TR-398 issue 2 Corrigendum 1の規格が発表されてから1年ほどが経ちました。現時点ではアリオンで受験された製品で不合格になりやすい試験項目について、シリーズ化して共有したいと思います。

TR-398試験に関する基本的な知識の参考として、このシリーズ記事が、少しでも試験実施を検討されるお客様または無線製品の開発担当者にお役に立てれば幸いです。それでは、まず6.3.1 Range Versus Rate Testから解説しましょう。

6.3.1 Range Versus Rate Testの概要

6.3.1 Range Versus Rate Testは、通信距離と速度の関係を測定する試験項目です。このテストでは2mの位置を基準として、接続距離の増加によって、AP(DUT)のパフォーマンスが基準を満たせるかどうかを検証します。また、APの信号を少しずつ減衰させ、異なる信号強度下のスループットの変化を記録します。信号強度が「強」、「中」、「弱」3つの状況においてAPのパフォーマンスを確認することを主な目的としています。

図1:6.3.1 Range Versus Rate テスト概念図

・テスト基準:

それぞれ異なるワイヤレスモードとデータ転送方向の設定がありますが、各条件を設定したテストにおいて、テストポイントがスループットの基準より下回ることが最大2個まで許容されます。

図2:6.3.1 Range Versus Rate Testにおけるスループットの測定基準

事例分析

アリオンが過去実施したTR-398テストでは、数多くのAPが低減衰量かつ強信号(距離が近い)の場合※は、基準を満たすことができていましたが、減衰量が高くなり信号が弱くなると、APが信号強度の不足で良好なSNRを維持することができなくなり、MCSレートとデータレートをサポートできませんでした。またスループットのパフォーマンスが悪くなり、基準値を下回ったり、更には接続が切れたことも発生しました(図3の赤い矢印箇所)。この問題は、特にアップリンク時によく発生することが分かりました。

※追加の減衰値は27dB以下となります。

図3:Range Versus Rate Testの実施結果

この試験に合格するにはすべきこと

テスト用の測定機器は、高ゲインの単極アンテナを使用しているため、テストを行う前に以下のポイントをご活用されることをお勧めします。

ポイント1. APのアンテナの偏波と位置を事前確認する

APの最高の無線パフォーマンスを実現するために、APのアンテナの偏波と位置を事前確認することで、測定機器の使用しているアンテナが APのアンテナの位置と一致しているかどうかをより効率的に確認できます。

またスループットが基準値を満たせないというような状況を回避できるよう、アンテナパターンからAPアンテナのワイヤレスパフォーマンスとパターンを確認でき、この結果を基に測定機器で使用するアンテナを調整するが可能です。これにより、試験を実施する前に信号減衰によるMCSとデータレートの急速な低下を改善することも可能です。

図4:2Dアンテナパターンからどの角度でよりいい放射性能が得られるかを確認することが可能

ポイント2. 試験実施前にDUTが長時間において安定して動作可能かを確認する

Range Versus Rate TestやSpatial Consistency Testなどといった長時間テスト項目を実施する際に、長時間の安定動作が必要になります。DUTが安定して動作できなければ、テストの結果が基準値を下回るだけでなく、前後のテスト結果の誤差が大きくなってしまいます。さらに問題点の解決方法を見つけるのが難しくなり、テスト全体の時間が長引く恐れがあります。

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