Allion Labs / Romonz Kao

Wi-Fi 6(802.11ax)ワイヤレス技術の発展と関連アプリケーション製品の導入により、Wi-Fi 6は新世代のワイヤレス製品の主流技術になりました。従来のWi-Fi 5(802.11ac)の伝送速度を大幅に改善しただけでなく、伝送効率も向上し遅延が低減されています。では、Wi-Fi 6の改善点や新たに追加されたテクノロジーは何でしょうか。Wi-Fi 6の主要テクノロジーとWi-Fi 5の違いについて、以下の比較表(表1)でそれぞれの項目について説明します。

表1:Wi-Fi 6とWi-Fi 5の違い

*: Bandwidth (伝送帯域幅)

1. 周波数帯の使用

Wi-Fi 5と異なり、Wi-Fi 6は2.4GHzの周波数帯域をサポートし、通信距離が伸びています。

2. 変調方式、符号化案(MCS)

Wi-Fi 6には1024QAM変調方式が導入されています。以下の図1で示されているように、1024QAMの変調次数はWi-Fi 5 256QAMよりも多いため、1024QAMの単一のシンボル(データパケット)で10ビットデータまで送信でき、8ビットデータを送信する256QAMに比べ、データ送信量が25%増加します。QAMの次数増加でもたらされる理論上の伝送速度向上を個別に比較すると、同じ1SS(1アンテナでの伝送)及び帯域幅160MHzの伝送条件の下で、256QAMの伝送速度は960Mbps、1024QAMの伝送速度は1.2Gbpsと、明らかに伝送速度が25%増加しています。ただし、Wi-Fi 6では、1024QAM変調が追加されているため、MCS 10と11が変調およびコーディング方式(MCS)に追加されます。

図1:(左)256QAMの変調方式 (右)1024QAMの変調方式

3. マルチアクセステクノロジー

従来のTDMAテクノロジーと比較して、OFDMAは帯域幅の割り当てにおいてより効率的です。以下の図2を例にすると、従来のTDMAアクセスモードでは、各ユーザーがデータを送信する際、サイクルの送信時間中、送信されるデータの量が少ない場合でもすべての周波数リソースが占有されるため、ユーザーはそのサイクルの期間が終わらないと、周波数リソースを占有することができません。そのため、同じAPに同時にアクセスするユーザーが多すぎると渋滞が発生し、すべてのユーザーはネットワーク速度が非常に遅くなったと感じてしまいます。

図2:TDMAとOFDMAの比較

OFDMAテクノロジーには、帯域幅割り当てをより詳細にカットし、このマルチ方式を実現するために「リソースユニット(RU)」が導入されています。OFDMAは、様々なユーザーのニーズに応じて、帯域幅をいくつかの柔軟な周波数リソースユニット(RU)に分割し、それらをユーザーに割り当てます。したがって、使用時の柔軟性が高まり、割り当てられたサイクルが固定されなくなります。

例えば、OFDMAモード(上図2右)のユーザーが大きなファイルを送信する際、APはより大きな周波数のリソースユニット(RU)をユーザーに割り当てて、データ送信をできるだけ早く完了させます。ファイルの送信が完了すると、周波数リソースユニット(RU)が他のユーザーに解放されることで、帯域幅の使用率が向上し遅延が減少します。

周波数リソースユニット(RU)は、異なる数量のサブキャリアで構成されています。802.11axの配置で言えば、サブキャリアの最小数は26であるため、略してRU-26と呼ぶことができます。したがって帯域幅が20MHzの場合、帯域幅を9つのRU-26ユーザーに分割してアクセスを可能にします。またRUは、APで柔軟に使用できるように、RU-52、RU-106、RU-242、RU-484、RU-996の組み合わせに分けられます。

次の表2で示すように、収容できるユーザーの数は、帯域幅とRUサブキャリアの組み合わせによって異なります。

(表2)

4. 空間ストリーム(SS、送信中に使用されるアンテナの数)

Wi-Fi 6は送信に8本のアンテナを使用するようにアップグレードされました。送信に4本のアンテナしか使用できないWi-Fi 5と比較して、Wi-Fi 6は送信速度を2倍に上げることができます。

5. サブキャリアの間隔

Wi-Fi 6は、サブキャリア間隔を312.5KHzから78.125KHzに減らしています。サブキャリア間隔を減らすと、単一のサブキャリアで伝送できるデータ量は減少しますが、これにより、利用可能なサブキャリアの数が増えます。間隔の狭いサブキャリアを使用すると、帯域幅をより効率的に利用することができ、この方法は、従来のデータ量が多い少ないに関わらず送信に同じ数のサブキャリアを使用していた状況よりも、使用効率の無駄を省くことができます。

6. 理論上の最大伝送速度

簡単にまとめると、同じ1SS(1アンテナ伝送)およびBW160MHz伝送条件下で、Wi-Fi 6の理論上の伝送速度は1.2Gbpsに達し、これはWi-Fi 5の866Mbpsの約1.4倍です。ただし、1024QAMは160MHzの同じ帯域幅で伝送速度を上げることができますが、256QAMと1024QAMの受信最低動作感度の差は6dBであることに注意しなければなりません(図2のオレンジ色と緑色の円で示しています)。これは、Wi-Fi 6の最大1024QAM速度を維持するために必要なエネルギー強度が、Wi-Fi 5の最大256QAMエネルギー強度よりも高いことを意味しています。

                   図3:256QAMと1024QAMの受信最低動作感度

例えば、現在のWi-Fi 5テスト環境では、Wi-Fi 6スループットの理論上の最高伝送速度に到達できず、伝送速度は1.9Gbpsにしか到達できません。 802.11acテスト環境から進化して802.11axの超高速伝送をテストできるようにするために、ハードウェアは伝送アンテナを追加することで空間ストリーミングの容量を増やし、様々な種類のアンテナを試すことができます。下の表4が示すのは、Windows内部ネットワークカードによって表示される送信速度で、従来の1.9Gbpsから2.4Gbpsまで向上させることができています。

表3:Windows内部ネットワークカードによって表示される送信速度

ハードウェアを大幅に改善した後、安定した最大接続速度を維持することに加え、伝送値も明らかに向上させることができます。アリオンの内部Golden PC数値を見れば、テスト環境の改善後、様々なWi-Fi 6モードの伝送値も改善されています。特に11ax(5GHz)HE160モードの値は改善後24%上昇しました。

   表4:ハードウェアを大幅に改善した後、伝送値も明らかに向上させることができます。

テスト環境がWi-Fi 6スループットの最大伝送速度要件を満たすことができた後、アリオンは、ノートパソコンのスループットパフォーマンスがどのように機能するかを理解するために、市販されている3台のノートパソコンのシステムで実際にテストを実施しました。

                                表5:ノートパソコンのシステム情報:

                                表6:テストデータ及び比較表:

                                図4:802.11axアップロード比較図

                                図5:802.11axダウンロード比較図

テストデータを分析すると、低速モードと中速モード下における3台のノートパソコンのパフォーマンスギャップはいずれも大きくありませんが、高速モード(HE160)に明らかなギャップがあることが判明しました。つまり、テスト環境が802.11axの要件を満たせない場合、超高速伝送速度の要件に対し、実際の高速パフォーマンスの差を検証することができません。

ワイヤレスパフォーマンスに影響を与える最大の要因は、ワイヤレスチップモジュールとアンテナ機能にほかなりません。3台のノートパソコンシステムの情報によると、「オペレーティングシステム」と「ワイヤレスチップモジュール」は、全て同じブランドまたはモジュールを使用しており、アンテナの配置が違うだけです。

では、アンテナの配置はワイヤレスのパフォーマンスに影響するのでしょうか。これを確認するために、D社のノートパソコンの位置を調整し、ノートパソコンを90度反転させて(下図6を参照)アンテナテストの角度を変えてから、スループットパフォーマンスを再テストしました。その結果、上り下りの伝送効率が40%近く向上していることが分かり(下表)、アンテナ配置のタイプが無線伝送の能力を大きく変える可能性があることを証明しました。

                図6:ノートパソコンスループットの配置位置を調整した際のイメージ

                表7:テストデータ比較表

結論

Wi-Fi 5テクノロジーが成熟し安定したことで、Wi-Fi 5テクノロジーを搭載したワイヤレス製品が市場の主流になりました。しかし、真に優れたユーザーエクスペリエンスをもたらし、より高速で低遅延を提供するWi-Fi 6関連のワイヤレス製品が徐々に市場で頭角を現しています。新世代の製品を開発する際、アンテナの配置タイプが無線伝送効率に深刻な影響を与え、更に言えばユーザーエクスペリエンスに影響を及ぼします。

したがって、開発プロセスにおいてアンテナの配置とフィールドタイプを考慮してから、マシン全体のワイヤレス伝送のパフォーマンス検証を実行する必要があります。現在アリオンがサポートする製品開発プロジェクトの観点から見れば、R&D側で検討すべき検証は、アンテナパフォーマンステスト(アンテナテスト)、ワイヤレスチップモジュールの検証(Conductiveテスト、OTAテスト)、スループットパフォーマンステスト、Wi-Fi 6認証テスト等が挙げられ、いずれも非常に重要なテストです。検証方法や経験も製品の品質に大きく影響します。最短時間で最大の検証効果を得る方法、つまり製品設計をサポートし品質管理を実現するために、適切なテストパートナーを選ぶことは、更に重要であると言うことができます。