Allion Labs

IoT(モノのインターネット)の時代には、数多くのデバイスがワイヤレス技術を通じてインターネットに接続されことになります。しかし、ワイヤレス環境はまるで目に見えない高速道路のようなもので、チャンネルや帯域幅は非常に限られており、IoT製品のワイヤレス機能検証方法は、過去のものとは大きく異なります。この記事では、一般的なワイヤレス接続の問題から始まり、実際のフィールドでのヒートマップ接続分析を通じて、IoT時代におけるワイヤレス検証のトレンドをご紹介します。

将来、IoTやスマートホーム製品がますます増加して、使用されるワイヤレス周波数もますます混雑し、消費者はワイヤレス品質の悪い使用体験を受け入れることができなくなるでしょう。ワイヤレス技術の利用はすでに20年以上にわたり、ほとんどのユーザーはWi-FiやBluetoothなどの応用技術に精通していますが、依然として接続に関するよくある問題がいくつか存在し、これが製品の品質と実際のユーザーエクスペリエンスに最も直接影響を与える鍵となるでしょう。

 1.ワイヤレス信号の不安定性 

製品間やワイヤレス基地局間の距離や、信号伝送路の材質は、ワイヤレスネットワークの信号強度に影響を与え、直接ワイヤレス伝送性能の差を引き起こします。家庭でよくある例を挙げると、自宅でスマートフォンをワイヤレスネットワークに接続している場合、リビングルームに座っているときは接続できますが、スマートフォンを持って寝室や他の部屋に移動すると、セメントの壁に遮られ、瞬時に信号が最大から弱に変わります。

 2.接続済と表示されていても、ネットワークが非常に遅く、遅延が大きい 

これもワイヤレス接続でよく見られる問題ですが、明らかに接続されており、APの信号がフルで表示されているのに、ネットワーク速度が遅くて遅延が大きく、ひどい時には動作不能に近い場合があります。このタイプの問題は、多くの場合、同じ周波数での同一チャンネル干渉や、他のワイヤレス技術からの信号干渉などが原因で発生します。

 3.「ワイヤレスローミング」が接続されているが機能しない 

使用範囲が比較的広いと、多くの場合、ワイヤレスネットワークのカバレッジを拡張する必要があります。しかしワイヤレスローミング(Wireless Roaming)では、異なるAP間で切り替える際に、短い切断時間の差が若干発生するため、この時間差で再接続できなくなったり、プログラム機能が中断したりする可能性があります。例えば、自宅を掃除しているお掃除ロボットが別の部屋に移動する際に、Aの位置では制御できますが、Bの位置に移動すると、デバイスは接続されているように表示されても、何のコマンドも送信できず、再接続してインターネットにアクセスする必要があります。

「ワイヤレスネットワーク」と「IoT製品」、「使用エリア」は密接に関連しています。将来のスマートホームは、カメラからコンセント、照明、さらには煙感知器に至るまで、すべてのデバイスがワイヤレス技術を通じてインターネットに接続されていなければなりません。上記の問題によりユーザーエクスペリエンスが影響を受ける場合、深刻な場合には生命や財産の損失を引き起こす可能性があり、消費者、製品、ブランドにとって大きな損害となります。

図: 将来多くのスマートホームアプリケーションが登場し、ネットワーク接続はIoTデバイスの重要なカギとなります。

アリオンは、10年以上にわたってワイヤレスネットワーク分野に深く関わっており、多くのワイヤレス技術(Wi-Fi、Bluetooth)およびIoT技術(LoRa、OCF)協会が認定するテスト機関です。アリオンは、早い時期にIoT製品の応用・技術の面に携わっており、「ヒートマップフィールド分析」を活用して、「製品からフィールドまで」の完全な検証ソリューションを設計し、製品の最適なワイヤレスパフォーマンスを保証します。

なぜワイヤレスヒートマップフィールド分析が必要なのか?

今日のワイヤレス製品の性能検証は、過去のものとは大きく異なります。IoT製品の場合、一般的なワイヤレス性能テストだけでは不十分であり、「ラボで合格、市場で不合格」という恥ずかしい状況を避けるために、実際のシナリオを考慮し、ユーザーの行動という観点から始め、実際のワイヤレス環境をシミュレーションする必要があります。

「ワイヤレスヒートマップフィールド分析」は、異なる製品には異なる接続要件があることを考慮し、実際のフィールドコンセプトを組み合わせ、従来とは異なる次の2つの検証特性を備えています。

 1. ワイヤレス品質の視覚化 信号の完全性と最適なパフォーマンスを保証 

ワイヤレス信号は目に見えず触れることはできません。さまざまな場所の信号品質を把握することは困難ですが、ヒートマップはこの欠点を補い、効率的且つはっきりと図形化したフィールド分析を行うことができます。

例えば、アクセスポイントの配置や周囲の環境、設備、さらには家具の材質も、製品パフォーマンスに影響を与えます。これまで、ワイヤレス信号品質は「点」から「点」の方式で表現されていましたが、アリオンは長年にわたる検証研究と専門的なテスト経験を活かし、「点」から「面」までの方法で分析する、ヒートマップを使用した一連のツールを設計開発しました。より包括的な方法で、信号強度 (RSSI) が完全に表示され、スマートデバイスのワイヤレス接続 (Wi-Fi、Bluetooth、ZigBeeなど) のパフォーマンスと品質を具体的に把握できるようになりました。

例として、上の図でヒートマップフィールドの実測値を見てみましょう。このWi-Fiのフィールド環境では、赤は信号が強いエリアを示し、デバイスは優れたパフォーマンスを発揮します。黄色は信号強度が中程度であることを、緑色や青色は信号強度がまずまず、または低いカバレッジ環境をそれぞれ示しています。実際に測定した結果、信号環境が異なるとスマートデバイスの性能に差が出ることが分かり、実測分析を通じて、フィールド全体で一定の接続品質を確保しました。ヒートマップフィールド分析では、接続品質の参考として以下の3つの指標も補足します。

  1. 遅延(Latency)
  2. スループット(Throughput)
  3. パケットロス率(Packet Loss)

これら3つの指標は、デバイスのワイヤレス接続品質を分析し、信号の不安定な問題点を特定し、接続状況を改善するのに役立ちます。

 2. 環境要因のシミュレーション デバイスの重要な問題を発見 

使用環境は常に変化しており、ワイヤレス信号もさまざまな影響を受けます。IoT製品の開発プロセスでは、ワイヤレス品質の信頼性を確保するために、色々な環境条件でテストする必要があります。アリオンは、信号に影響を与える要因を制御し、単純または複雑な信号環境をシミュレーションして、デバイスのパフォーマンスに影響を与える重要な問題を特定するお手伝いをします。

以下の図を例に挙げれば、図の左側は単純な信号が存在する環境を、右側は複雑な信号が存在する環境をそれぞれ示しています。右側の環境では多くの信号源があり、別のワイヤレス技術も混在している可能性があります。したがって、同じ周波数や隣接する周波数のワイヤレス高周波(Wi-Fi、Zigbee、Threadなどはすべて2.4GHz帯域を使用)は、信号干渉を引き起こす可能性が高く、デバイスのパフォーマンスに差が生じる可能性があります。さらに、環境の死角や信号の強弱を判別し、デバイスのパフォーマンスを向上させることもできます。

しかし、変数を制御したテスト環境を構築するには、技術や費用の面で一定のハードルが存在します。アリオンは、さまざまな難しいテスト環境を通じて信号差の変数を制御する実際のフィールドを構築し、ヒートマップで補完することで、メーカーがワイヤレスデバイスの重要な問題を特定できるようサポートしています。

IT愛好家の実測 多くのワイヤレス問題あり

スマートデバイスのワイヤレスパフォーマンスを検証するため、アリオンの専門家チームは、長年スマート製品をウォッチしてきたIT愛好家のお家を訪問しました。約55坪の広さがある自宅には、カメラ、音声アシスタント、ドアロック、煙感知器など、さまざまな種類とブランドのスマートデバイスがあり、これらのデバイスが接続する2つのワイヤレスAPが設置されていました。私たちはこの状況を踏まえたうえで、ヒートマップを使用して実地分析を実施したところ、一部のスマートデバイスのワイヤレス接続性能が期待していたほど良好ではないことが分かりました。2つのAPがあるにもかかわらず、家の3分の1の場所で信号が届かないか、信号が不十分でした。いくつかの具体的な例を挙げながら、実際のテスト中に遭遇した状況と発見した問題点を説明します。

図: 55坪の家に2つのAPが設置されているにもかかわらず、3分の1のエリアでは信号が受信できない、または信号が不十分でした。

 1.スマートカメラ:近くにあるが頻繁に接続が切れる 

このIT愛好家は、自宅の状況をリモートで監視したいと考え、スマートカメラを玄関に設置しました。最初は正常に機能し接続も問題なかったようですが、後になって、カメラがワイヤレスAPからわずか5メートルしか離れておらず、各種信号の指標(遅延、スループット、信号強度)もすべて良好であったにもかかわらず、頻繁に接続が切れる問題が発生し、使用に多大な支障をきたしました。

これは非常に典型的な使用例であり、スマートデバイスがインターネットに接続されている場合、接続されたデバイス間が相互に送受信可能な見通し線(Line Of Sight)の範囲内にあっても、切断が発生する可能性があります。このような問題が発生するのは、デバイス間の相互運用性の問題が原因である可能性があり、また室内の内装がデバイスの信頼性を低下させる可能性が高いと考えられます。

その後、スマートカメラを移動させたところ、機能は正常に動作するようになりました。この実測事例から判断すると、カメラが自宅の内装に近接して配置され、金属素材の干渉の影響を受けていることが原因であると考えられます。台湾の一般的なの家庭環境では、このような例は決して珍しいものではありません。

図: カメラがAPから5メートルしか離れていないにもかかわらず、すぐに切断されるという接続の問題が依然として発生します。

 2. スマートスピーカー:反応が速かったり遅かったり、遅延によりパフォーマンスが低下 

このIT愛好家は、色んなさまざまなブランドのスマートスピーカーやスマートコンセントを多数所有しており、普段これらを自宅のテーブルの上に配置して使用いましたが、環境条件が同じでも、材質の異なるテーブルの上に製品を配置すると、程度に差があるものの、信号伝送に程度の異なる遅延が生じることに気付きました。製品によっては全く影響を受けず、優れたパフォーマンスを発揮する製品もある一方で、一部の製品では遅延(Delay)の問題が発生しました。

その原因をさらに深く掘り下げてみると、このIT愛好家の自宅にあるテーブルの材質に関係があることが分かりました。テーブルは金属製で、製品を木製のテーブルに移動すると状況が改善されました。製品を金属面の上に置くとワイヤレス信号が不安定になり、遅延問題が発生した可能性があります。また、家の中では通常、無線APやデジタルセットトップボックス、他のネットワークデバイスを一緒に配置するのが一般的ですが、実際にテストしたところ、これらのデバイスが互いに信号干渉を引き起こすなど、他の電子機器にも影響を与えることがあります(近距離での信号干渉)。

図: 同じ位置でも、材質が異なる面に置くと性能が大きく異なります。

 3. ワイヤレスAP:特定のエリアでワイヤレス信号を受信できない 

今回のフィールドテストでは、家庭内のワイヤレス信号が明らかに安定していて、デバイスも正常に動作しており、他のワイヤレス信号の干渉もありませんでした。しかし、同様にダイニングテーブルに座っていると、位置によっては信号が不安定になったり、信号を受信できませんでしたが、少し離れたり数歩歩いたりすれば、再び信号を受信できるようになりました。

このような信号の不安定や受信できないという問題は、ヒートマップを使用して信号問題のポイントを特定しない限り、最も根本的な原因を見つけることが困難となります。通常、ワイヤレス信号のカバレッジ不足の原因は、家具や壁の柱、鏡、他の特殊なアイテムや金属素材からの干渉である可能性があります。今回のケースでは、デバイスが機能しなかった原因が、家の室内装飾とマッサージチェアからの干渉であったことが後に判明しました。

図: 自宅のワイヤレス信号が不安定であるか、信号が全く受信できない場合、それは室内装飾や金属素材のアイテムから干渉を受けている可能性があります。

ワイヤレスデバイスで遅延の問題が発生すると、ユーザーはすぐに悪い評価を下してしまいます。このような問題はスマートスピーカーで特に顕著です。

IoTによる将来のスマートライフでは、ネットワーク接続能力は電力と同じように重要であり、そのどちらも不可欠なものです。このIT愛好家の使用状況は、多くの家庭でも同じなのかもしれません。家電製品がすべてスマート化され、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機などがすべてインターネットに接続できるようになると、ワイヤレス信号の問題を重要視しなければ、スマート製品の潜在的な懸念となることでしょう。

高周波パフォーマンステスト ワイヤレスパフォーマンスのトラブルシューティングと改善をサポート

IoT製品の開発プロセスでは、問題点を見つけるだけでなく、それをどう改善するかも非常に重要です。「ヒートマップフィールド分析」を通じて接続の問題を発見した場合、「高周波パフォーマンステスト」によって根本原因を特定することができます。高周波パフォーマンステストは、アンテナからモジュール、エンド製品に至るまでの各段階において、それぞれ異なる項目で検証することができます。これらの3つの要素はいずれも欠けてはなりません。

また、各種デバイス内部の電子部品も電磁干渉を引き起こす可能性があり、CPUからワイヤレスチップセット、さらにはUSB、HDMIインターフェース、ディスプレイに至るまで、どれも性能に影響を与える可能性があります。さまざまな使用シナリオもワイヤレス伝送速度に影響を及ぼし、信号の中断を引き起こす可能性さえあります。たとえば、Wi-Fi接続時にUSBデバイスがデータアクセスを行うと、Wi-Fi転送速度が低下したり、接続に失敗する可能性さえあります。

デバイス自体の干渉源に加えて、他のワイヤレス技術も大きな懸念事項となります。2.4G 周波数帯域を使用するテクノロジーは数多くあり、Wi-Fi、Bluetooth、Zigbee、さらにはワイヤレス電話もすべて2.4GHz周波数を使用しています。スマートフォンを使用する際には、Wi-FiとBluetoothが同時にオンになっている場合が多いため、干渉を受ける可能性が非常に高くなります。

最適なユーザーエクスペリエンスを実現するために、スマートデバイスには総合検証が必要

IoT デバイスの機能は複雑であり、従来の純粋なパフォーマンス指向検証だけでは、スマートデバイスに必要な用途タイプのテストに対応できなくなりました。現在アリオンは、843チャンバー、333シールディングルーム、シールディングボックスなど、さまざまな高周波テスト環境を備えており、完全な高周波信号の測定と分析を提供することができます。また、実際のスマートデバイスユーザーシナリオをシミュレーションするために、アリオンは長年にわたる専門知識を活かしてIoTテスト研究の分野に参入し、最も一般的な5つの使用シナリオを設計し、2017年末にIoTテストフィールドを正式に開始しました。デバイス間の相互接続検証を通じて、製造メーカーがスマート製品で発生する可能性のある技術的問題を特定するお手伝いをします。

スマートデバイステストの今後のトレンドは、総合検証へと移行することでしょう。アリオンは、更に多くのテスト検証サービスを生み出し、お客様のニーズに最適な製品ソリューションを提供してまいります。

本記事の内容やテストに関してご質問などございましたら、アリオンのお問い合わせフォームからお問い合わせください。

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