Allion Labs / Ryan Huang

無線APの性能評価シリーズの最終回となる本記事では、マルチユーザー対応、安定性、耐干渉性の3つ側面からテストを比較していきます。

図: BBF.398はこの6つの点からWi-Fi性能を検証するものです。

◆6.4.1 – マルチユーザー性能テスト(Multiple STAs Performance Test)

このテストは主に、無線LANアクセスポイント(以下無線AP)が同時に様々な信号強度のデバイスが接続されている環境で伝送する場合、長距離で接続されたデバイスが、全体の合計送信スループットを引き下げないかをシミュレートすることを目的としています。

 802.11n/ 802.11ac / 802.11ax 2.4GHz/5GHz テスト結果 

このテスト項目では、すべての無線APの全体的な伝送スループットが影響を受け、ある程度低下したため、すべての無線APでテスト基準を満たすことはできませんでした。しかし全体として、G社の無線APは802.11nと802.11acで、最高のパフォーマンスを発揮し、T社とE社は802.11ax-2.4GHzと802.11ax-5GHzで、それぞれ最高のパフォーマンスを発揮しています。

図:6.4.1テスト基準

👉関連記事:TR-398 Issue 2 Corrigendum 1でよく不合格になりやすい試験項目とは?Part 3:6.4.1 Multiple STAs Performance Test

◆6.4.2 – 接続/切断処理時の安定性テスト(Multiple Association/Disassociation Stability Test)

この項目では、接続状態が頻繁に変化する環境条件下で、接続されている他のデバイスの伝送安定性を測定しました。

 802.11n/ 802.11ac テスト結果 

この項目のテスト基準は、

- 802.11nの場合、各デバイスの伝送スループットは4Mbpsの99%以上である必要があり、パケット損失率は0.01%未満でなければなりません。

- 802.11acをテストする場合、各デバイスの伝送スループットは8Mbpsの99%以上である必要があり、パケット損失率は0.01%未満でなければなりません。

802.11nのテスト結果から、すべての無線APがテスト基準の要件を満たしていることが分かりますが、802.11acのテスト中、E社の無線APは、損失されたパケットが多すぎたため、テスト基準を満たしていません。

 802.11ax 2.4GHz/5GHz テスト結果 

- 802.11ax-2.4GHzのテスト基準では、各デバイスの伝送スループットが4Mbpsの99%以上である必要があり、パケット損失率は0.01%未満でなければなりません。

- 802.11ax-5GHzでは、各デバイスの伝送スループットが8Mbpsの99%以上である必要があり、パケット損失率は0.01%未満でなければなりません。

802.11nのテスト結果と同様、802.11ax-2.4GHzのテスト結果から、すべての無線APがテスト基準の要件を満たしていることが分かりますが、802.11ax-5GHzのテスト中、E社の無線APは、ドロップされる送信パケットが多すぎたため、同様にテスト基準を満たしていません。

◆6.4.3 DL MU-MIMO性能テスト(Downlink MU-MIMO Performance Test)

この項目の目的は、主に無線APのMU-MIMOの下り通信性能を確認することです。

 802.11ac / 802.11ax 2.4GHz/5GHz テスト結果 

この項目は、無線APのアンテナ数が4×4をサポートしているものだけがテストを実行でするので、G社とT社の2つの無線APだけでテストを実行しました。802.11acでは、G社無線APの結果は33%に過ぎず、45%以上というテスト基準要件を満たすことができませんでした。T社無線APの結果、59.79%がテスト仕様を満たしていますが、802.11ax の2.4GHzまたは5GHzの場合、基準要件である45%よりも低くなっています。

図:6.4.3 テスト基準

👉関連記事:TR-398 Issue 2 Corrigendum 1でよく不合格になりやすい試験項目とは?Part 4:6.4.3 Downlink MU-MIMO Performance Test

◆6.5.1 – 長時間安定性テスト(Long Term Stability Test)

このテストは、主に長期動作モードでの無線APの安定性を確認するためのものです。

 802.11n/ 802.11ac / 802.11ax 2.4GHz/5GHz テスト結果 

802.11n/acのテストでは、すべての無線APでテスト基準を満たすことができています。しかし802.11ax-2.4GHzでは、E社無線APのパケット損失率が1.77797%で、テスト基準の0.01%未満を上回っていますが、実際一般ユーザーが違いを感じることはありません。

図:6.5.1 テスト基準

◆6.5.2 – 複数信号の耐性テスト(AP Coexistence Test)

この項目では、環境内で他の無線APからの干渉がある場合の、無線APの干渉防止能力をテストします。

 802.11n/ 802.11ac テスト結果 

上記結果にある通り、K社とT社の無線APは、それぞれ802.11nと802.11acで良好なパフォーマンスを示していますが、一部項目でテスト基準を満たしておらず、テスト基準に合格したのはN社の無線APだけです。また、V社とG社の2つの無線APは、802.11nと802.11acで影響を最も受け、スループットは42%(V社)と56% (G社)に低下しました。

 802.11ax 2.4GHz/5GHz テスト結果 

802.11ax 2.4GHzテストではE社の無線APが、802.11ax 5GHzではN社の無線APが、それぞれ最高のパフォーマンスを見せましたが、実際にはこの3つの無線APがテスト基準をを満たすことができませんでした。

E社の無線APに至っては、802.11ax 5GHzの様々なテストシーンで基準を満たすことができていません。

図:6.5.2 テスト基準

◆6.5.3 – 自動チャネル選択テスト(Automatic Channel Selection Test)

このテストでは、無線APのACS(Automatic Channel Selection)機能が正しく機能しているかどうかを確認します。

 802.11n/ 802.11ac / 802.11ax 2.4GHz/5GHz テスト結果 

この結果から、各ワイヤレスチャンネルでACS機能が正常に動作しているのは、T社とNetcommの無線APだけであることが分かります。他の無線APは、一部のテストチャンネルで他のワイヤレス干渉APが動作中であることが検出されないため、同一チャネルの使用が避けられず、基準を満たすことができませんでした。

結論

ブロードバンドネットワーク仕様の開発に特化した業界団体であるBBF(Broadband Forum)がTR-398テストを公開して以来、多くのメーカーがこのテスト基準を使用して、製品が仕様に合格できるかどうかを確認するようになり、この統一されたテスト内容に基づいて、様々なブランドや製品間の比較分析が行われました。アリオンは、TR-398テストにoctoBoxテストソリューションを使用し、TR-398テスト環境のセットアップという複雑な問題を克服した上で、一貫性があり、安定していて且つ正確なテスト結果と再現可能なテスト環境を提供することもできます。

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