Bus Topology(接続形態)と用語 

  • DFP (Downstream Facing Port): USB Host側の接続ポイント
  • UFP (Upstream Facing Port): USB Device側の接続ポイント

 

Type-C規格の基本

USBが機能するためにはUSB Host(Source)とUSB Device(Sink)の関係が確立することが重要です。Legacy USBケーブルで接続したとき、接続した時点で両者の関係が確立します。しかしUSB Type-Cケーブルは左右対称の形状であるため、接続しただけでは両者の関係が確立するとは限りません。従ってUSB Type-C規格ではケーブルを接続した時点で両者の関係が確立することを検出する規定が含まれています。

 

 Source (DFP)とSink (UFP)の関係の確立

USBはUSB Host(Source)とUSB Device(Sink)の関係が重要と述べてきましたが、USB Type-C規格ではSource (DFP)とSink (UFP)の関係の確立、という用語に置き換えて記載されています。USB Type-Cデバイスはパソコンや周辺機器などUSB通信有りの機器だけでなく、充電器やモバイルバッテリーのようにUSB通信なしの機器も想定しています。USB Host / USB Deviceという用語はUSB通信有りの意味合いが強いため、それぞれの接続ポイントとしての用語DFP / UFPに置き換えられて記載されています。

Source (DFP)とSink (UFP)の関係の確立

 

 USB Type-C Receptacleピン配置(左側) & Plugピン配置(右側) 

Plug(右側)のConfiguration Channel (CC)がReceptacle(左側)のCC1 or CC2のどちらにAttachしたかによってUSB Data Pathが決まります。

USB Type-C Receptacleピン配置(左側) & Plugピン配置(右側) 

USB Type-C Receptacleピン配置(左側) & Plugピン配置(右側) 

 

 USB Type-C Sourceデバイスの実装 

Sourceデバイスとは文字通りPower RoleがSourceである機器のことをいいます。充電器などがSourceデバイスに分類されます。SourceデバイスはSinkデバイスとの接続を検知するために、機器内部でCC1とCC2を規格で定められた抵抗値Rp(10kΩ, 22kΩ or 56kΩ)でプルアップする必要があります。SourceデバイスはSinkデバイスとの接続を検知するまでVBUS上に5Vを出力してはいけません。

USB Type-C Sourceデバイスの実装 

 USB Type-C Sinkデバイスの実装 

Sinkデバイスは文字通りPower RoleがSinkである機器のことをいいます。受電専用のポータブル機器やPC周辺機器などがSinkデバイスに分類されます。SinkデバイスはSourceデバイスとの接続を検知するために、機器内部でCC1とCC2を規格で定められた抵抗値Rd(5.1kΩ)でプルダウンする必要があります。

USB Type-C Sinkデバイスの実装 

 

 SourceとSinkを接続 (Connection) 

SourceとSinkを接続するとCC1及びCC2の電圧レベルが変化します。SourceはCC1またはCC2が規定の電圧レベルを示すとSinkと接続(connect)したと認識してVBUS上に5Vを出力します。SinkはVBUS(5V)を検知してCC1またはCC2が規定の電圧レベルを示すと接続(connect)したと認識します。USB Type-Cの場合Source側のRpプルアップとSink側のRdプルダウンの関係が確立してはじめて接続(connect)という状態になり、USB通信や充電が利用可能となります。

SourceとSinkを接続 (Connection) 

 

 USB Type-C Current 

SourceデバイスはCC1とCC2を規格で定められた抵抗値Rpでプルアップしていることを説明しました。Rpの値は以下の通りで、供給できる電流値によって異なります。

Rp = 56kΩ ± 20% (Default@5V)

= 22kΩ ± 5% (1.5A@5V)

= 10kΩ ± 5% (3A@5V)

知っておきたい!USB Type-C & Power Delivery規格の基本 – Part I

SinkデバイスはCC1とCC2をRd (5.1kΩ)でプルダウンされており、CC1とCC2の電圧レベルをモニタすることによってSourceデバイスが供給できる電流値を知ることができます。SourceデバイスがRp = 10kΩプルアップを実装している場合、Sinkデバイスは5V 3A(15W)まで利用することができます。

 

 DRP (Dual Role Power)デバイスの実装 

SourceとSinkのいずれかのPower Roleとして動作することができるUSB PortをDRP (Dual-Role-Power)といいます。スマートフォン、タブレット、Laptop、モバイルバッテリー、ゲーム機など多くの機器がDRPを採用しています。例えばLaptopは周辺機器と接続したときはSourceとなり、充電器と接続したときはSinkになります。DRPデバイスは未接続時、CC1とCC2を50ms~100ms(tDRP)ごとにRp pull-up (Source)とRd pull-down (Sink)を交互に切り替えています (DRP Toggle)。

DRP (Dual Role Power)デバイスの実装 

 

 DPRとDPRを接続 

DRPはSinkと接続した場合はSourceとなり、Sourceと接続した場合はSinkとなります。DRPとDRPが接続された場合はどちらがSource / Sinkになるかは接続してみないと決まりません。以下は左のDRPデバイスと右のDRPデバイスを接続したとき、左がSourceとなり右がSinkとして接続が確立した例を示しています。

DPRとDPRを接続

 

 USB Type-C規格の範囲でできること 

Power Role: 5V 3A

Data Role: USB 2.0通信、USB 3.2通信

 

USB認証テスト内容を事前に把握することで認証取得はより迅速に!

Type-Cコネクタが出現したことにより、転送スピードの高速化、給電能力の向上、他の信号転送への応用などインターフェイスコネクタとしての用途が広がってきております。近年新たに欧州を始め、世界でこのType-Cコネクタを標準化する動きが出てきております。それに伴い、それぞれのスピードなど性能を表す具体的なデザインへ変わってきております。

USB認証試験の内容は不定期更新されています。認証テストのスピードアップとミスを減らすためには、関連試験内容を予め把握することが必要で、アリオンにご連絡いただければ、担当者よりUSB規格等の最新情報提供に対応いたします。

次回はPower Delivery規格や認証取得可能・不可の注意点について紹介しますので、ご期待ください!

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