Allion Labs / Joseph Lin

 

近年、クラウドコンピューティングとクラウドストレージの急速な成長に伴い、ネットワークサービスプロバイダーのサーバー需要が高まっています。クラウドサービスプロバイダーは、大量の情報にアクセスするユーザーのニーズを満たすことができるハードウェアを提供するために、さらに多くのデータセンターを構築し続ける必要があります。また、サーバー自体の性能要件やストレージスペースも、各種のストリーミングメディア(Netflix、Disney+、Spotifyなど)の流行に対応して、高度に成長してきました。

 

ハードディスクの安定性に対する大きな課題 ― 冷却ファンが起こす振動やノイズ

サーバーで使用されるCPUやハードディスクドライブ(以下HDD)も、この数年間、性能とストレージスペースの需要に対応して高度に成長しています。CPU性能の向上は、より高い電力消費をもたらし、HDDの容量も倍増しました。
サーバー内にある他の部品も、CPUの能力向上に応じてその性能が向上し、消費電力も増加しました。
サーバー全体の消費電力が増加すると、それに応じてサーバーの冷却ニーズも高まります。冷却ファンはサーバー冷却システムの主要コンポーネントであるため、サーバーに蓄積された熱を、サーバーケースの外側に吐き出すのに十分な風量を提供するために、ファンの回転数がますます増加します。しかし、冷却ファンの回転数が増加するにつれて、冷却ファンが起こす振動やノイズも大きくなり、結果的にサーバー内の他の部品に影響を与えてしまいます。

 

 

HDDは、サーバー内で冷却ファンの振動とノイズの影響を最も受けやすい部品です。
今までの経験と研究によると、HDDのパフォーマンスに影響を与える振動は、次のいずれかから発生する可能性があります。
  • システム動作時の振動
  • HDDとHDDの間で相互に伝達する振動
  • HDD付近から発生する他のデバイスからの振動
中でも、高速で稼働するファンから発生するノイズや振動が、HDDのパフォーマンスに最も大きな影響を与えるとされています。
  • 現在のHDD技術では、2kHz以下の振動に対してより強力な補正能力があります。
  • 高速で稼働するファンは最大20kHzの振動が発生します。

 

 

高密度で高性能なストレージへのニーズに伴い、HDDの安定性はより厳しく求められています。そこで高速で稼働する冷却ファンの振動は、HDDの性能に極めて大きな影響を与えます。

ディスク自体の密度が高くなると、ディスク間の距離が近くなり、読み取りヘッドとディスクの距離も近くなります。これにより、HDDはサーバー内のノイズや振動といった外部からの干渉の影響を受けやすくなり、性能の変化を引き起こす可能性があります。同時に、より高密度なケース設計に対応するよう、サーバーは冷却のためにファンの出力や周波数、速度を増加させることで、高密度で大容量の機械式HDDに対する干渉が増加します。そして、音波が生成する音圧は、HDDに対する影響が特に顕著であり、HDDの性能低下や、さらにはHDDの寿命に悪影響を及ぼしてしまいます。

冷却ファンの振動やノイズがHDDに与える悪影響を減らすため、統一された測定ツールや測定方法が非常に重要となります。これがあれば、HDDおよび関連メーカーが異なる測定ツールや測定方法で起こる誤差を解決するための余分な時間を節約することができます。

しかし従来は測定ツールや測定方法が統一されなかったため、サーバーメーカー、HDDおよびHDD抽出ボックスのメーカーが各メーカー間で異なる測定ツールや測定方法で起こる誤差を解決しなければなりません。

この課題を解決するためOpen Compute Project(OCP)は、データセンターやサーバーを含むハードウェア設計の一連のオープンソースを公開しました。データセンターのサーバーやストレージシステムなどのハードウェア仕様や構築基準を含め、グローバルなクラウドデータセンターのオープン仕様の開発とトレンドを開始し、現在世界標準となっています。

その中で、冷却ファンの振動とノイズがHDDに与える影響について、OCPストレージHDDダイナミクスグループ(OCP Storage HDD Dynamics Group)が設立され、各ハードディスクメーカーから振動とノイズの専門家が集まり、綿密な議論と実測を経て、関連測定ツールを策定しました。

 

アリオンは認証試験、品質検証、およびコンサルティングの総合的な第三者検証ソリューションを提供するリーディングカンパニーとして、OCPストレージHDDダイナミクスグループが推奨する測定機器を完備しております。これに加え、アリオンは音響とストレージデバイスに対する豊富なテスト経験に基づいて、専門的なリスニングチャンバーを使用することで環境ノイズによるエラーを排除し、測定データの正確性を確保します。

そこで今回はサーバー冷却ファンのノイズと振動がOCP基準に基づくHDDのパフォーマンスに与える影響について実測しました。

 

1. ノイズ振動がHDDに与える影響

性能テスト実行中のHDDの前方に、異なる周波数と強度のノイズを与え、HDDがどのようなノイズに対して反応が悪いかを見つけ出し、HDDメーカーやケース(HDD抽出ボックス)メーカーが製品を設計する際の参考として提供します。

テストデータ

  • 各組み合わせの音圧曲線
  • 各音圧下のハードディスク性能

 

2. サーバー内にある冷却ファンの音量

サーバー内にあるHDDスロットに仮のHDDを取り付け、様々な回転数で発生する冷却ファンのノイズが、HDDスロットに伝わる音量を測定します。サーバーメーカーがサーバー内部の構造を設計する際の参考として提供します。

テストデータ

  • 各冷却ファン回転数でのノイズ録音ファイル
  • 各冷却ファン回転数でのノイズの周波数スペクトル解析

上記2つの測定方法に基づき、HDDのノイズ振動に対する弱点を特定し、ケース内で発生する冷却ファンのノイズ周波数を得ることができるため、HDDおよびケースのノイズに対する耐性を最適化することができます。

 

まとめ

アリオンは、OCPストレージHDDダイナミクスグループと同じ測定装置と方法を提供するだけでなく、各種測定方法について積極的にお客様と話し合いました。次回はテスト環境と方法をご紹介する予定です。関連の検証テストサービスについてより詳しい情報をお求めの場合は、アリオンのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

 

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