Tag Archives: USB

USB製品がワイヤレスデバイスの信号干渉を引き起こす原因に?

さまざまな通信デバイスの普及や新たな規格の導入に伴い、見えない信号による干渉問題がますます深刻化しており、関連する議論に注目が集まっています。最も一般的な無線干渉の1つであるRFI(Radio Frequency Interference)無線周波数干渉は、電磁波によって引き起こされる干渉のことで、似たような周波数の2つの電磁波が受信側で同時に受信されると、干渉が発生しやすくなります。 現在主流となっている通信周波数として、ワイヤレスネットワークの主な周波数帯域は2.4GHzと5GHz(例:BluetoothやWi-Fi)、USBの転送周波数は2.5GHzと5GHzで、これら2つの周波数は非常に近くなっています。 これら2つの周波数が近いと、使用するデバイスが異なっていても相互に干渉を引き起こし、接続や転送品質に大きな影響を与えます。例えば、Bluetoothワイヤレスマウスを使用中に、USBケーブルで接続したUSBストレージデバイスを使用して大量のデータを転送する場合、使用するUSBケーブルが認定製品でないと、ケーブル外側のシールドによるマスキングが不十分なため無線周波数干渉が発生し、Bluetoothワイヤレスマウスの操作性に影響を与える可能性があります。 以下の図はUSBケーブル製品を実際に測定した図です。10MHz〜6GHz周波数でのマスキング性能を示しており、このケーブルにFailが発生するとRFIのリスクがあることを示しています。 アリオンはUSB協会から認定されたUSBケーブルとコネクタの認証機関として、USB関連のテストで豊富な経験を積んでおり、製品のRFI干渉に対し包括的なテストを行い分析することができます。設計から検証、認証に至るまで、お客様の製品がすぐに業界のベンチマークとなるように、専門的且つ信頼性の高いコンサルティングサービスも提供します。 Faster、Easier、Better ― 最も信頼できる検証コンサルタント アリオンは、30年以上にわたるテスト実績と経験があり、幅広い分野の専門家によるチームおよび充実したテスト環境と機器を備えるだけでなく、ユーザーシナリオにおける豊富なテスト経験をもとに、ユーザー体験の向上を支援し、より速く、より簡単、より良い高品質のサービスを提供することができます。  Faster ー より迅速  アリオンは、電源から電気、構造、環境テスト装置に至るまで、充実したテスト設備を備えています。また、アリオンは、標準的なテストに加えて、お客様のご要望に合わせてカスタマイズされたテストを実施するサービスも提供しており、お客様がテストラボを探す手間を省きます。  Easier ー より簡単  アリオンは豊富なプロジェクト経験を積んでおり、製品設計の相談から検証プロセスの説明、認証の実施に至るまでワンストップでサービスを提供し、製品が最短時間で認証を取得できるようサポートします。  Better ー より正確  。製品の検証で問題が発生した場合、アリオンは問題の分析、デバッグサポート、さらにはソリューション提案を行い、迅速に問題を解決することができます。 [...]

超便利なUSBポート充電に、深刻な潜在リスクが起こる可能性ありか?!
超便利なUSBポート充電に、深刻な潜在リスクが起こる可能性ありか?!

完璧に見える多機能USBに潜むさまざまなリスク ノートパソコンを選ぶ時、よく使用するポートが備わっているかも確認していますか? 中でも巷に広く普及しているUSBポートは、プラグアンドプレイの機能を備え、コンピュータ周辺機器の拡張性が向上しています。しかし、新しい規格やテクノロジーの進化に伴い、潜在的な問題が徐々に明らかになっています。 製品に問題や潜在的なリスクが発生するのを防ぎ、製品品質を大幅に向上させ、ブランドに対する消費者の信頼と最高のユーザーエクスペリエンスを獲得するために、アリオンはカスタマイズ可能なソリューションを提供することができます。   USBポートには、以下のさまざまな機能が備わっています。 1. データ転送 2. 充電機能に広く使用 自動車やバイクには、デバイス(スマートフォン、カメラなど)を充電するためのUSBポートが搭載されています。 3. 重たいポータブルバッテリーを持ち歩く手間を省く この記事ではノートパソコンを例に挙げ、USBポートを充電機能として使用する際の潜在的なリスクについて探ります。 ノートパソコンは薄くて軽く持ち運びが可能で、カフェでのプレゼンテーションや、ビデオ編集、オンラインゲーム、映画鑑賞に非常に便利です。現在、スリープモードまたはシャットダウンモードでも、USBポートを利用してデバイスを充電できるノートパソコンが市場で増えてきています。 USBポートに生じる潜在的なリスク USBポートによる電力供給を開発する過程で、関連する設計仕様に従わない場合、充電速度が遅くなったり、更には電源モジュールが焼損することもあります。デバイスの充電に十分な電圧と電流を供給する他に、システムがスリープモードまたはシャットダウンモードでのUSBポート充電を使用するかどうかを、BIOSメニューで設定することができます。 しかし、この機能を無効にしたにもかかわらず、USBポートが電力を供給し続けてしまう事例が発生することもあります。 [...]

アウトドアに不可欠な充電グッズ!モバイルバッテリーの選び方
アウトドアに不可欠な充電グッズ!モバイルバッテリーの選び方

Allion Labs/Dreaming Chou モバイルバッテリーは名前通り、ユーザーが外出する時に携帯する電源供給装置です。現在マルチ機能のスマートフォン及び高画質のメディアニーズに連れ、消耗する電量も増えました。ところが、2020年より、コロナ禍によって、ユーザーの習慣が変えられ、多くの人は外出を控え、それに伴って、オンライン授業、リモートワークの需要が生じ、人々の生活と使用習慣を根本的に変えました。それにより、消費者がモバイルバッテリーのニーズが著しく減少、市場販売量も停滞していました。幸いなことに、ワクチン接種、及びコロナ軽症化の傾向、ポストパンデミックの時代に入り、通常の通勤通学に戻り、リベンジ旅行解禁、レストランの写真をSNSに投稿、通勤中の動画視聴、ゲームで時間をつぶす日常生活が一つ一つ戻ってきました。スマホ、持ち運ぶ電子製品が電池切れにならないように、多くの消費者が出かける時は様々な充電グッズを持ち歩きます。これもモバイルバッテリー製品のニーズの回復に繋がります。 この二年間、モバイルバッテリー市場の停滞期を経て、需要の増加のほか、一部のユーザーも古いバッテリーを新しいのに代わります。しかし、モバイルバッテリーの爆発事故は時折りにニュースになります。モバイルバッテリーを選択購入前に、知ておかないといけないキーポイントがあります。下記はアリオンがODM及び各大手メーカーお客様に長年サービスを提供、集めてきた経験から纏めたポイントを参考としてご紹介します。  一部選び方のポイントが六つに分かれています  安全保障 容量体積 ポート規格 充電技術 対応装置 互換性問題  1. 安全保障  多くのブランドが販売しているモバイルバッテリーは安全承認がないと販売できません。例えば、BSMI(台湾商品試験)、CE(EU合格認証)、FCC(連邦通信委員会)など、販売する現地の法律に従います。また、一部の業者は自身の製品に安全保護設計を取り入れたことを表示します。通常のは過充電/過放電保護、過電圧電流保護、短絡、又は過熱保護があります。PL保険を追加する商品もあり、又は第三者検証ラボの試験レポートを提供します。例:  2. 容量体積  [...]

新トレンド「天井スピーカー」 ホームシアター構築の新たな課題

 テレビ/スクリーン・プロジェクター・ホームシアターオーディオは、ホームシアター環境を構成する三つの要素です。ディスプレイ技術の進化に従い、ディスプレイの解像度が向上してきましたが、今まで画面の精緻さを求めてきた消費者は、今度はオーディオの質に注目し、より高度な映像・音声体験を求め始めました。近年、様々なAV規格が登場し、新たなホームシアターの連携体系が誕生しています。その中でもDolbyとDTSの二つのサラウンドシステムが市場の主流になっています。  例えばDolbyシステムの場合、スピーカー数は最初のDolby Pro Logic 5.1チャンネルから、最高規格のDolby Atmos 24.1.10チャンネルに進化してきました。Dolby Atmosについて説明すると、これはドルビーラボラトリーズが2012年4月に発表したサラウンド記録再生方式です。従来のチャンネル依存(Channel Dependency)を捨て、音声をオーディオ要素(Audio Element)にミキシングし、一つのサウンドオブジェクト(Sound Object)にまとめます。3D空間のどこにでも配置でき、音声のソース・移動方向と位置を正確に配置できるため、サラウンド効果を平面から立体に進化させ、よりリアルなビデオ・オーディオエクスペリエンスを実現させました。また、Atmosのオーディオ技術をユーザー側が享受できるようにするために、ドルビーラボラトリーズは新たな音声コーディング技術「Dolby ED2」を開発しました。Dolby ED2はDolby Eの拡張技術のため、下位互換性を持っています。新たなプロフェッショナルメタデータ(Professional Metadata, [...]

ハイスペックなゲーミングモニター 品質検証の要とは?

家庭用ゲーム業界の目まぐるしい発展は、ハードウェアと周辺機器の進化に影響を及ぼしています。注目を集めているのがゲーミングモニター市場の成長です。Trend Forceの傘下にあるWitsViewが発表したレポートによると、2017年のゲーミングモニター出荷量は約250万台で、年間成長率は80%にも及ぶそうです。また、2018年は前年より120万台増の370万台となることが予想されています。急速に成長しているゲーム市場において、モニター品質はユーザーから重要な要素の一つとして見られています。一方、ゲーミングPCのユーザーが常にハイスペックな製品を求めている傾向にあることは、開発者たちにとって決して無視できないポテンシャルリスクとなっています。 USB Type-Cはゲーム機器でも幅広く利用されており、USB Type-C技術を搭載したデバイスは今後ゲーム機器におけるスタンダードになると見られています。従来は映像や給電に複数のインターフェースが必要でしたが、USB Type-Cだと一つの接続ポートで給電(PD)と映像・音声出力を同時に実現できるようになります。当然、機能が便利になればなるほど、その裏側で動いている技術は複雑であることが伺えます。ここでは、アリオンが実際に測定したことで判明した、USB Type-C対応モニターによくある五つの問題点を紹介します。   モニターの抱えるポテンシャルリスク モニターとして最低限の機能とは、画面が問題なく表示されることです。しかし、市販モニターであっても一部メーカーの製品では使用中のブラックアウトやプラグアンドプレイの不具合、最大解像度への切り替えができない、といった画面表示に関する不具合が発生することがしばしばあります。ユーザーがゲームを楽しもうとしている最中にこんな不具合が発生してしまったとしたら、メーカーに対してどんな気持ちが芽生えるでしょう。ユーザーエクスペリエンスやユーザー満足度だけではなく、ブランドそのものにもダメージを与えることになりかねません。  1. モニター接続時にブラックアウト アリオンで試験を行った結果、ブラックアウト問題が発生したモニターは全体のおよそ2割に及びました。代表的な事例は次のとおりです。 USB Type-C経由でモニターとデバイスを接続したとき、モニターがブラックアウトする [...]

あなたの充電環境を守る認証 充電のリスクと安全性

「充電作業」は日課 スマートフォンをはじめとするポータブル機器は、今や我々の生活必需品といっても過言ではないほど身近なツールとなりました。スマートフォンは、特にバッテリー消費量も大きいため、毎日充電をしている人がほとんどではないでしょうか?  ガラケー時代に週1, 2回でもバッテリーが持っていたことが懐かしく感じます。 スマホが普及した現代、「充電」という作業は、その頻度と重要性が増し生活に欠かせないですね。ヘビーユーザーなら1日に1回では足りず、モバイルバッテリーを常備している人も少なくないと思います。普通の使い方の人でも、長時間の外出の時などは、外出先での電池切れが心配でモバイルバッテリーを持参する人も多いのではないでしょうか? これほどまで身近になった「充電作業」、それを支える縁の下の力持ち的な存在(道具)はなんでしょうか?「アダプター」、「ケーブル」です。これらは、毎日欠かさず使うので旅行や出張の際にも必ずもって行く必需品と言えるでしょう。電器店は当然、駅の売店でも、コンビニでも、旅先の小さい商店でさえも、充電用のケーブルやアダプターを見かけるようになりました。   充電のリスクと安全性 毎日使うこれらのツール、最も重要なものは何でしょうか?「安全性」ではないでしょうか? 日常生活に欠かせなくなったこれらのツールは、安心して使いたいものです。 充電という作業にはリスクが伴い、各ツールは熱を持ちやすい特性があります。そのため、発煙・発火の危険性とも常に隣り合わせです。発煙・発火すれば付近の物への損害、やけど、怪我、最悪の場合、火災などの大惨事を招きかねません。記憶にも新しいかと思いますが、通勤時間帯の電車内で出火騒ぎが発生したことがありました。 同じ電車に乗り合わせた人だけではなく、運転見合わせにより、多くの人々が被害を被りました。当事者も大切な所持品を失ったことでしょう。更には損害賠償を求められた可能性も高いです。 その原因は、「一番安かった」という理由で購入したモバイルバッテリーの使用による発火でした。モバイルバッテリー自体は安いとしても、それが原因で高価なスマホを損傷したり、自身が大怪我を負ったり、賠償責任を負ったり、住宅が焼失してしまうなどの事態になれば元も子もありません。リスクを考えれば、多少高くても、安全性が保証された商品の方が安心です。 信用の置けるメーカーの商品であれば、安全性は一定水準をクリアしていると思われますが、消費者への正式な証明としては、第三者認証機関によって行われた認証試験が有効とです。   [...]

MCPC モバイル充電安全認証の概要

スマートフォンは大変便利な情報機器ですが、使い方を誤ると思わぬ事故を引き起こしてしまうことがあります。特に大容量のバッテリーを搭載しているスマートフォンは長時間の運用が可能になる一方で、漏電などによる発火や爆発といった事故への対策もますます重要になっています。そこで、今回は過去の事例をベースに、アリオンが推進しているMCPC充電安全認証について紹介します。 1. スマートフォンの充電電流の増加と充電事故 スマートフォンは現代社会の情報機器として、年齢・職業を問わず広く普及しています。画面の大型化、様々な機能の増加などに伴ってスマートフォンの消費電力が大きくなったため、より大きな容量のバッテリーを搭載してきました。ユーザーが眠っている間に充電を終わらせるためには、充電時間は長くても1日8時間、平均6時間以内に完了させる必要があることから、充電電流は年々増加しています。例として、2010年のUSBポートを利用した充電器が登場した頃は500-800mA程度だった充電電流が、2014年頃には1Aを越え、2015年には1.5A以上、2016年には2Aを越える充電器が登場しています。スマートフォンの充電は、USBコネクタを経由したものが一般的になり、ユーザーは汎用のUSB充電器、充電ケーブルを使えるようになりましたが、一方で低価格化のために安全に配慮しない充電器、充電ケーブルも市場で販売されています。 充電は一般家庭において、就寝時のベッドサイド、洗面所などでも行われます。充電電流が大きくなったことで、不適切な使い方や充電器の不具合による火災、やけどなどの事故が2014年から増えてきました。このような事故は、就寝中の充電での事故、また浴室・化粧室など水気のある場所での充電なども原因です。特に充電端子部分での短絡により、充電器、充電ケーブル、スマートフォン充電端子での焼損が発生し(図1)、このような事故に対する業界内(販売者、製造者)での対策が必要となりました。                   図1:充電端子部の事故原因 2. 充電事故への対策 携帯端末に関する業界団体MCPCでは、このようなスマートフォンの充電事故を受けて、充電器、ケーブルなど充電に関する『USB充電インタフェース安全設計ガイドライン(MCPC TR-021)』、『モバイル機器安全設計ガイドライン(MCPC TR-023)』を発行しました(図2)。このガイドラインは、USB充電に関する事故原因を踏まえて安全な充電器、ケーブル、携帯端末を設計し、USB充電システムでの事故を低減することを目的としています。 ガイドラインで、定められた安全設計のための要求には、次のようなものがあります。 1)USB充電ケーブルの端子における焼損事故防止機能図1にあるような端子部分でのショートによる温度上昇が発生した場合に、充電を中止する(温度センサー、温度ヒューズ等による対策)。 2)過電流防止の為の充電器IV特性過電流防止の為の保護機能を持ち、定格電圧より低い領域で定電流領域を持たない。 3)異常状態での過昇温の保護機能ベッドサイドでの充電では、充電器に夜具がかかった状態が発生する可能性があることから、外気の対流が起きない状態での充電でも過昇温を起こさない。 [...]

そのバッテリーは大丈夫? 値段だけではない製品選び

2017年9月11日午後、東京のJR山手線神田駅で男性が背負っていたリュックサックが発火する事故が発生しました。リュックに入れていたモバイルバッテリーが原因とみられ、男性は「秋葉原で安いものを買った」との事でした。モバイルバッテリーが原因とみられる同様の事故は、2016年12月にもJR山手線で起きています。 このような事故を、アリオンは技術的な側面から考察してみました。 モバイルバッテリーは、内部に電池を持ち、携帯電話への充電機能をもつ充電器の一種です。その構造は、図1のように内部電池への充電部(以下 充電部)、内部電池、携帯電話への給電回路(以下 給電部)の3つの機能に分けられます。 図1:モバイルバッテリーの構造 充電部は、AC100VかUSB電源に接続され、モバイルバッテリーの内部電池を充電する機能を持ちます。内部電池は、モバイルバッテリーの主要部品であり、繰り返し充電が可能な二次電池が用いられます。ここに蓄えたエネルギーを使って携帯電話を充電しています。電池には、大容量のリチウムイオン電池などが利用されますが、充電時の温度管理や携帯時の落下衝撃などへの対策が必要です。 給電部は、内部電池のエネルギーを変換し、携帯電話への給電(充電)を行います(一部のモバイルバッテリーは、充電部と内部電池ではなく、乾電池などの一次電池を用いるものもあるが、今回の事故品とは無関係なので割愛)。 昨今、携帯電話の充電にはUSBポートを使用するのが一般的ですので、USB規格に従った電圧、電流設定が必須であり、急速充電の場合には携帯電話の充電プロトコルへの対応が必要となっています。 今回のような、「安価なモバイルバッテリー」の場合には、どのような点に問題があるかを推測してみます。充電という機能に着目すると、大容量の内部電池と急速充電ができる大電流に対応した給電回路があれば、携帯電話を長時間使えて急速充電ができるモバイルバッテリーを実現できるはずです。一方、安全面に配慮した場合には、モバイルバッテリーを落とした際に内部電池を保護できるような耐衝撃の構造と、内部電池を放電あるいは充電する場合に、電池の放電(充電)状態に応じた電流の管理、温度を監視する保護回路が重要となります(図1の赤字の部分)。 安価な製品の場合、メーカーは機能面についてはコストを払いますが、安全面についてはユーザーの注意に依存して配慮しない場合があります。つまり、発生するか不明な事故に対しては、コストをかけないことで安価な製品を実現している場合があるのです。 モバイルバッテリーをリュックの中に入れて長時間使った場合には、内部で発生した熱が逃がせず、高温になってしまう危険性があります。この熱は内部電池の放電と給電回路により発生します。給電回路の設計が携帯電話の充電特性とあっていない場合には給電効率が低くなり、給電効率が低い場合、内部で熱となります。 保護回路が適切に実装されている場合には、内部電池の温度上昇を検知して、携帯電話への給電を止める、または電流を小さくなるように設計されるはずです。これが図1における「安全のためのフィードバック」系、つまり保護回路です。しかし、このような保護回路が実装されていない、または設計が不適切な場合には、電池が発熱しているにも関わらず給電が継続され、さらに温度が上昇してしまいます。 ほとんどのモバイルバッテリーは、使用温度は0から40℃となっていますが、温度に対する保護回路がない場合には、内部電池の異常な状態になっても給電が継続されます。ユーザーは、このような異常に気付けなかった可能性が大きいと予測します。   今回(2017年9月)の事故では、内部電池が放電し、携帯電話へ給電している状態なので、図1における給電部、内部電池に問題があった可能性が大きかったと考えられます。 安価な製品の場合には、内部電池そのものの信頼性や、寿命の問題もあります。繰り返し使う中で、内部電池に既に問題が起きていた可能性も十分考えられます。しかし、電池の異常にはユーザー自身が気づくことは難しいため、内部に適切な保護回路があれば「充電が出来ない」という故障状態となり、事故前に使用が中止され、未然に事故を防げたことでしょう。 [...]