Tag Archives: USB

新トレンド「天井スピーカー」 ホームシアター構築の新たな課題

 テレビ/スクリーン・プロジェクター・ホームシアターオーディオは、ホームシアター環境を構成する三つの要素です。ディスプレイ技術の進化に従い、ディスプレイの解像度が向上してきましたが、今まで画面の精緻さを求めてきた消費者は、今度はオーディオの質に注目し、より高度な映像・音声体験を求め始めました。近年、様々なAV規格が登場し、新たなホームシアターの連携体系が誕生しています。その中でもDolbyとDTSの二つのサラウンドシステムが市場の主流になっています。  例えばDolbyシステムの場合、スピーカー数は最初のDolby Pro Logic 5.1チャンネルから、最高規格のDolby Atmos 24.1.10チャンネルに進化してきました。Dolby Atmosについて説明すると、これはドルビーラボラトリーズが2012年4月に発表したサラウンド記録再生方式です。従来のチャンネル依存(Channel Dependency)を捨て、音声をオーディオ要素(Audio Element)にミキシングし、一つのサウンドオブジェクト(Sound Object)にまとめます。3D空間のどこにでも配置でき、音声のソース・移動方向と位置を正確に配置できるため、サラウンド効果を平面から立体に進化させ、よりリアルなビデオ・オーディオエクスペリエンスを実現させました。また、Atmosのオーディオ技術をユーザー側が享受できるようにするために、ドルビーラボラトリーズは新たな音声コーディング技術「Dolby ED2」を開発しました。Dolby ED2はDolby Eの拡張技術のため、下位互換性を持っています。新たなプロフェッショナルメタデータ(Professional Metadata, [...]

ハイスペックなゲーミングモニター 品質検証の要とは?

家庭用ゲーム業界の目まぐるしい発展は、ハードウェアと周辺機器の進化に影響を及ぼしています。注目を集めているのがゲーミングモニター市場の成長です。Trend Forceの傘下にあるWitsViewが発表したレポートによると、2017年のゲーミングモニター出荷量は約250万台で、年間成長率は80%にも及ぶそうです。また、2018年は前年より120万台増の370万台となることが予想されています。急速に成長しているゲーム市場において、モニター品質はユーザーから重要な要素の一つとして見られています。一方、ゲーミングPCのユーザーが常にハイスペックな製品を求めている傾向にあることは、開発者たちにとって決して無視できないポテンシャルリスクとなっています。 USB Type-Cはゲーム機器でも幅広く利用されており、USB Type-C技術を搭載したデバイスは今後ゲーム機器におけるスタンダードになると見られています。従来は映像や給電に複数のインターフェースが必要でしたが、USB Type-Cだと一つの接続ポートで給電(PD)と映像・音声出力を同時に実現できるようになります。当然、機能が便利になればなるほど、その裏側で動いている技術は複雑であることが伺えます。ここでは、アリオンが実際に測定したことで判明した、USB Type-C対応モニターによくある五つの問題点を紹介します。   モニターの抱えるポテンシャルリスク モニターとして最低限の機能とは、画面が問題なく表示されることです。しかし、市販モニターであっても一部メーカーの製品では使用中のブラックアウトやプラグアンドプレイの不具合、最大解像度への切り替えができない、といった画面表示に関する不具合が発生することがしばしばあります。ユーザーがゲームを楽しもうとしている最中にこんな不具合が発生してしまったとしたら、メーカーに対してどんな気持ちが芽生えるでしょう。ユーザーエクスペリエンスやユーザー満足度だけではなく、ブランドそのものにもダメージを与えることになりかねません。  1. モニター接続時にブラックアウト アリオンで試験を行った結果、ブラックアウト問題が発生したモニターは全体のおよそ2割に及びました。代表的な事例は次のとおりです。 USB Type-C経由でモニターとデバイスを接続したとき、モニターがブラックアウトする [...]

あなたの充電環境を守る認証 充電のリスクと安全性

「充電作業」は日課 スマートフォンをはじめとするポータブル機器は、今や我々の生活必需品といっても過言ではないほど身近なツールとなりました。スマートフォンは、特にバッテリー消費量も大きいため、毎日充電をしている人がほとんどではないでしょうか?  ガラケー時代に週1, 2回でもバッテリーが持っていたことが懐かしく感じます。 スマホが普及した現代、「充電」という作業は、その頻度と重要性が増し生活に欠かせないですね。ヘビーユーザーなら1日に1回では足りず、モバイルバッテリーを常備している人も少なくないと思います。普通の使い方の人でも、長時間の外出の時などは、外出先での電池切れが心配でモバイルバッテリーを持参する人も多いのではないでしょうか? これほどまで身近になった「充電作業」、それを支える縁の下の力持ち的な存在(道具)はなんでしょうか?「アダプター」、「ケーブル」です。これらは、毎日欠かさず使うので旅行や出張の際にも必ずもって行く必需品と言えるでしょう。電器店は当然、駅の売店でも、コンビニでも、旅先の小さい商店でさえも、充電用のケーブルやアダプターを見かけるようになりました。   充電のリスクと安全性 毎日使うこれらのツール、最も重要なものは何でしょうか?「安全性」ではないでしょうか? 日常生活に欠かせなくなったこれらのツールは、安心して使いたいものです。 充電という作業にはリスクが伴い、各ツールは熱を持ちやすい特性があります。そのため、発煙・発火の危険性とも常に隣り合わせです。発煙・発火すれば付近の物への損害、やけど、怪我、最悪の場合、火災などの大惨事を招きかねません。記憶にも新しいかと思いますが、通勤時間帯の電車内で出火騒ぎが発生したことがありました。 同じ電車に乗り合わせた人だけではなく、運転見合わせにより、多くの人々が被害を被りました。当事者も大切な所持品を失ったことでしょう。更には損害賠償を求められた可能性も高いです。 その原因は、「一番安かった」という理由で購入したモバイルバッテリーの使用による発火でした。モバイルバッテリー自体は安いとしても、それが原因で高価なスマホを損傷したり、自身が大怪我を負ったり、賠償責任を負ったり、住宅が焼失してしまうなどの事態になれば元も子もありません。リスクを考えれば、多少高くても、安全性が保証された商品の方が安心です。 信用の置けるメーカーの商品であれば、安全性は一定水準をクリアしていると思われますが、消費者への正式な証明としては、第三者認証機関によって行われた認証試験が有効とです。   [...]

MCPC モバイル充電安全認証の概要

スマートフォンは大変便利な情報機器ですが、使い方を誤ると思わぬ事故を引き起こしてしまうことがあります。特に大容量のバッテリーを搭載しているスマートフォンは長時間の運用が可能になる一方で、漏電などによる発火や爆発といった事故への対策もますます重要になっています。そこで、今回は過去の事例をベースに、アリオンが推進しているMCPC充電安全認証について紹介します。 1. スマートフォンの充電電流の増加と充電事故 スマートフォンは現代社会の情報機器として、年齢・職業を問わず広く普及しています。画面の大型化、様々な機能の増加などに伴ってスマートフォンの消費電力が大きくなったため、より大きな容量のバッテリーを搭載してきました。ユーザーが眠っている間に充電を終わらせるためには、充電時間は長くても1日8時間、平均6時間以内に完了させる必要があることから、充電電流は年々増加しています。例として、2010年のUSBポートを利用した充電器が登場した頃は500-800mA程度だった充電電流が、2014年頃には1Aを越え、2015年には1.5A以上、2016年には2Aを越える充電器が登場しています。スマートフォンの充電は、USBコネクタを経由したものが一般的になり、ユーザーは汎用のUSB充電器、充電ケーブルを使えるようになりましたが、一方で低価格化のために安全に配慮しない充電器、充電ケーブルも市場で販売されています。 充電は一般家庭において、就寝時のベッドサイド、洗面所などでも行われます。充電電流が大きくなったことで、不適切な使い方や充電器の不具合による火災、やけどなどの事故が2014年から増えてきました。このような事故は、就寝中の充電での事故、また浴室・化粧室など水気のある場所での充電なども原因です。特に充電端子部分での短絡により、充電器、充電ケーブル、スマートフォン充電端子での焼損が発生し(図1)、このような事故に対する業界内(販売者、製造者)での対策が必要となりました。                   図1:充電端子部の事故原因 2. 充電事故への対策 携帯端末に関する業界団体MCPCでは、このようなスマートフォンの充電事故を受けて、充電器、ケーブルなど充電に関する『USB充電インタフェース安全設計ガイドライン(MCPC TR-021)』、『モバイル機器安全設計ガイドライン(MCPC TR-023)』を発行しました(図2)。このガイドラインは、USB充電に関する事故原因を踏まえて安全な充電器、ケーブル、携帯端末を設計し、USB充電システムでの事故を低減することを目的としています。 ガイドラインで、定められた安全設計のための要求には、次のようなものがあります。 1)USB充電ケーブルの端子における焼損事故防止機能図1にあるような端子部分でのショートによる温度上昇が発生した場合に、充電を中止する(温度センサー、温度ヒューズ等による対策)。 2)過電流防止の為の充電器IV特性過電流防止の為の保護機能を持ち、定格電圧より低い領域で定電流領域を持たない。 3)異常状態での過昇温の保護機能ベッドサイドでの充電では、充電器に夜具がかかった状態が発生する可能性があることから、外気の対流が起きない状態での充電でも過昇温を起こさない。 [...]

そのバッテリーは大丈夫? 値段だけではない製品選び

2017年9月11日午後、東京のJR山手線神田駅で男性が背負っていたリュックサックが発火する事故が発生しました。リュックに入れていたモバイルバッテリーが原因とみられ、男性は「秋葉原で安いものを買った」との事でした。モバイルバッテリーが原因とみられる同様の事故は、2016年12月にもJR山手線で起きています。 このような事故を、アリオンは技術的な側面から考察してみました。 モバイルバッテリーは、内部に電池を持ち、携帯電話への充電機能をもつ充電器の一種です。その構造は、図1のように内部電池への充電部(以下 充電部)、内部電池、携帯電話への給電回路(以下 給電部)の3つの機能に分けられます。 図1:モバイルバッテリーの構造 充電部は、AC100VかUSB電源に接続され、モバイルバッテリーの内部電池を充電する機能を持ちます。内部電池は、モバイルバッテリーの主要部品であり、繰り返し充電が可能な二次電池が用いられます。ここに蓄えたエネルギーを使って携帯電話を充電しています。電池には、大容量のリチウムイオン電池などが利用されますが、充電時の温度管理や携帯時の落下衝撃などへの対策が必要です。 給電部は、内部電池のエネルギーを変換し、携帯電話への給電(充電)を行います(一部のモバイルバッテリーは、充電部と内部電池ではなく、乾電池などの一次電池を用いるものもあるが、今回の事故品とは無関係なので割愛)。 昨今、携帯電話の充電にはUSBポートを使用するのが一般的ですので、USB規格に従った電圧、電流設定が必須であり、急速充電の場合には携帯電話の充電プロトコルへの対応が必要となっています。 今回のような、「安価なモバイルバッテリー」の場合には、どのような点に問題があるかを推測してみます。充電という機能に着目すると、大容量の内部電池と急速充電ができる大電流に対応した給電回路があれば、携帯電話を長時間使えて急速充電ができるモバイルバッテリーを実現できるはずです。一方、安全面に配慮した場合には、モバイルバッテリーを落とした際に内部電池を保護できるような耐衝撃の構造と、内部電池を放電あるいは充電する場合に、電池の放電(充電)状態に応じた電流の管理、温度を監視する保護回路が重要となります(図1の赤字の部分)。 安価な製品の場合、メーカーは機能面についてはコストを払いますが、安全面についてはユーザーの注意に依存して配慮しない場合があります。つまり、発生するか不明な事故に対しては、コストをかけないことで安価な製品を実現している場合があるのです。 モバイルバッテリーをリュックの中に入れて長時間使った場合には、内部で発生した熱が逃がせず、高温になってしまう危険性があります。この熱は内部電池の放電と給電回路により発生します。給電回路の設計が携帯電話の充電特性とあっていない場合には給電効率が低くなり、給電効率が低い場合、内部で熱となります。 保護回路が適切に実装されている場合には、内部電池の温度上昇を検知して、携帯電話への給電を止める、または電流を小さくなるように設計されるはずです。これが図1における「安全のためのフィードバック」系、つまり保護回路です。しかし、このような保護回路が実装されていない、または設計が不適切な場合には、電池が発熱しているにも関わらず給電が継続され、さらに温度が上昇してしまいます。 ほとんどのモバイルバッテリーは、使用温度は0から40℃となっていますが、温度に対する保護回路がない場合には、内部電池の異常な状態になっても給電が継続されます。ユーザーは、このような異常に気付けなかった可能性が大きいと予測します。   今回(2017年9月)の事故では、内部電池が放電し、携帯電話へ給電している状態なので、図1における給電部、内部電池に問題があった可能性が大きかったと考えられます。 安価な製品の場合には、内部電池そのものの信頼性や、寿命の問題もあります。繰り返し使う中で、内部電池に既に問題が起きていた可能性も十分考えられます。しかし、電池の異常にはユーザー自身が気づくことは難しいため、内部に適切な保護回路があれば「充電が出来ない」という故障状態となり、事故前に使用が中止され、未然に事故を防げたことでしょう。 [...]

充電問題か?USB Type-C Power Delivery充電試験

あるGoogleのエンジニアが、オンラインストアで販売されていたUSB Type-Cケーブルの試験を行ったことで、思いもよらない災難を受けることになりました。使用したケーブルが基準に準拠していない設計だったために、Chromebook Pixelに接続して試験を行った際、そのPCを破損させてしまいました。ケーブル内のワイヤのハンダ付けが間違っていたことにより、電流が間違った場所(orピン)に流れてしまったことが原因でした。また今年の2月に、Appleは2015年6月以前に生産されたケーブル設計に欠陥があったとし、Apple純正USB Type-Cケーブルの回収を行いました。該当するケーブルだとMacBookに充電できないか、あるいは充電が途切れる現象が発生する可能性がありました。 USB Type-Cは、上下リバーシブル挿抜、最大10Gbpsに対応などが特徴です。また、USB Power Delivery(PD)を適用することで、充電とデータ送信を個別にサポートすることができます。BC1.2では7.5Wだった電力供給量が、PDでは最大で100Wと飛躍的に向上しています。USB-IFの充電規格以外ではUSB Type-CはQuick Charging(QC)にも対応しています。映像関係だと、Alternate Modeでは1本のケーブルでDisplayPort映像信号の出力ができます。このため、従来のUSB規格と比較してケーブルの構造が非常の複雑になっています。ケーブル・コネクタメーカーは開発段階でUSB-IFの仕様に準拠が必要のほか、製品品質と安全設計を確保しなければなりません。さらに、自社のType-C製品(ケーブル含む)が様々な使用状況下でスムーズに動作できるかどうかを検証し、電源供給能力の異常、システムの停止、コンポーネントへの影響など、不測の事態が起きないよう注意深く調査する必要があるのです。   図1. USB Type-Cエコシステム [...]