Allion Labs

ワイヤレスルーターの最も重要な指標は、速度と安定性ですが、実際これらのデータのほとんどは、単一のデバイスでのテストで得られた結果に過ぎません。ワイヤレスネットワークの発展に伴い、IoT(モノのインターネット)をサポートしている家電や、オンラインビデオストリーミング用のテレビやセットトップボックス、オンライン対戦が可能なゲーム機など、家の中にある多くのデバイスがワイヤレス接続でインターネットに接続しています。ワイヤレスルーターは多くのデバイスと接続していても、データ転送能力を維持できるのでしょうか?それとも急速に低下するのでしょうか?

この記事では、一般消費者が購入できる高性能な家庭用フラッグシップワイヤレスルーターの2製品を比較しました。どちらのルーターもWi-Fi 6(802.11ax)をサポートしており、最速を謳うフラッグシップの家庭用ルーターが、それぞれどのようなパフォーマンスを発揮するのかを見てみましょう。

このテストは、ワイヤレスルーターの最大接続数(最大で200台まで)と、異なる接続数での総データ転送能力のテスト(最大で100台まで)の2つの部分から成ります。現在市販されているワイヤレスデバイスはほとんどが2 × 2アンテナを備えているため、テスト時にはワイヤレスデバイスシミュレータを使用して、2 × 2アンテナを備える一般的なデバイスをシミュレーションします。下の図に示すように、テストの際は他の外部要因からの干渉を排除し、すべてのデバイスを隔離ボックス内に配置します。

テスト結果

 ワイヤレスルーターの最大接続数 

さまざまな接続数の総データ転送能力テストを行う前に、まずこれら2つのワイヤレスルーターが確立できる最大接続数でのパフォーマンスを確認しました。すべての接続が確立されたうえでPingテストを実施して、大量に接続している状況でワイヤレスルーターの遅延パフォーマンスを観察しました。ここでは50台、100台、150台、200台と4つの異なる接続数でのテストを実施しました。

まず、A社は50台のデバイスで安定した性能を示していますが、60台を超えると接続できない状況が発生し始め、100台を超えるとテストができなくなりました。一方、N社は最大で200台のデバイスに接続できました。遅延のパフォーマンスについては、どちらのルーターも100ミリ秒以内で、一般ユーザーには違いを感じさせないパフォーマンスでした。

 総データ転送能力テスト 

総データ転送能力テストの主な目的は、ワイヤレスルーターが多数接続されている状況でも総転送能力を維持できるかどうかと、接続数の増加によってデータ転送能力が大幅に低下しないかを観察することです。このテストでは、毎回デバイスを10台ずつ追加して、最終的に100台のデバイスに達するまでデータ転送能力低下の程度を観察するとともに、Pingテストも行い遅延のパフォーマンスを確認しました。

【2.4G】

A社は、40台以上のデバイスが同時にデータを送信すると、アップリンク(上り)で約30%の低下が発生しました。一方、N社のアップリンクは、90台以上のデバイスがある状況でも、約10%しか低下しませんでした。これまでの経験から見れば、企業向けの機器だとこのような状況は改善されることが多いですが、消費者向けの製品とは方向性や価格帯が異なります。よって、消費者向けの製品としては優れたパフォーマンスを発揮していると言えます。

ワイヤレスルーターとデバイス間の遅延時間に関して、N社は常に1,000ミリ秒未満でしたが、A社は40台以上のデバイスが接続されると1,000ミリ秒を超えることがありました。一般的には、遅延が1,000ミリ秒を超えるとユーザーは差を感じるとされています。デバイスとワイヤレスルーター間の遅延テスト結果については、接続デバイスが40台以上になると、いずれのワイヤレスルーターも遅延時間が1,000ミリ秒を超えることがありました。

【5G】

5Gの総データ転送能力テストにおいて、A社は60台のデバイス未満で、常に800Mbps以上の安定したデータ転送能力を提供している一方、N社は接続デバイスの増加に伴い、データ転送能力が大幅に低下し、最高と最低のデータ転送パフォーマンスの差が、最大で約80%に達することがありました。

5Gの遅延時間について、A社はデバイス接続台数が60台までは常に1,000ミリ秒以内の遅延を維持しています。一方、N社は接続デバイスが80台を超えると、遅延時間が1,000ミリ秒を超えることがありました。デバイスとルーター間の遅延時間の項目では、接続台数が100台に達すると、10,000ミリ秒を超える状況が発生することがありました。

結論

N社とA社は、Wi-Fi 6を採用した家庭用ワイヤレスルーターのフラッグシップモデルとして市場に位置づけられています。テスト結果から、40台以下の接続数の場合、データ転送能力や遅延時間のパフォーマンスは安定していることが分かります。しかし、60台以上の接続数になると、接続できなくなったり、遅延時間が大幅に増加する状況が発生します。しかし、この2台のルーターは市場で一般家庭向けに設計されており、一般家庭で接続されるデバイス数が40台を超えることはまれであるため、市場での位置づけと合致しています。

当社は長年にわたるテスト経験を持ち、ユーザーシナリオに合わせてカスタマイズされたテストサービスを提供するだけでなく、製品性能を向上させ、ユーザーエクスペリエンスを高めるため、市場調査や競合製品分析の専門的なレポートをお客様に提供します。各大手メーカーが同じカテゴリーの製品で熾烈な競争を繰り広げる中で、お客様がブランドの評判を築き、市場でチャンスを獲得するお手伝いをします。

本記事の内容やテストに関してご質問などございましたら、アリオンのお問い合わせフォームからお問い合わせください。

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