市場にはモバイルバッテリーからマルチポート充電器など、さまざまなタイプの充電デバイスが数多くあり、また新しい充電方法も次々に登場しています。入出力は2×USBをサポートするものから4×USBをサポートする大型のものまで多岐にわたり、一部のモバイルバッテリーでは、ケーブルを備えたものやAC電源入力をサポートしているものさえあります。しかし、多くの消費者がこうした製品を購入する一方で、充電中に過熱、溶解、焼損、爆発するといった生命と財産の安全にかかわるニュースを時折耳するため、こうした製品を誰も気にせず安心して使用していいものか、消費者は不安を感じています。また、販売店とブランドメーカーは市場で売上げを伸ばすため、こうしたリスクにどう対処し回避すべきでしょうか。アリオンは、USB認証試験とカスタマイズ検証を兼ね備えた業界唯一のラボとして、シミュレーション可能なテスト環境を構築でき、主要な充電器ブランドやメーカーとの協力関係から得た豊富なテストケースの経験を有しています。一般的な製品設計と潜在的な応用リスクは次の通りです。

知らないでは済まされない!マルチポートパワーバンクと充電器の設計および潜在リスクと分析

 1. 充電器の温度制御能力が不十分だと、ユーザーがやけどしたり、ケーブルインターフェースの溶解を引き起こす可能性あり 

昨今GaN技術の充電器が新しいトレンドになっています。そのメリットは非常に小型で軽量なことですが、使用後に触れると少し熱く感じるのが玉にキズです。マルチポート充電器製品の場合、外観や温度制御、安全性をどのようにバランスよく設計するかが重要で、製品の安定性と安全性テストの中で非常に重要なポイントとなっています。アリオンの環境シミュレーションラボで、環境温度23度の中、充電器の温度制御パフォーマンスに関するテストを行い、充電器を長時間使用した場合の温度の安定性を含め、正常な使用範囲内で動作し過熱の問題を回避できるかを確認しました。

以下は、とあるGaN技術の充電器に関するテスト結果です。環境温度が23度のテスト条件下で、充電器のすべてのポートでデバイスを充電した際、測定した外部ケースの最高発熱源の温度は以下の通りです。

医学的研究によると、45度の物体が肌に直接触れたまま30分以上経過すると、赤みやかゆみの症状が現れる恐れがあり、温度が50度に達すると、接触時間がたった5分でも低温やけどのリスクがあり、温度が60度から70度に上がると、その物体に直接触れるべきではないと言われています。アリオンのテストデータから、この製品は市場でユーザーから返品されるリスクがあるだけでなく、ユーザーがけがをして損害賠償を請求されるリスクもあることが分かります。

 2. シェアパワー後、充電能力が不足や過剰となり、ロジックエラーが発生する 

アリオンのユーザー検証シナリオでは、充電器がシェアパワーモードで複数のデバイスを同時に充電する場合、各デバイスが十分な充電を受けられるかどうか、また電力の配分が充電器の設計に合致しているかどうかを確認することができます。さらに、さまざまな操作システムを持つデバイスと正しく接続し、安定して充電できるように、ユーザーグループごとにデバイスをシミュレーションして互換性検証を行います。アリオンの経験に基づくと、よく発生する問題は以下の通りです。

A. 充電能力の不足または全体の出力が設計仕様を超えている

  • 一部の充電器でシェアパワーを実行すると、一部の充電ポートでは充電プロファイルで宣言された充電電力があるにもかかわらず、実際にデバイスに接続すると不足していることがある。詳細な検証で電気負荷を使用して強制的にパワーを増やすと、充電器がOCP(Over Current Protect、過電流保護)に入ることがある。
  • 充電能力が過大で、予想以上の充電プロファイルを宣言しサポートする。元々製品にデフォルトで設定された最大出力が100Wの充電器でも、シェアパワー後にすべての充電ポートを合計すると110W以上になることがある。

B. ロジックエラーや説明書内容との不一致

  • 実際に測定された電力と、パッケージに記載されている情報との間に差異がある(数値が説明書と異なる)場合、充電器が高負荷状態にありユーザーの期待を満たしていない可能性があることを意味します。
  • スマート電力配分を備えた充電器は、接続時に電力を自動的に分配するため、逆に充電できなくなることがあります。シェアパワーモードでは、ロジック条件の設計が不十分なため、異なる組み合わせ(ユーザーシナリオ)で正しく動作しないことがあります。例えばある充電器を、下の組み合わせ3と組み合わせ4のシナリオでテストしたところ、デバイスを充電できない問題が発生しました。消費者は製品に欠陥があると判断して返品する可能性があります。
  1. 組み合わせ1: HP ZBook 15M G7(充電)
  2. 組み合わせ2: HP ZBook 15M G7(充電)+ Apple iPhone 14(充電)
  3. 組み合わせ3: HP ZBook 15M G7(充電せず)+ Samsung S22 Ultra(充電)
  4. 組み合わせ4: HP ZBook 15M G7(充電せず)+ Apple iPad Air 10.9″_5th(M1)(充電)

 3. 長時間にわたる電力供給の安定性モニタリング(Full Loading & Stress) 

現代に生きる私達は多くの電子デバイスを所有しており、毎日さまざまな製品を充電する必要があります。充電器の全負荷テストやストレステストも含め、アリオンは長時間にわたる電力供給モニタリングテストを提供しています。テストを通じて、充電器に過熱やその他のパフォーマンスに関わる問題が発生しないか、長時間高負荷の状況でも安定して動作するかを確認することができます。以前あったテストケースでは、連続して50回の安定性モニタリングを実施した結果、充電器に接続して一定時間が経過したスマートフォンで、「充電中」の通知音が2回続けて鳴ったことがありました。専門家チームの分析によれば、以下の理由が考えられます。

  • 一部のデバイスは充電が完了すると充電器に必要な電流が小さくなり、シェアパワーのロジックが変更された可能性がある。
  • 電流が小さくて充電器の設定値よりも低いため、充電器は充電ポートを塞ぐ必要があるが、充電トリガーの仕組み上反復的に動作したことが発生原因となった可能性がある。ユーザーはこの問題を不便に感じ、ユーザーエクスペリエンスに影響を与える可能性がある。

 4. 予期せぬ停電が製品の機能異常を引き起こす 

現実生活では予告なく停電が発生し、製品の電力が突然切断され再接続されることがあります。このような状況でも正常に動作するのか、電源の切断と再接続の問題は、多くのユーザーからが訴えるクレームの一つです。アリオンはこのシナリオをシミュレーションでき、充電器がデバイスの接続状態の変化に迅速かつ安定して適応し、接続の信頼性と充電効果を維持できるかを確認します。

以前あったテストケースでは、ある充電器で正常機能に回復しない問題が発生しました。

  • 2つのUSB-Cポートの電力制限が最大で18W(12V、1.5A)までしかサポートできない
  • 1つのUSB-Aポートは全く充電できず、動作が停止する。

この問題が発生すると、充電器に接続しているデバイスを取り外しても、充電器は正常に復旧せず、充電器を抜き差ししてパワーオフリセットをしない限り、充電器は通常の状態に戻ることはありません。技術的な関連知識がない消費者にとって、これはユーザーエクスペリエンスに悪影響を及ぼすだけでなく、製品の返品を直接引き起こし、同じブランドの製品を買わなくなる可能性があります。

Faster、Easier、Better ― PC周辺機器向け検証コンサルティングサービス

以上、専門的なテスト方法とユーザーシナリオのシミュレーションを組み合わせ、実際の実験データから、さまざまなユーザーシナリオで起こりうる潜在的な問題を特定した例をご紹介しました。アリオンは充電テストの分野で専門的な経験を持ち、豊富なテスト設備と自動化されたテスト技術を備えています。アリオンがお客様に提供するサービスには、充電チップの研究開発検証、製品機能検証、製品互換性検証、エンドカスタマーからのクレーム複製検証などが含まれます。

アリオンの専門的なコンサルティングサービスチームは、お客様により迅速で、便利で、優れたサービスを提供し、市場で販売を向上させるお手伝いをします。

 Faster ー より迅速 

アリオンは専門的なUSB-IF認証とUSB充電互換性試験における経験により、製品がどのような段階にあっても、認証と互換性を同時に進行することができ、製品開発とデバッグのサイクルを加速・短縮します。

  • USB認証をより速く取得
  • 充電関連の検証環境を迅速に構築
  • 製品の開発検証戦略をより速く取得
  • 検証プランをより速く取得

 Easier ー より簡単 

AIと自動化テストソリューションを活用して、各検証評価が「定性的、定量的、再現性のある」特性を持つことを保証します。アリオンのサービスを利用すれば、より簡単に製品品質と全体的な性能を向上させることができます。

  • より効率的なテスト手法
  • 時間とコストを更に削減可能なテストプラン
  • より正確なテスト結果

 Better ー より正確 

アリオンには専門的な技術チームと豊富な経験があるため、ユーザーエクスペリエンス検証をどのように設計すべきかを把握しており、現実に即した利用シーンテストを実施して、製品が実際のアプリケーションで最適なパフォーマンスを発揮できるようにします。

  • より完全でより優れた検証計画とユーザーシナリオテスト
  • 専門的なデバッグサポートと問題の特定

関連の検証テストサービスについてより詳しい情報をお求めの場合は、アリオンのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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