Allion Labs / Ryan Huang

前回では6.3.1 Range Versus Rate Testについて説明しました。今回ではそれに続いて、メーカーがFailしてしまう可能性が最も高く、また頭痛の種ともなっている6.3.2 Spatial Consistency Test(360度方向性テスト)について紹介したいと思います。

6.3.2 Spatial Consistency Testの概要

6.3.2 Spatial Consistency Testのコンセプトは、信号を強・中・弱の3つの状況に分割し、さまざまな角度から、APが平均的且つ良好なパフォーマンスを発揮できるかを確認することです。テスト中、同様にAPと接続されたデバイス間の距離を2メートルでシミュレーションした後、減衰器を使用して低・中・高の減衰を実行してAPを30 度ごとに回転させ、さまざまな角度で伝送スループットを測定します。

このテストの主な目的は、APが特定の角度に信号の死角があるかどうかや、伝送量の低下や断線の状況が発生していないかを確認することです。減衰条件の変数を減らした6.3.1に比べ、6.3.2はテスト時間をかけてさまざまな角度から伝送スループットパフォーマンスを観察します。

 テスト基準 

6.3.2 Spatial Consistency Testのテスト基準は厳格であるため、ブロードバンドフォーラム(BBF) 協会のPass/Fail判定は、Corrigendum 1で2つの段階式判定方法に調整されています。

・判定基準a.

異なる無線モード(註1)および伝送方向のテスト条件下で、BBF協会は同じ無線モード、同じ信号強度、同じ伝送方向(異なる角度または減衰に対応)内に最大2つのテストポイントを許可しており、いずれも伝送スループットの基準よりも低くなっています。

*註1:無線モードは、802.11n-2.4GHz帯、802.11ax-2.4GHz帯、802.11ac-5GHz帯、802.11ax-5GHz帯に分けられます。

図1:6.3.2 Spatial Consistency Testの伝送スループット基準

・判定基準b.

同じ無線モード、同じ信号強度、同じ伝送方向のテストポイントが判定基準を満たさない場合、下の表の伝送スループット変動の基準を満たす必要があります。

計算方法は、同じ無線モード、同じ電波強度、同じ伝送方向での最小伝送スループット[X値]から平均伝送スループット[Y値]を引き、その数値を平均伝送スループット値で割ることで、割合の差異を求めることができます。その差異の基準は下の表の通りです。

伝送スループット変動率の変化 = (X-Y) / Y

図2:6.3.2 Spatial Consistency Test伝送スループット差分のパーセンテージ基準

 結論 

1. テスト結果が基準aを満たしている場合→Pass判定

2. 基準aを満たさない場合、基準bの計算を実行するが、それでも基準bを満たさない場合→fail判定

よくある質問

6.3.1 – Range Versus Rate Testのように、ほとんどのAPは低減衰と強信号時(註1)、簡単に基準を通過することができます。

ただし減衰の増加に伴い、信号が弱くなる(註2)と、APはアンテナパターンを原因としてさまざまな角度で信号強度の不足を示し、高いMCSレートをサポートするために良好なSNRを維持できなくなります。結果として、伝送スループットの効率の悪化で基準より低くなり、また、特にアップリンク伝送時(註3)に断線(下の図赤い矢印部分)が発生する場合があります。

*註2:追加の減衰値は10dB
*註3:距離が遠くなることをシミュレーションする
*註4:デバイス側からAP側への伝送時

この状況が発生するのは、その多くがテストポイントの伝送スループットが低すぎるためで、平均伝送スループットとの差が大きくなってしまい、BBF協会の定める伝送スループット差異基準を満たすことができません。つまり基準bで測定しても不合格です。

図3:6.3.2 Spatial Consistency Testの実測結果

この試験に合格するにはすべきこと

TR-398 Issue 2 Corrigendum 1バージョンのリリースに伴い、BBF協会はこの項目の基準を緩和しました。これまでは、基準aと基準bの両方を満たす必要がありましたが、現在はすべてのテストポイントが基準aを満たしていれば、この項目はそのまま合格できるため、テストでは全体的な伝送スループットパフォーマンスの向上にのみ注目する必要があります。

ポイント1. APのアンテナの偏波と位置を事前確認する

6.3.1 – Range Versus Rate Testで提案したように、テスト設備のアンテナをAPのアンテナの位置を合わせて、ワイヤレス伝送効果が最高のパフォーマンスを発揮できるように、お客様はAPアンテナの偏波と位置に関する情報をご提供ください。

図4:2Dアンテナパターンで、どの角度により優れた放射性能があるかを知ることができます

ポイント2. 試験実施前にDUTが長時間において安定して動作可能かを確認する

また、この項目は長期的なテストでもあるため、DUTが長時間安定して動作可能なことを確認するようお客様にお願いしています。DUTが安定して動作しないと、結果がテスト基準を満たせなくなるだけでなく、前後のテスト結果に一貫性がなくなることで問題の発見が難しくなり、結果としてテストとデバッグの時間が長くなってしまいます。

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