Category Archives: 技術ブログ

身近な製品で使用されているUSBケーブル、本当に安全?

「充電しようとしたら充電ができない!」「せっかく買ったケーブルが1カ月もたたないうちに使えなくなるの?!」使用したUSBケーブルが突然、データ転送中断したり、充電がうまく出来なくなったといった経験はありませんか?それはUSBケーブルからの警告メッセージだということをご存知でしょうか?今回は、USBケーブルに関する重要な知識をお伝えしていきます。 USBケーブルの内部は多芯ケーブルで構成されています。例を挙げると、USB 3.0ケーブルには10本以上の内部芯線を使われています。ケーブルを使用するたびにケーブルの芯線と端末のコネクタにはダメージを与え、使用状況と材料によって劣化具合は異なり、ケーブルの寿命や機能に影響します。そのため、USB規格団体であるUSB-IF(USBインプリメンターズ・フォーラム、英: USB Implementers Forum)は、関連検証テストの基準を厳しく制定し、ユーザーの手元に届く製品の安全性を保証できるよう努めてまいります。 USB充電の最大出力は従来の10Wから240Wまで拡張され、スマートフォンやタブレット、ノートパソコン、大型の液晶ディスプレイ・テレビなどといったUSBケーブルで充電できるデバイスも増加すると予測されています。USBケーブルは充電にとって重要な役割であると言えます。 USBケーブルの引張性と耐久性を無視するのは危険! 時間に余裕がなく急いでいるときに無意識にUSBケーブルを接続機器から抜いたことがある人は、決して少なくないのではないでしょうか。見た目からは分かりませんが、ケーブルを引っ張った際、コードの中で断線して切れるしまう可能性があります。そして屈曲・圧迫を繰り返していたり、充電しながら使用したりとケーブルにかかる負担が増えました。ケーブルを断線した状態で使い続けていると、上手く充電することができなかったり、深刻な場合はケーブルが熱で溶けて火事になる恐れがあります! USBケーブルの寿命試験とは? しかし、ケーブルの異常にはユーザー自身が気づくことは難しいため、どのようにこれらの問題やリスクを防止すればよいでしょうか?「寿命試験」は欠かせない試験となっています。 当社はあらゆるユーザーシナリオを応じて、ケーブルの寿命および安全性に対する検証テストを提供します。また、ケーブル・コネクタの引張性試験(Pull-Out Test)において、プラグコネクタのケーブルに、引き出し方向に力を加え、一定時間内に特定回数のケーブル引張性を確認することが可能です。 寿命試験を実施することで、ケーブルと加工箇所の構造強度が、さまざまな状況においても耐えられる製品品質と充電の安全性を確保します。 アリオンの引張性試験では「ライトユーザー」、「ヘビーユーザー」、「カスタマイズ」など3種類のユーザーシチュエーションに分けられています。 [...]

コンマ数秒を制覇せよ!ゲーミングモニターの遅延性実測レポートからプレイヤーのニーズを解析

e-スポーツゲームにはゲーミングモニターが絶対に必要なのか? ここ数年、世界中がCOVID-19パンデミックの影響を受けていますが、e-スポーツ産業はこの逆境の中飛躍的な発展を遂げ、ゲーム周辺機器の産業にも経済的効果をもたらしています。市場調査を行っている企業Mordor Intelligenceによると、ゲーム市場の2021年の全体規模の価値は1,984億ドルに達し、2027年には3,399.5億ドルに及び、2022~2027年の年平均成長率は8.94%と見込まれています。 参照データ:Gaming Market Size, Growth & Trends (2022-27) |Industry Analysis (mordorintelligence.com) e-スポーツのプレイヤーが増加するに伴い、製品の使用に関する問題も増えています。ゲームのプレイ中に音の遅延が発生したり、画面が固まると、プレイヤーには不快な体験を与えてしまい、更にはハロー効果へと繋がり、影響を受けていたハードウェアデバイスに対する悪い評価が増えてしまいます。ゲーム市場におけるこのような不備に対して、各メーカ、eコマース業者はこぞって自社製品の宣伝を行い、遅延低減のメリットから製品のパフォーマンスを全面に押し出し、消費者の購入意欲を促し、実際に購入してもらうことで、プレイヤー達に最高のユーザー体験を届けようと画策しています。 アリオンはプレイヤー視点から、それぞれ一般ユーザー向けモニター(Consumerタイプ)、産業用ディスプレイ(Commercialタイプ)、ゲーミングモニター(Gamingタイプ)、タイプの違う3種類のモニターを用いて、実測テストを行いました。異なるシチュエーションや条件下で、本当にゲーミングモニターのパフォーマンスが一番優れているのか?高いお金を払って低遅延のゲーミングモニターを購入する価値があるのか?を検証してみました。 [...]

ワイヤレスマウスのUX向上のために考慮すべき要素とは?

PCユーザーにとって、「マウス」は毎日常に使用する最も基本のPC周辺機器です。マウスの使い勝手が良いかどうかは、個人の作業効率とその日一日の気分に大きく左右するポイントです。 今回の記事では、当社のワイヤレスマウス向けのテスト経験においてユーザー体験に影響を与える可能な要素をまとめて共有いたします。  1. 電池交換の間隔が短い  検証テストの経験により、一部のマウスは3~4週間に一度電池を交換する必要があります。電池を交換さえすれば使用や機能自体には影響は無いのですが、マウスの消費電力が高く長時間使用することができないため、ユーザーを困らせることになります。例えば、夜間にパソコンで仕事をしたり、ゲームをしていた時にマウスの電池が切れて使えなくなり、ちょうど家に予備の電池が無かったら、ユーザーは製品に対して悪いイメージを抱く恐れがあります。  2. 電池の取り付け/取り外しが難しい  一部のマウスには電池の取付けの表示が不足して、明確に標記されていないため、ユーザーが正確な取付け方法が分からなくなったことがあります。また、電池の取付けの開口部が小さ過ぎて、電池の出し入れがしにくいことになります。これらもユーザーを困らせる一つの要因を考えられます。  3. 付属の電池の品質が悪い  折角新しいマウスを購入して、使用するのを楽しみにしていたのに、付属の電池を取り付けようとしたら、電池が湿気て液漏れしていたり、購入したユーザーはそのブランドメーカに不満や不信感を感じ、ネットショップのレビューに低評価をつけるかもしれません。  4. スクロール音・クリック音が大きい  人によってマウスのスクロール音やクリック音を許容できる程度は異なりますが、購入したマウスのスクロールホイールのスクロール音やクリック音がうるさ過ぎると、周りに迷惑をかけてしまう場合があり、ユーザーが不快な気分になる可能性もあります。  5. [...]

次世代ルーターの使用体験は本当にユーザーフレンドリーになったか?

従来のルーターは一般のユーザーにとって、設定が難しくて、専門のエンジニアに取付けて設定してもらう必要があるというようなイメージがあるでしょう。無線ルーターの普及に伴い、現在のルーターにはさまざまな付加機能が追加されています。従来のルーターにあるネットワーク機能の他に、現在のルーターでは設定や操作が簡易化されていて、よりユーザーフレンドリーなアプリUI(User Interface、ユーザインタフェース)になっています。またIoTデバイスもルーターに接続でき、一部のルーターはブリッジ/ゲートウェイを兼ね備えており、より多くのスマートデバイスが統合されるようになりました。 更に進化するルーターにもUSBポートが追加されており、オンラインストレージ、ファイル共有、ストリーミングなどに拡張しクラウドメディアを共有することが可能です。また、プリンターを接続すればネットワークプリンターにすることもできます。 今までユーザーは「192.168.x.x」を見ると意味が分からず距離を感じることがありました。現在はさまざまな機能が追加されており、設定内容には色んな専門用語が出てきますので、訳が分からなくなることもさらに増えていて、最終的にはブランドイメージも低下することになってしまいます。そのため、多くのルーターメーカーはユーザー体験の最適化とユーザー満足度を配慮し、スマートフォンアプリや設定アイコン化されており、簡単で分かりやすい設定方法になっています。アプリにも、スケジューリング機能やペアレンタルコントロール機能、トポロジー設定機能、シチュエーション設定機能、帯域幅グループ分け管理機能など、さまざまな機能が追加されています。 次世代ルーターのアプリ使用体験はどのようになっているでしょうか? 現在のルーターはWi-Fi 6のものになっており、ほとんどがMesh中継に対応していて、ペアレンタルコントロール機能も備わっています。今回はその中から5種類をピックアップし主な機能を以下にまとめました。 ほぼのルーターはアプリをインストールし、アプリの案内に沿って設定をするだけでよくなっています。以下の例のように、余計な選択肢はなく、簡単にSSIDやパスワードを設定することができ、セキュリティーの選択もデフォルトとそれにプラスして2つ3つの選択肢があるくらいです。これだけで一般ユーザー向けの用途には十分に足りていると思われます。 保護者が生活における管理を便利にするため、ルーターにはペアレンタルコントロール機能が追加されています。指定のデバイスの接続権限のスケジュールを設定することができたり、特定のWebサイトをブロックするなどの機能があります。 また、ユーザーがAP(アクセスポイント)のアップ・ダウンロードの速度を手軽に検出できるよう、ルーターの多くには接続速度テストの機能が内蔵されています。アップ・ダウンロードデータをリアルタイムに表示することもできます。 カスタマーマーケットになりつつあるスマートルーターは、情報セキュリティーも重視しており、以下のように、一部の製品には、マルウェア/不正侵入/セキュリティーホールなどを検出し記録するセキュリティー監視機能が予め搭載されています。メーカによってはより完全な保護として有料の情報セキュリティーサビースも提供しています。 さらに、一部のルーターはAmazon AlexaやGoogle Assistantなどの音声アシスタントにも対応しており、USBを接続してオンラインストレージとして共有することもできます。 潜在的な問題点は? [...]

工場の製造工程における品質管理(IPQC)の紹介:事例編

前回の記事では、IPQC検査の方法と標準的な手順の概要を説明しました。続いて、IPQCにおけるアリオンのQCサービスを詳しく紹介します。アリオンには、製品品質、数量、パッケージ、外観等全てが顧客の要件を満たし、製品品質の管理を効果的に改善するための一連の緻密な検査仕様と計画があり、製造開始から出荷までの製品品質を管理し、品質の信頼性を向上させることをお手伝いいたします。   アリオンによるサービスの特徴 ソリューションの提供と評価 検査プロセスと結果に対する即時フィードバック分析と提案評価、および検査プロセスの明確な記録を進め、プロセスの見落としを徹底的に調査し、実行可能なソリューションを提供します。 包括的な検査と計画 包括的な検査を通じて、検査プロセスにおける死角の最適化と検査計画の改善を実施。また、検査終了後、最初と最後のロットを検査し品質管理を行います。 品質データベースのデータ化 過去の検査内容を定量的に分析し、生産時とローンチ後に発見された問題を同時に更新・記録することで、予防策やアドバイスをリアルタイムで提供します。 品質管理のシステム化 過去のIPQCプロセスデータを記録し、顧客へのフィードバックと提案を週次/月次レポートの形式で提供し、エンドカスタマーからの苦情の割合を記録することにより、定期的且つ定量的でシステマチックに製品を管理します。 以下、実際にあった4つの事例を元に、アリオンが提供するサービスについてさらに深堀りしましょう。   事例紹介1:製品説明書にページ番号がない  Sampling [...]

工場の製造工程における品質管理(IPQC)の紹介:概要編

誰しも「品質管理」という職業を聞いたことがあると存じますが、品質管理は、「品質保証(QA、Quality Assurance)」と「品質管理(QC、Quality Control)」に分かれているのはご存知ですか?工場では品質保証と品質管理をどのように区別しているのでしょうか?また、実務上何が違うのでしょうか?この記事ではグローバル企業ブランドのコンサルティングを請け負うアリオンが長年蓄積した生産ラインのQA、QCの経験を活かし、QA、QCおよび工場におけるアリオンの役割について分かりやすく解説します。   IPQCとは? IPQCはプロセス管理(InPut Process Quality Control)であり、原材料の投入から生産、製造、そして最終的には包装プロセスまでの製品の品質管理を指します。いわゆるプロセス管理には、2つの主要なポイントがあります。1つは、生産をスタートするロット毎や製品変更毎に最初の製品を確認し、製造部門の製品生産基準を策定することです。もう1つは、生産ライン製品の検査要件は、最初のサンプルの要件に従って管理する必要があることです。つまり、正式な生産時には、すべての製品が最初のサンプルの要件を満たし、且つ製品の原材料の正確さを確認してから生産を開始する必要があります。   なぜIPQCが重要なのか? IPQCの目標と役割とは? 品質は製造されたもので検査ではわかりませんが、検査によって品質を向上させることができます。その目的は、不適格な製品が製造されるのを防ぎ、同時に不適格な製品が次の加工工程に流出してしまうのを防ぐことにあります。IPQCの目的は、品質リスクが深刻化して最終的に品質事故が起こってしまうことを防ぐために、現場での検査を通じて、隠れた品質リスクを見つけて停止し、タイムリーに報告することです。ただし、IPQCは単なるチェックだけでなく、検査結果を品質向上のための情報に変換し、品質向上に向けた取り組みを行っています。   IPQC作業内容(責任)および標準検査/規定プロセス [...]

購入前に確認するべき注意点とは?市販中のセットトップボックスを評価と分析 – アンテナによる干渉防止比較編

Allion Labs/Cache Her 前回紹介した記事に続いて、今回はセットトップボックスに使用するアンテナの違いによるワイヤレス通信のパフォーマンスを実測した結果について共有いたします。 昨今のワイヤレスネットワークデバイスは8割以上がアンテナを2本(Main and AUX)使用していますが、メーカによって製品のコストダウンや設計を考慮し、あえてアンテナ1本で製品を設計しているものもあります。通常はアンテナ2本の方が、データ転送能力がアンテナ1本より速く、その転送能力は倍ほどとなっています。しかし、全ての製品においてそこまで高い転送能力を必要とするとは限りません。例えば、スマートスピーカー、スマート家電、IoTなどの設備はアンテナ1本だけで十分に需要を満たすことができます。 本記事では、製品評価の実測データを通して、エンドユーザーが製品を使用するうえでどのように感じるか解析していきたいと思います。 市販されているセットトップボックスは、アンテナ1本のものが非常に少ないのが現状です。今回の試験を実施するには、提携パートナーの協力をいただいて、アンテナ1本と2本の製品を無事に手に入れました。 以下は今回の検証テストの対象としています。 図1:テスト対象製品の外観とアンテナスペック 今回の検証テスト項目は: 送信と受信テスト(Maximum Throughput) 距離と速度(Range [...]

サーバー調達品質の復号化–品質検証のための3つの要件

Allion Labs / James Ou アリオンは、サーバー業界およびアプリケーションシナリオ関連をテーマとした記事をシリーズで作成し、専門コンサルタントの観点から詳細に分析を加え、メーカーや業界の調達部門、クラウドサービス企業等を支援し、より多くの製品が結びつく市場情報とデータを入手してきました。 品質検証の3大要件:仕様、パフォーマンス、安定性 一般的な企業のコンピュータールームやクラウドサービス会社にとって、サーバー製品は最も重要なハードウェアインフラストラクチャであり、調達部門にとっても非常に複雑で難しい製品でもあります。高い単価に加え、様々なアプリケーションシナリオに基づき、それぞれに適合するハードウェアの仕様を策定する必要があります。更に困難なのは、その仕様やパフォーマンス及び安定性が、出荷受入時或いは量産時のサンプリング検査において、要件を満たしているかどうかを確認することです。 しかしながら、サーバー製品の仕様やパフォーマンス、安定性の検証は、企業の品質管理部門や一般的な外部テストラボでは実行できません。これらの検証は、ハードウェアと電気信号の品質の確認、サーバー運用における様々なシナリオパフォーマンス評価、異なる環境条件下での運用安定性をカバーしており、これらの関連するテスト設備とテスト機能分野はそれぞれ異なります。次に、これら3つの要件を検証するために必要な設備と機能について説明します。 サーバーの品質検証–高いスペックを持つ技術ラボがカギ サーバーはIT業界における様々な高い技術仕様を統合した製品であるため、ハードウェアの電気信号品質を検証する際、テクノロジーの最前線にあるラボにしかそのニーズを満たすことができません。 例えば、サーバーの特徴である高速信号と高スループットのデータ伝送について、業界の最新の技術仕様はPCIe Gen5および800G高速イーサネットであり、スループットはそれぞれ63GB /秒(x16)および112GB/秒です。高速信号ボードの設計上の欠陥がある場合、データ通信の速度が低下したり、消費電力が増加したりすることがあります。更にはシステムがランダムに再起動する可能性もあり、サーバーの動きが遅いあるいはフリーズなどの障害が起こると、ユーザー満足度を低下させるだけでなく、最悪の場合、財産の損失、火事といった様々な過失を引き起こす恐れがあります。 このような高速電気信号を測定するには、50/70GHzオシロスコープと32GbpsのBERTを使用し、且つ様々なフォームファクタのテストフィクスチャを使用する必要があり、技術的なハードルは非常に高くなります。 [...]

品質管理(QC)と品質保証(QA)とは?検証の専門家が違いや基本知識を解説

誰しも「品質管理」という職業を聞いたことがあると存じますが、品質管理は、「品質保証(QA、Quality Assurance)」と「品質管理(QC、Quality Control)」に分かれているのはご存知ですか?工場では品質保証と品質管理をどのように区別しているのでしょうか?また、実務上何が違うのでしょうか?この記事ではグローバル企業ブランドのコンサルティングを請け負うアリオンが長年蓄積した生産ラインのQA、QCの経験を活かし、QA、QCおよび工場におけるアリオンの役割について分かりやすく解説します。   QA(品質保証)とは? QA(Quality Assurance)とは品質保証のことで、計画されたシステム性のある品質管理の仕組みを通して、外部(サプライヤー、提携業者、提携パートナ、お客様などを含む)および内部(新製品の設計から、研究開発、製造、出荷、アフターサービスまで)などの各作業および工程フローが全面的に標準規格のプロセスおよび要求を満足していることや製品の品質を保証する活動を指します。 よくある職種: 製品の品質を保証する品質保証エンジニア(QE:Quality Engineer) お客様の業務を担当するためにサプライヤーが雇用するお客側品質保証エンジニア(JQE:Joint Quality Engineer) サプライヤーの評価、製品監査、品質サポートおよび材料受け入れシステム管理などを行うサプライヤー品質保証エンジニア(SQE:Supplier Quality [...]