コネクティッドホームの普及に伴い、システムの中枢である無線AP(Access Point)も注目されるようになりました。良好な通信環境を得るためにはAPの選択が特に重要となります。AP市場の競争は熾烈です。数多くの種類が存在しており、最新機能に対応した製品を各メーカーが続々とリリースしています。コネクティッドホームの製品を一台所有するだけで、対応した家電製品であれば簡単にコントロールできるようになります。

AP製品の実測の設定と項目

今回の試験では、市販されている3台のAP製品*を使用してWi-Fi機能測定を実施しました。様々な帯域によるパフォーマンス能力と、様々な位置での送信効率、そして状況の異なる環境下による干渉能力を確認しています。

*記事内ではそれぞれAP1, AP2, AP3と記載しています。

 

Test Configuration

Devices under Testing

 

アリオン「コネクティッドホーム」試験環境のご紹介

今回の試験は、南投(台湾)にあるアリオンのコネクティッドホーム試験環境で実施しました。試験結果の紹介前に、アリオンの提供しているコネクティッドホームの試験環境についてご紹介します。

  • 試験場所:ラボの近郊にマンションの一室を借り、試験場所として利用しています。広さは約96平米(約29坪)で、3つのベッドルーム、2つのリビング、2つのトイレを備えています。
  • 間取り: 3人家族の家庭を想定しており、寝室、ゲスト部屋、子供部屋があります。
  • 備品の配置:部屋の中にはテーブルや椅子といった標準的な家具に加え、TVや無線スピーカー、PC2台(デスクトップ/ノート)、無線LED照明といった家電製品を配置しました。
  • 無線製品: タブレットが1台、携帯電話が2台、ノートブックが1台、合計4台の無線製品を備えています。
  • 環境:複数の電力ネットワーク経路と、1対3の家庭用ワイヤレス通話システムを取り付けています。また、家電製品に最も干渉しやすい2.4GHz帯域を使った電子レンジも設置しました。

ネットワークを経由した動画データの送受信など、一般ユーザーの間では無線を経由したメディアを視聴する頻度がますます増加しています。そのため、いかにして高速かつ信頼性ある無線通信環境を構築するかについて、多くのコネクティッドホームに関連した各メーカーが注目しています。今回比較に利用する3台のAP製品は、実測試験中にどのようなパフォーマンスを見せてくれるのでしょうか。

 

AP製品3台の無線パフォーマンスの比較

1. 様々なチャネル帯域における、パフォーマンス&耐干渉能力

2.4GHz帯域・外部干渉なし:AP2のパフォーマンスはその他の製品よりも優れた結果となりました。リビングの位置にあるAP2では、チャネル1を組み合わせた送信値が最高で、子ども部屋の位置にあるAP2 では、チャネル6を組み合わせた送信値が最高でした。

スループット試験結果では、AP2のパフォーマンスはその他のAPと較べて明らかに優れた結果となりました。リビングに位置するAP2とチャネル1を組み合わせた場合と、子供部屋に位置するAP2とチャネル6を組み合わせた場合のスループット値が最高の値となりました。

 

2.4GHz帯域・外部干渉あり:送信値の試験において、AP1 の耐干渉能力はその他の2台の無線APを超えていました。またAP3はリビングの送信値は比較的良好でしたが、子ども部屋の送信地の低下はその他2台より顕著で、耐干渉能力も劣りました。子ども部屋の位置は、3台のAPが全てチャネル1でのパフォーマンスが悪い結果となりました。しかしAP2では、チャネル6と11の送信値が相対的に優れていました。

スループット試験では、AP1の耐干渉能力はその他2台のAPを超えるパフォーマンスを発揮しました。また、AP3はリビングでの近距離通信能力は比較的良好ですが、遠距離にある子供部屋との通信能力はその他2台より明らかに劣っていました。子供部屋に位置するAPは3台ともチャネル1のパフォーマンスが低い結果となりましたが、AP2のみ、チャネル6と11のスループット値が優れていました。

5GHz帯域・外部干渉なし:試験の結果、AP2が各帯域において優れたものとなりました。リビングにあるAP2 は、チャネル161との組み合わせた送信値が最高であり、子ども部屋にあるAP2は、チャネル149との組み合わせた送信値が最高となりました。

 

5GHz帯域・外部干渉あり:測定位置から近いリビングのAP3 の耐干渉能力が良好でしたが、遠くにある子ども部屋のAP3 の受信値はその他の2台に比べて明らかに弱くなっていました。子ども部屋の受信値は干渉を受けた結果、送信データ速度が大幅に下落したことが伺えます。ちなみに、AP2は耐干渉能力でもその他2台と比べて良好な結果が得られました。

  1. APの位置による送受信結果

続いて、APが置かれた位置による送受信測定結果の違いについて記載します。

2.4GHz帯域・外部干渉なし:測定の結果、チャネル6を除いた全てのデータで、子供部屋での測定値が最低の値となりました。また、チャネル6の中では、AP2だけは寝室での測定結果が最低値となりました。これは外部干渉がある場合の結果と同様です。今回の試験結果からすると、中間帯域の結果は高低帯域のパフォーマンスを示しているとは限らないことがわかりました。

5GHz帯域・外部干渉なし:チャネル149での結果がほかと比べて顕著であることを確認しました。AP1とAP3での結果は子ども部屋のパフォーマンスが最も低くなり、AP2の結果は、送信は寝室が最も低く、受信は子供部屋が最も低い結果となりました。

5GHz帯域・外部干渉あり:こちらも同様にチャネル149が顕著な結果が出ました。各APのパフォーマンスの低い場所については干渉なしと同様となります。

まとめ

今回選択した3台のAPの中では、総合的に見てAP2が最も優れた送受信能力を発揮しました。しかし、<2.4GHz・干渉あり>の状況下では、AP1の対干渉能力が他の2台よりも優れた結果となり、また<5GHz・干渉あり>の状況下では、近距離においてはAP3の対干渉能力が良好でしたが、これが遠距離となると他の2台よりも劣る結果となりました。この原因は、アンテナのゲインとフィールドタイプの設定の違いによって生まれた差異であると推測できます。我々は中間の周波数帯域を選んで試験すれば高域と低域についても同様の結果が得られると考えていましたが、今回の試験結果から、中間数値の結果が高低帯域のパフォーマンスを表しているとは限らないことが判明しました。

試験結果の正確性からすると、やはり高・中・低すべての条件の中で試験を実施する必要があるといえます。送信値が低すぎる場合、インターネットの接続品質に影響を及ぼし兼ねません。また、受信値が低すぎる場合は、頻繁な断線が起こり、通信が中断されてしまうなどの状況が発生してしまう恐れがあります。今回の試験結果では、子ども部屋で得られた数値はすべて低く、もし製品がこのような間取りのもとで使用されていた場合、期待されるパフォーマンスを下回る結果が出る可能性が高かったことでしょう。つまり、家庭内でAPを利用する際、性能の良いものを選ぶことと同じくらい、ハードウェアの配置を考慮することも重要だと言えます。

角度、距離、チャンネルや帯域に応じた製品のパフォーマンスを理解することで、製品性能の改善につなげることができます。アリオンでは、今回ご紹介した他社製品との詳細なベンチマークを含め、柔軟にカスタマイズ可能な各種検証サービスを提供しています。また、経験豊富な専門の担当者によるデバッグサポートも提供しています。リファレンス機器をご提供頂くことで、比較試験も同時に実施することが可能です。今回ご紹介したAPの性能評価について、気になる点などがございましたらお気軽にご連絡ください。

 

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